【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
235 / 428
前世編

第113話:異世界の発明家

しおりを挟む
 異世界転移でこちら側に来たルイこと詩川琉生。
 工学分野に優れた才を持って生まれてきた彼は、元の世界にある便利な道具を、こちらの世界に魔道具として再現させた。
 その他に、この世界にあるものをアレンジする事もある。
 彼が神から授かったギフト【想像再現アンヴォンテ】は、心に思い描く物を物質化する能力だ。

「僕、こちらの父さん母さんも大好きだけど、日本の家族も大切なんです」

 彼はそう言って、元の世界へ帰るための魔道具開発を始めた。
 その魔道具は、2つの世界を行き来できるという、神の領域といえるもの。
 完成した試作品は、最初にルイ本人が試運転して日本へ行き、自分の部屋への移動に成功した。

「魔導具の神がきた!」
「魔工学部に伝説誕生だ!」

 起動と共に転移してゆくルイを見て、研究を手伝う魔工学部の学生たちが声を上げた。

 その後、日本からアサケ学園の実験棟へ戻って来たルイを、実験を見学していた魔工学部の先生と生徒一同、ナジャ学園長、ナムロ国王、エカとソナ、アズたちが歓声で迎える。

 続いて誰かを連れて移動する実験になり、最初の同行者は希望者多数の中、ルイの前世の父親アズが選ばれた。

「向こうの御両親に挨拶してくる」

 なんて言って日本に転移するアズとルイを笑って見送った一同。

 数分後、異変に騒然となる。

「助けて!」

 狼狽した様子で叫ぶルイ。
 床に座り込んだ状態で戻ってきた彼の腕には、血の気の引いた顔で目を閉じてグッタリしているアズが抱かれていた。

 アズがそんな状態になるなんて見た事が無い。
 ありえない状況にみんな動けない中、真っ先に動いたのはソナの召喚獣ルビイ。

『パパ!』

 ソナが命じなくても飛び出し、不死鳥フェニックスの姿に実体化してアズとルイを両翼で包んだ。

 ルビイはアズが孵化させた不死鳥、その絆がアズの危機を報せて行動に出たらしい。
 つまり今、アズは蘇生が必要な状態って事だ。

「ごめんなさい! まさかこんな事になるなんて……」

 ルビイの力で蘇生して目を開けたアズを、号泣しながらルイが抱き締める。

「向こうに着いたと思ったら、急に息が出来なくなって……あとは覚えてない」

 意識が戻ったアズは、自身に起きた異変をそう説明した。

「完全回避どうしたんだよ……」

 動揺しすぎていつもの変顔すら出ないエカが、青ざめた顔で言う。

 アズの事は、双子のエカが誰よりも知ってる。
 完全回避はアズの身体と精神の両方に及ぶ。
 アズには物理攻撃も魔法攻撃も当たらないし、毒や呪いその他様々な状態異常も受ける事は無い。
 それなのに、日本へ行っただけで死亡するってどういう事?


 この異常事態を、エカたちは創造神かみさまへ報告に行った。

『あちらの世界は別の神が管理する場所、私が授けた完全回避の効果は及ばない』

 創造神かみさま最初に教えてくれたのは、異世界では完全回避が無効化されるという事。

『そして、あちらの世界では、こちらの生き物は生存出来ないようだ』

 次に教えてくれたのは、地球という世界の環境にこちらの生き物は適応出来ずに死亡するという事。

 世界樹の中でアズの身体を調べてもらった結果、彼は完全回避が無効化された状態で地球の大気を吸ってしまったため、そこに含まれる猛毒に耐えられなくて呼吸と心臓が止まった事が分った。

「ごめんなさい……僕が不用意に転移させちゃったから……」

 ルイはまだショックから立ち直れないらしく、アズに抱きついて涙を零し続ける。

「向こうの御両親に挨拶出来なかったのは残念だけど、こちらへ来てもらえたら何か御馳走するよ」

 アズはそう言って、ルイの頭を撫で続けた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~

黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。 ※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...