【画像あり】転生双子の異世界生活～株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編～

夢の内容を元に書いたイオ視点の話

第６０話：心も凍りそうな氷魔法講習

　３つ目の飛ばされ先は、冷凍庫の中か？　ってくらいに寒い部屋だった。
　部屋といっても、その広さは体育館より面積がある。
　その床は、白い氷に覆われていた。

「寒っ！　何だこの部屋……」

　白い息を吐いて、モチがブツクサ言いながら右手を床に向ける。

「出てこいフラム、氷を融かせ」

　命じると不死鳥フェニックスが現れて、氷上を優雅に旋回してゆく。
【フラム】というのはこの鳥が孵化する際にモチの頭の中に伝わってきた名前らしい。
　不死鳥フェニックスの炎は命じられた対象、つまり今は床にある氷のみに影響を与え、他には害を及ぼさない。
　結果、床を覆っていた氷だけが超高温で融けて蒸発し、室内の他の物は燃えたり焦げたりせずにそのままだ。
　部屋の温度は上がり、冷凍庫みたいな寒さではなくなり、冷房を強めに効かせたくらいになった。

「ふう、これで過ごしやすくなったな」

　命令を完了させて戻って来た不死鳥フェニックスをヨシヨシと撫でて、満足そうにモチが広い室内を見渡していると……

「何やってんのよ」

　……心が底冷えしそうな、低くて怖～い声が聞こえた。

「「「！！！」」」

　モチも俺も、ついでに不死鳥フェニックスも、その声に凍り付きそうなくらいビビりまくる。

　声の主が誰かは、すぐ分かった。

「誰が氷を融かしていいって言った？」

　山根さんだ。

　絶対零度の美少女が、白いワンピースを着て、部屋の扉の前に立ってる。

「この後、体育学部のフィギュアスケートクラスが練習に来るんだけど」

　そこまで聞いた時点で、モチがサーッと青ざめる。
　不死鳥フェニックスも怯えて目を見開き、両翼でモチに抱きついた。

「氷、出・し・て・くれる？」

　凄まれて、モチがヒィッとすくみ上がる。
　不死鳥フェニックスも抱き付きっぱなしだ。

「……す、すいません、俺まだ氷……」
「なんか言った？」

　氷魔法を覚えてない、と言いかけるモチに更に凄む山根さん。

　やめて～！
　モチのメンタルはもう氷点下だよ～！

「………」

　モチと不死鳥フェニックスが目をウルウルさせ始めたところで、山根さんは片手をスッとモチの頭上に近付ける。

　グーで殴られちゃう？！

　と思ったけどそうではなく、異空間倉庫ストレージから出した本で、痛くない程度に軽く頭を叩いただけだった。

「へ………？」

　モチ、しばし呆然。

「あんたが氷魔法をまだ使えない事くらい知ってるわよ。これで習得しなさい」

　そう言って、山根さんはモチに氷魔法の魔法書を渡した。
　その表情は、絶対零度から氷点下４０℃程度に和らいでいる。

「覚えたらここの床一面に氷を張って、アイススケートリンクを作りなさい」
「は、はい！」

　モチは必死で魔法を読み………

「最上位氷魔法マヒャデドス！」

　………なんか強そうな氷魔法を覚えた。

　ブワッと氷の結晶が部屋全体に舞い、床に落ちたら凍結が一気に広がる。
　融ける前よりガッチリと床に氷が張ってゆく。
　氷の表面は鏡のように平らで滑らかで、アイススケートリンクが完成した。

「やれば出来るじゃない」

　褒められて、ホッとするモチ。

「ここでの修行は終わりよ。次へ行きなさい」

　そう言われたら、もうこの後は予想通り。

　山根さんが起動した転送陣で、俺たちは次の場所へ飛ばされていった。