321 / 428
夢の内容を元に書いたイオ視点の話
第64話:冬の森へ
しおりを挟む
「今日は冬の森へ行くぞ」
翌朝、クラスの朝礼で松本先生が告げた。
そこへ別クラスのカジュちゃんが、箱を2つ抱えて走って来る。
「はいこれ着てね。冬の森は気温氷点下だけど、2人とも元気だから寒くないかな?」
「「いや寒いって」」
箱を俺たちに渡しながらそんな事を言うカジュちゃんには、ハモりツッコミを返しておいたよ。
箱に入っていたのは、防寒用のロングコート。
足首まであるゆったりした作りで、フードも付いている。
胸元だけ留め具が付いていて、あとはボタンは無く開いたままになるデザインだ。
どっかで見たような?
って思ってジーッと眺めてたら……
「ちなみに、それを作らせたのは山根だ」
……って先生に言われて納得。
猫が後ろ足立ちしたような二足歩行の獣人の学校には、ヒューマン用の制服は元々無かったという。
猫人用の服は、体つきが違うので合わない。
転移者が入学した際は特注で制服を用意するらしい。
それで、山根さんが仕立て屋にオーダーして作ってもらったのが、今の制服。
普段はツーンとしてクールな山根さんが、その時は目を輝かせて楽しそうに発注していたらしい。
山根さんは、魔法使いの物語が大好きで、紙の本を購入して持っているほど。
Web版よりも手に重みを感じられる本の方がいいと言う。
異世界の学園で魔法もあるとくれば、魔法使いのローブ風のロングコートをリクエストするだろうね。
左胸の刺繍が猫のシルエットになってるのは、彼女の遊び心と思われる。
日本にいた頃と変わらぬツンツンクールな人だけど、山根さんはこの異世界転移を楽しんでいるのかもしれない。
ちょっと微笑ましく感じつつ、俺は受け取ったコートを着てみた。
「お~、全然寒くない」
森に入ってしばらくして、モチが感動して言う。
「コートに覆われてない部分も冷えないって凄いな」
山根さんデザインのコートは防寒機能が素晴らしかった。
パウダースノーが融けない、氷点下の森の中でも寒くない。
森の木々を飾るのは、白く煌めく美しい樹霜。
樹霜は空気中の水蒸気が霜となり、樹木などに凍りついたもの
これは、気温が氷点下でないと結晶しないし維持出来ない。
途中で見かけた湖は水面が凍っていて、その上に白い花のようなものが散らばっている。
それは日本ではフロストフラワーと呼ばれる寒冷地の風物詩。
湖に張った氷の上に、水蒸気が付着して氷の結晶を作り、それが大きくなると花のように見えるもの。
フロストフラワーが出来てるって事は、冬の森の気温は-15℃より低いと思うよ。
白く美しい森の中を通り、着いたのは入口に大きな氷柱が下がってる洞窟。
「ここの魔物は最上級だからな。トラップもあるぞ。初心者は気を付けて進め」
って言いながら、先生が先頭に立たせるのは、もちろん初心者の俺。
最上級が出る場所でも、トラップがあっても、心配してくれないのはどうかと思うよ?
翌朝、クラスの朝礼で松本先生が告げた。
そこへ別クラスのカジュちゃんが、箱を2つ抱えて走って来る。
「はいこれ着てね。冬の森は気温氷点下だけど、2人とも元気だから寒くないかな?」
「「いや寒いって」」
箱を俺たちに渡しながらそんな事を言うカジュちゃんには、ハモりツッコミを返しておいたよ。
箱に入っていたのは、防寒用のロングコート。
足首まであるゆったりした作りで、フードも付いている。
胸元だけ留め具が付いていて、あとはボタンは無く開いたままになるデザインだ。
どっかで見たような?
って思ってジーッと眺めてたら……
「ちなみに、それを作らせたのは山根だ」
……って先生に言われて納得。
猫が後ろ足立ちしたような二足歩行の獣人の学校には、ヒューマン用の制服は元々無かったという。
猫人用の服は、体つきが違うので合わない。
転移者が入学した際は特注で制服を用意するらしい。
それで、山根さんが仕立て屋にオーダーして作ってもらったのが、今の制服。
普段はツーンとしてクールな山根さんが、その時は目を輝かせて楽しそうに発注していたらしい。
山根さんは、魔法使いの物語が大好きで、紙の本を購入して持っているほど。
Web版よりも手に重みを感じられる本の方がいいと言う。
異世界の学園で魔法もあるとくれば、魔法使いのローブ風のロングコートをリクエストするだろうね。
左胸の刺繍が猫のシルエットになってるのは、彼女の遊び心と思われる。
日本にいた頃と変わらぬツンツンクールな人だけど、山根さんはこの異世界転移を楽しんでいるのかもしれない。
ちょっと微笑ましく感じつつ、俺は受け取ったコートを着てみた。
「お~、全然寒くない」
森に入ってしばらくして、モチが感動して言う。
「コートに覆われてない部分も冷えないって凄いな」
山根さんデザインのコートは防寒機能が素晴らしかった。
パウダースノーが融けない、氷点下の森の中でも寒くない。
森の木々を飾るのは、白く煌めく美しい樹霜。
樹霜は空気中の水蒸気が霜となり、樹木などに凍りついたもの
これは、気温が氷点下でないと結晶しないし維持出来ない。
途中で見かけた湖は水面が凍っていて、その上に白い花のようなものが散らばっている。
それは日本ではフロストフラワーと呼ばれる寒冷地の風物詩。
湖に張った氷の上に、水蒸気が付着して氷の結晶を作り、それが大きくなると花のように見えるもの。
フロストフラワーが出来てるって事は、冬の森の気温は-15℃より低いと思うよ。
白く美しい森の中を通り、着いたのは入口に大きな氷柱が下がってる洞窟。
「ここの魔物は最上級だからな。トラップもあるぞ。初心者は気を付けて進め」
って言いながら、先生が先頭に立たせるのは、もちろん初心者の俺。
最上級が出る場所でも、トラップがあっても、心配してくれないのはどうかと思うよ?
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~
あめり
ファンタジー
ある日、相沢智司(アイザワサトシ)は自らに秘められていた力を開放し、魔神として異世界へ転生を果たすことになった。強大な力で大抵の願望は成就させることが可能だ。
彼が望んだものは……順風満帆な学園生活を送りたいというもの。15歳であり、これから高校に入る予定であった彼にとっては至極自然な願望だった。平凡過ぎるが。
だが、彼の考えとは裏腹に異世界の各組織は魔神討伐としての牙を剥き出しにしていた。身にかかる火の粉は、自分自身で払わなければならない。智司の望む、楽しい学園生活を脅かす存在はどんな者であろうと容赦はしない!
強大過ぎる力の使い方をある意味で間違えている転生魔神、相沢智司。その能力に魅了された女性陣や仲間たちとの交流を大切にし、また、住処を襲う輩は排除しつつ、人間世界へ繰り出します!
※番外編の「地球帰還の魔神~地球へと帰った智司くんはそこでも自由に楽しみます~」というのも書いています。よろしければそちらもお楽しみください。本編60話くらいまでのネタバレがあるかも。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)
たぬころまんじゅう
ファンタジー
小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。
しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。
士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。
領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。
異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル!
☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる