【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
355 / 428
翔が書いた物語

第6話:拒絶される色

しおりを挟む
 ラーナ神殿と呼ばれる、白亜の建物。
 見張りの塔から目をこらしていた若い男が、何かに気付くと大慌てで建物の中に駆け込んだ。

 「緑の賢者様が帰られたぞ!」
  神殿の中にいた人々が、次々に建物の前の広場に出てくる。
  周辺にある畑の手入れをしていた人々も、バラバラと駆け寄って来た。
  陽光を受けて、様々な色に輝く髪。
 彼等は、彫りの深い顔と白人よりも白い肌、宝石のように美しい髪や瞳をもっていた。

 「若長の転生者が見つかったのですか?」
  空から降りて来る者たちを見て、期待に瞳を輝かせて駆け寄って来る人々。

 けれど地面に降り立つ1人、リオの髪の色に気付いた途端、人々は凍りついた様に立ち止まった。
 「エレアヌ様、その少年は……!」
  彼等の顔はサッと青ざめ、悲鳴を上げる女性すらもいる。
 「闇色の髪と瞳! 何故そんな魔物を連れて来たのですか?!」

(……またかよ……)
  シアルを抱えたまま、リオはフーッと溜め息をついた。

  ここまで運ばれてくる間に、エレアヌから白き民が黒を嫌う事や、このエルティシアの人間はみな色素の薄い肌に鮮やかな色彩の髪と瞳をしていて、黒色人種や黄色人種のように黒い肌や髪や瞳をもつ者は存在しない事を聞かされた。
  けれど、さすがに化け物でも見るような目を向けられては嫌になる。
  幸い、彼等はシアルのように攻撃してくる事は無かったが、引き吊った顔でジリジリと後退してゆく。

 「彼は魔物ではありません。異なる世界から来た、リュシア様の生まれ変わりです」
  エレアヌが穏やかな口調で諭したが、人々の目から怯えの色は消えなかった。

 「その証はあるのですか?」
  サファイアブルーの髪をした若者が、皆の間から進み出てきて言う。

 「その少年がリュシア様の魂を宿しているという、確かな証拠が無ければ、私たちは納得出来ません」
 「証拠なら……そこにいるテイト」
  それに対し、エレアヌは若者の背後にいる琥珀色の髪の男に問いかける。
 「今日の見張り番は貴方でしたね?」
 「は……はい……」
  テイトと呼ばれた若い男は、少し震える声で答えた。
  彼は空を飛んで来たエレアヌ達を最初に見つけ、皆に知らせた者である。

 「貴方は見たでしょう、風の妖精エアリゥセに運ばれる私達を……」
「は、はい。見ました」
  淡い緑の宝石に似た瞳に見つめられ、男はおずおずと首を縦に振った。

 「世界の大半が闇に染まって以来、妖精達の心は人から離れていましたね? 彼等に友と認められ、力を貸してもらえるのはリュシア様だけだという事は、皆も知っているでしょう?」
  エレアヌは人々の目から目へ、視線を巡らせる。

 「確かに、風の妖精エアリゥセ達に運ばれたのが本当なら、その少年は転生者リーンティアかもしれません。しかし、魔物は幻術で人を惑わすといいます。エレアヌ様やテイトが、その幻術に騙されていないと言い切れますか?」
  反論したのは、青い髪の若者。
 「もしそうなら、今頃ここにいる皆も幻術にかかり、彼がリュシア様の生まれ変わりだと思わされていますよ」
  そう言って、エレアヌは微笑んだ。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

トレジャーキッズ

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。 ただ、それだけだったのに…… 自分の存在は何のため? 何のために生きているのか? 世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか? 苦悩する子どもと親の物語です。 非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。 まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。 ※更新は週一・日曜日公開を目標 何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。 【1】のみ自費出版販売をしております。 追加で修正しているため、全く同じではありません。 できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...