【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

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夢の内容を元に書いたイオ視点の話

第64話:冬の森へ

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「今日は冬の森へ行くぞ」

 翌朝、クラスの朝礼で松本先生が告げた。

 そこへ別クラスのカジュちゃんが、箱を2つ抱えて走って来る。

「はいこれ着てね。冬の森は気温氷点下だけど、2人とも元気だから寒くないかな?」
「「いや寒いって」」

 箱を俺たちに渡しながらそんな事を言うカジュちゃんには、ハモりツッコミを返しておいたよ。

 箱に入っていたのは、防寒用のロングコート。
 足首まであるゆったりした作りで、フードも付いている。
 胸元だけ留め具が付いていて、あとはボタンは無く開いたままになるデザインだ。

 どっかで見たような?
 って思ってジーッと眺めてたら……

「ちなみに、それを作らせたのは山根だ」

 ……って先生に言われて納得。

 猫が後ろ足立ちしたような二足歩行の獣人の学校には、ヒューマン用の制服は元々無かったという。
 猫人用の服は、体つきが違うので合わない。
 転移者が入学した際は特注で制服を用意するらしい。
 それで、山根さんが仕立て屋にオーダーして作ってもらったのが、今の制服。
 普段はツーンとしてクールな山根さんが、その時は目を輝かせて楽しそうに発注していたらしい。

 山根さんは、魔法使いの物語が大好きで、紙の本を購入して持っているほど。
 Web版よりも手に重みを感じられる本の方がいいと言う。
 異世界の学園で魔法もあるとくれば、魔法使いのローブ風のロングコートをリクエストするだろうね。
 左胸の刺繍が猫のシルエットになってるのは、彼女の遊び心と思われる。
 日本にいた頃と変わらぬツンツンクールな人だけど、山根さんはこの異世界転移を楽しんでいるのかもしれない。
 ちょっと微笑ましく感じつつ、俺は受け取ったコートを着てみた。

「お~、全然寒くない」

 森に入ってしばらくして、モチが感動して言う。

「コートに覆われてない部分も冷えないって凄いな」

 山根さんデザインのコートは防寒機能が素晴らしかった。
 パウダースノーが融けない、氷点下の森の中でも寒くない。

 森の木々を飾るのは、白く煌めく美しい樹霜。
 樹霜は空気中の水蒸気が霜となり、樹木などに凍りついたもの
 これは、気温が氷点下でないと結晶しないし維持出来ない。

 途中で見かけた湖は水面が凍っていて、その上に白い花のようなものが散らばっている。
 それは日本ではフロストフラワーと呼ばれる寒冷地の風物詩。
 湖に張った氷の上に、水蒸気が付着して氷の結晶を作り、それが大きくなると花のように見えるもの。
 フロストフラワーが出来てるって事は、冬の森の気温は-15℃より低いと思うよ。

 白く美しい森の中を通り、着いたのは入口に大きな氷柱が下がってる洞窟。

「ここの魔物は最上級だからな。トラップもあるぞ。初心者は気を付けて進め」

 って言いながら、先生が先頭に立たせるのは、もちろん初心者の俺。

 最上級が出る場所でも、トラップがあっても、心配してくれないのはどうかと思うよ?
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