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翔が書いた物語
第39話:聖剣と少年
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―――「よしなさい、あれは子供の手に負えるものではありません」
制止の声を振り切り、少年は神殿の地下へと続く階段を駆け降りる。
エルティシアで最も古いとされるラーナ神殿には、古代人が残したという書物や道具が幾つも保管されていた。
書物の多くは解読出来ず、道具も使い方が分からぬ物が多い。
中でも一番不思議な存在は、水晶に似た透明な球に封じられた、一本の長剣。
夜明けの光と呼ばれるその剣は、遥か古代から【眠り】続けているという。
「聖なる剣よ、我が声に応え賜え!」
彼は自分と剣を遮る水晶球のようなものに両手で触れ、声を張り上げた。
老いた神官から伝え語りに聞いた、それは封印を解く為の言葉。
けれど、剣は何の変化も見せなかった。
(『剣が身を委ねるのは、強い光を心に宿す者』。俺じゃ駄目なのか?)
透明な球体にコツンと額をぶつけ、少年は唇を噛む。
「……夜明けの光よ……」
再び、彼は剣へと呼び掛けた。
「……頼む……。俺に力を貸してくれ。俺は、この世で一番大切な人を護りたい!」
強い想いを告げた直後、眩い金色の光が、球体の中央から一気に溢れ出る。
神々しい輝きを放つ長剣は、銀色の髪の少年に刀身を委ねた…―――
「俺はリュシアの転生者の力になりたくて、これを手に入れた。これは、お前を護る剣だ」
まるで、誓いをたてるような強い口調で、聖剣の主となった少年は言った。
「でも、その剣で最初に攻撃した相手は僕だよね」
「……それは言わないでくれよ……」
ぼそりと呟くように茶化されて、シアルはガックリと肩を落とす。
それを見て、リオはプッと吹き出した。
「……お前、リュシアより性格悪い」
必死で笑いを堪えようとするリオを恨めしそうに眺め、シアルは呟く。
それから、リュシアを誰よりも慕う少年は、再び真剣なまなざしでリオを見据える。
「とにかく、今度結界の外へ行く時は、俺も連れてけよ」
シアルが言った直後、何者かの悲痛な【声】が、リオの心に届いた。
『……助……け……て……』
絞り出す様な、途切れがちの「言葉」。
(……誰?)
「どうした?」
急にキョロキョロと首を巡らせ始めるリオを見て、シアルが首を傾げる。
『……早く……私が……闇に飲まれる……前に…』
「大地の妖精?」
一つの方向に視線を定めた瞬間、黒い瞳が瑠璃色に変わった。
リオの姿が、瞬時にその場から消える。
「空間移動?」
しばし呆気にとられていたシアルは、やがてハッと気付いた。
「……って、さっき俺を連れてけって言ったのに!」
怒鳴ると、彼は駆け出す。
姿を消す直前、リオが視線を定めた方角を目指して。
制止の声を振り切り、少年は神殿の地下へと続く階段を駆け降りる。
エルティシアで最も古いとされるラーナ神殿には、古代人が残したという書物や道具が幾つも保管されていた。
書物の多くは解読出来ず、道具も使い方が分からぬ物が多い。
中でも一番不思議な存在は、水晶に似た透明な球に封じられた、一本の長剣。
夜明けの光と呼ばれるその剣は、遥か古代から【眠り】続けているという。
「聖なる剣よ、我が声に応え賜え!」
彼は自分と剣を遮る水晶球のようなものに両手で触れ、声を張り上げた。
老いた神官から伝え語りに聞いた、それは封印を解く為の言葉。
けれど、剣は何の変化も見せなかった。
(『剣が身を委ねるのは、強い光を心に宿す者』。俺じゃ駄目なのか?)
透明な球体にコツンと額をぶつけ、少年は唇を噛む。
「……夜明けの光よ……」
再び、彼は剣へと呼び掛けた。
「……頼む……。俺に力を貸してくれ。俺は、この世で一番大切な人を護りたい!」
強い想いを告げた直後、眩い金色の光が、球体の中央から一気に溢れ出る。
神々しい輝きを放つ長剣は、銀色の髪の少年に刀身を委ねた…―――
「俺はリュシアの転生者の力になりたくて、これを手に入れた。これは、お前を護る剣だ」
まるで、誓いをたてるような強い口調で、聖剣の主となった少年は言った。
「でも、その剣で最初に攻撃した相手は僕だよね」
「……それは言わないでくれよ……」
ぼそりと呟くように茶化されて、シアルはガックリと肩を落とす。
それを見て、リオはプッと吹き出した。
「……お前、リュシアより性格悪い」
必死で笑いを堪えようとするリオを恨めしそうに眺め、シアルは呟く。
それから、リュシアを誰よりも慕う少年は、再び真剣なまなざしでリオを見据える。
「とにかく、今度結界の外へ行く時は、俺も連れてけよ」
シアルが言った直後、何者かの悲痛な【声】が、リオの心に届いた。
『……助……け……て……』
絞り出す様な、途切れがちの「言葉」。
(……誰?)
「どうした?」
急にキョロキョロと首を巡らせ始めるリオを見て、シアルが首を傾げる。
『……早く……私が……闇に飲まれる……前に…』
「大地の妖精?」
一つの方向に視線を定めた瞬間、黒い瞳が瑠璃色に変わった。
リオの姿が、瞬時にその場から消える。
「空間移動?」
しばし呆気にとられていたシアルは、やがてハッと気付いた。
「……って、さっき俺を連れてけって言ったのに!」
怒鳴ると、彼は駆け出す。
姿を消す直前、リオが視線を定めた方角を目指して。
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