【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

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夢の内容を元に書いたイオ視点の話

第85話:世界樹の森

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 ───昔々、創世神かみさまは、不毛の地に1粒の種を落とした。
 そこは、愚かなニンゲンが戦争を起こし、焼き尽くして全ての生き物が消えた場所。

 ……再び生命いのちが生まれるように……

 創世神かみさまは、再生と浄化の力を、その種に与える。
 種は芽吹き、根や枝葉をのばし、枝から気根を垂らして新たな木を作ってゆく。
 とても長い時代ときをかけて、1粒の種は森を創った。
 神はその木を世界樹と名付けた。

 不毛の地には、滅びたニンゲンの悪意と、滅びの兵器の毒が残っていた。
 世界樹は悪意と毒を大地から取り除き、1つの黒い果実に変える。
 神はそれをもぎ取り、ニンゲンに似せた姿の魔王に変えた。

 ……この悪意と毒を、打ち消すものを創ろう……

 そして神は、魔王を倒す種族を創る。
 ニンゲンに似た姿をしつつも、ニンゲンではない存在。
 千年の時を生きる、その種族は世界樹の民…───


 禁書で読んだ歴史が、記憶の表面に浮かんでくる。
 蒼天の下にあるのは、広大な深緑の樹海。
 心地よい風が吹き、枝から離れた木の葉が空へと舞い上がる。
 転送陣ゲートを通り抜けた先は、世界樹の森と呼ばれる場所だった。

「凄い、四季の森よりも広いですね」

 江原がその広さに感動して言う。
 下は見渡す限り緑の森が広がっていて、その向こうには地平線が見えた。

「ここは、転生者たちが前世で生まれ育った場所ニャン」

 ドナベのふちに顎を乗せて眼下の風景を眺めながら、三毛猫国王が言う。

 召喚獣を持ってから、四季の森の上空を飛ぶ事は何度かあった。
 けれど、この樹海を見た時のような感覚は、四季の森には無かった。

「不思議……この風景を見てると、心の奥がジワッとするの」
「前世の記憶なんて無いのに、懐かしいって感じるね」

 カジュちゃんとリユがドナベの中から顔を出して、下を眺めながらそんな話をしてる。

「……………」

 ふと横を見れば、モチが鼻の穴広げて真顔になってた。
 ただ、いつもと違って、その両目から涙が溢れ、次々に頬を伝って落ちている。

 ポツッ

 ベノワの首元に雫が落ちて、俺は自分も泣いている事に気付いた。
 心の深い底の辺りで、温かいような、切ないような感情がある。

 今ここにいる4人の転生者は、誰も前世を覚えてはいない。
 けれどその森の風景には、心を揺さぶる何かがあった。


「そろそろ下へ降りるニャン」

 三毛猫国王が乗るドナベと、女子たちが乗るドナベが、揃って下降し始める。
 UFOの着陸みたいにスーッと滑らかにゆっくりと下降するそれに、召喚獣に乗ってる3人が続いた。
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