【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

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翔が書いた物語

第34話:告げられた真実

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 ファルスの森全体に異変が起こった。
 大地が激しく震動し、枯れて脆くなった木々の幹や枝が、たやすく砕け散る。
  半ば崩れかけ、廃屋の様な状態だった家々が、積み木の如く崩れ落ちた。

 「早く逃げろっ、出来るだけ遠くへ!」
  ニクスは怒鳴り、森の外へ指先を向けた。

  しかし、人々は誰もその場を動こうとはしない。
 「何をぐずぐずしてる、急げ!」
 「無駄だよ、もう我々の心は決まっている」
  尚も怒鳴る彼に、灰色の髪と瞳の老人スエッグが、嗄れた声で言う。
 「それに、今さら走り出しても間に合わんさ。ニクス、諦めろ。我々は随分長い間、自然に逆らい続けてきた……」
  その瞬間、森の中心部に位置する里の地下から、膨大な量の炎が吹き上がる。
 「……もうそろそろ、戻ろう……」
  スエッグの言葉を最後に、ファルスの森は炎に包まれた。

 人と獣、二つの姿をもつ人々は、全員がまるで紙の様に燃え上がる。
 彼等は一瞬の内に灰と化し、風と炎の中に消えていった。

 「あぁっ!」
  痩せた少年が、絶叫して身体を硬直させる。
 「アーヴ?!」
  リオの意識が【リュシア】を押し退け、真紅に染まった異空間を進んでアーヴに近付いた。
  苦しそうに仰け反って悲鳴を上げ続けるアーヴを抱き寄せて、彼は息を呑む。

  華奢な少年の身体が、腕の中で消し炭の様に崩れてゆく。
  焦点の合わぬ金茶色の瞳も引き吊った頬も、まるで乾いた土団子の様に脆く崩れる。

  目の前で、少年の身体は分解・四散し消え去った。
  空っぽになった腕の中を見つめて、リオはしばし呆然とする。

  ―――…一体、何が起きたのか…―――?

 「心配ない。その子は還っただけだ。本来の輪に……」
  背後の声に、リオは振り返った。
  そこには、冷静な表情で腕組みした創始の炎が立っている。

 「どういう事なんだっ!」
  珍しく語気を荒らげるリオを、創始の炎と呼ばれる妖精は怪訝そうに見つめる。

 「ファルスの民は、とうに滅びた一族なのだ」
 永く生きる妖精は、真実を告げる。
 「既に死んだ人間が、闇の薬によって魂を肉体に繋ぎ止めていたに過ぎない」
  告げられた真実に、リオは言葉が出てこなかった。

 「その子の仲間も今、炎の浄化を受けた。見てくるがいい、この地の本当の姿を……」
  温かいと感じるだけで熱くはない炎に包まれた途端、リオは上へ押し上げられた。

 『……貴様……よくも里を滅ぼしてくれたな……』
  地上へと送り出されたリオの前に、蜃気楼の様に実体の無い、赤い瞳と黒い肌や髪をした男が現れる。

 『せっかくあの方が永遠の命をくれたのに……貴様はそれをブチ壊した……』
  血のような色をした瞳でリオを睨み、男はその両手を伸ばしてきた。
  首でも締めようとするかのような仕草……
 ……けれど実体の無い手は虚しくすり抜け、男は悔し気に顔を歪めた。

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