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夢の内容を元に書いたイオ視点の話

第42話:ノエル商会

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「あの時計台の鐘が5つ鳴ったら、街の外の広場に集合だよ」

 門をくぐってすぐ、ロッサ先生が言う。

 オトンヌの街はファンタジー作品によくある中世ヨーロッパ風の街並みで、中央には大きな時計台がある。
 その時を告げる鐘は、街のどこにいても聞こえるらしい。

「魔法学部の生徒は、案内役の生徒とはぐれないように気を付けて行動しろよ」

 と指示する松本先生は、ロッサ先生と一緒に行動する予定。

「では自由行動開始!」

 松本先生の指示で、生徒たちはそれぞれ2人1組で行動を始める。

 俺はここまで一緒に来たチッチとのコンビ、モチは不死鳥フェニックス主人マスターとのコンビ。
 他メンバーもみんなここまで乗せて来てくれた生徒と組んでる。

「まずは宝石商を案内するよ」

 チッチが頼もしい。

 召喚獣のピピルは、今はスズメくらいの青い小鳥になってチッチの肩に乗ってる。
 そのサイズになるとオオルリの雄に似てるな。
 オオルリの雄は背中や尾がコバルトブルーで、顔と喉に黒が入り、お腹は白い。
 ピピルは全身鮮やかな青色だ。
 主人マスターの猫人チッチの毛並みも同じ濃い青色で、ピピルにとっては保護色になりそう。
 とか言ってる俺の髪も同じ色なので、ピピルが頭に乗ったら遠くからは見つけにくい保護色になるだろう。

 チッチ&ピピルと歩く街の中は明るい雰囲気で賑やか。
 宝石商直行のため通り過ぎた中央広場は、時計台を囲むように屋台が並んでる。
 そこからいろいろな美味しそうな匂いが漂っていて、胃袋を刺激された。

 あそこの串焼き、肉は多分オークかな?
 豚肉を炙り焼きした時と似た美味そうな匂いがする。
 お金を手に入れたら買いに行こう。

 そんな事を考えつつチッチの後について歩いてゆくと、大きな店構えの商店に着いた。

「ここが一番高く買い取ってくれて、信用も出来る店だよ」

 そう説明して、チッチが店の中に入り、俺も続いて入る。

「いらっしゃいませ、買い取りですかな?」

 優しそうで上品な雰囲気の猫人がカウンターにいて、ニコニコしながら話しかけてきた。
 艶やかな漆黒の長毛が美しい長身の猫人。
 声からして多分男性かな?
 銀縁の片眼鏡モノクルが似合うイケニャンだ。

「はい。秋の森の魔物からドロップした品です」
「なるほど。ではこちらへ」

 チッチの説明で察したらしく、イケニャンが俺たちを奥の部屋へ案内する。
 そこは、高額になる商品の売買時に入る応接室だった。

「ようこそ、ノエル商会へ。私は店主のファミ・ノエルです」

 フサフサ長毛の黒猫イケニャンは店主らしい。

「アサケ学園・動植物学部の学生チッチ・ラズリです」
「アサケ学園・魔法学部の学生イオ・アズール・セレストです」

 チッチがフルネームで名乗ったので、俺もフルネームで名乗り……

 ……自分の異変に、気付いた。

 日本でのフルネーム、違ったような?
 なんでセカンドネームついてんの?
 そもそも日本人にセレストなんて苗字ないだろ?

「どうしたの?」

 多分俺がびっくりした顔になってたんだろう、チッチが首を傾げて聞いてくる。

「聞いてもいい? 異世界から来た人って、名前の記憶が変わったりする?」

 困惑しつつ俺が聞いたら、チッチは「あ~そうか!」って何か納得の顔した。

「あ、学園長から説明受けてなかったんだね。転生者は前世の名前に記憶が書き換えられるらしいよ」
「転移者さんかと思ったら、転生者さんだったのですね」

 チッチが説明してくれて、ファミさんが納得。
 転生者で転移者なんだけどね、正しくは。

「その転生者もまだよくわかんなくて。この世界、こういう容姿の民族が何処かにいるの?」

 禁書に書いてあった歴史では、ヒューマンタイプの「ニンゲン」は絶滅したと書いてあったけど。
 ジャミさんやタマが見せてくれた前世は猫人ではなく人間の姿だった。
 しかもそれは古代に絶滅したものではなく、今の文明の時代に生まれた者だとか。

「実際にまだ見た事は無いけど、授業で習ったよ。隠された地、世界樹の森にいるって」

 ……なんかファンタジーな授業内容キタ!

 前世の俺やモチたちって、そこの生まれなのか?

「図書館に世界樹の森について書いた本があるから、読んでみるといいよ」
「今度行ったら読んでみる」

 そういや、禁書ばっかり読んでて、まだ一般閲覧コーナーの本を読んでなかった。
 明日の放課後はその本を読もう。
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