【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

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翔が書いた物語

第25話:助けを求めて

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 「うわっ?!」
 死んだはずの人間に手首を捕まれる。
 ホラー映画のような体験に、リオは狼狽した。
 さすがに逃げ腰になってしまうが、体温の無い手は離してくれない。

 「リオ様!」
  声を上げたものの、エレアヌすら対処に途惑う。
  やがて、少年が起き上がり、何か言いた気に口を開いた。

 「……セ……イ……ジャ……」
  漏れた呟きを聞きながら、リオもエレアヌも固まる。

  焦点の定まらぬ少年の白濁した瞳が、透明な色彩を取り戻し始めた。
  琥珀色に変わった瞳に、漆黒の髪をもつ少年と、その傍らにいる黄金の髪をもつ青年が映る。

 「……キテ……クダサイ……」
  手首を掴んだまま、たどたどしい口調で、死んでいた筈の少年は言う。
  助けを求めて縋る者のような、切実な視線がリオに向けられた。

「『来て』って、一体どこへ?」
  リオは問うた。

 「……ファルス……ノ……サト……」
 「ファルスの里?」
  エレアヌも問う。

 「あそこは確か廃墟ではありませんか?」
  高い知性を秘めた緑の瞳が、謎多き少年を見据える。

 「……ソウ……」
  少年の瞳が、賢者と呼ばれる青年へと向けられた。

 「……ダケド……」
  言葉を上手く紡ぎ出せず、少年は口籠る。
  少年は、リオへと視線を移した。
  懇願の意を込めた、蜂蜜色の瞳が向けられる。
 リオの手首を掴む力が、僅かに強まった。

 「……聖者よ……」
  比較的はっきりとした言語で、少年は呼び掛けた。

 「どうか……ファルスの民……を……助けて……」
  絞り出すような声に、リオの心は揺れた。

  深層意識に在る前世の思念が、ゆっくりと浮上してくる。
 リオの中で【リュシア】は話を聞いていた。
 そして、表層意識がリオと入れ替わる。
 彼は傍らのエレアヌに目を向けた。
 その瞳が、聖なる青へと変化する。

「ファルスの里に何があるのか、今は俺にも分からない」
  リオより強い意思をもつリュシアは、低いがよく通る声で告げる。

 「だけど、助けを求める者がそこに居て、俺にそれが可能だというなら、行ってみようと思う」
 まっすぐに見据える瑠璃色の瞳を見て、反対しても無駄だとエレアヌは悟る。

「真理は、貴方の中にあるのです。私は、貴方がなさる事を止めはしません」
  穏やかな若草色の瞳で見つめ返し、温和な青年は静かに応えた。
  それを確認すると、リュシアは座っている少年の方を向く。

 「案内してもらえるか?」
 問われて、少年は頷いた。
 そして掴んでいた手を離し、床へ降りようとする。
 ふらつく身体を気遣い、リュシアは少年を抱き上げた。
 痩せすぎた少年の身体は軽く、意識がある今も冷たかった。
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