【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
226 / 428
前世編

第104話:創造神の言葉

しおりを挟む
 ソナが目覚めた後、エカたちは世界樹の根元に来ていた。
 ルルはケモミミ姿のまま捕獲玉に封じられ、アズのベルトポーチに収められている。

 報告には現在存命中の全ての世界樹の民が集まっている。
 中にはロコのように里を離れて何百年も経つ者もいた。
 里に入る事が出来るアサケ王国の国王や、アサケ学園の学園長も来ている。

 世界樹の民は【魔王と戦う為】に創られたもの、当代勇者のエカとアズはアサギリ島へ向かった時点で魔王を倒す事が義務付けられていた。
 でもアズが魔王ルルを殺す事を拒み、エカは魔王専用の爆裂魔法を使っていない。
 これまでの歴史では無かった事態に、世界樹の民たちはかなり動揺した。

『お前たちは消されるかもしれない……』

 ジャスさんは息子たちに悲痛な思いで予告した。
 念話で伝えたのは、一緒にいるソナに聞こえないように配慮したのかもしれない。

 エカの爆裂魔法と、アズの完全回避は、どちらも世界に1人だけが与えられるもの。
 つまりエカが生きている限り、魔王を斃せる者は生まれてこない。
 その魔王はアズが護っている間は爆裂魔法でも殺す事は不可能だ。
 エカは誰かが殺したとしても復活するし、アズには毒も魔法も物理攻撃も一切効かない。
 2人の命を奪えるのは、創造神かみさまだけだ。

 世界樹の根元に集まった一同は、跪いて創造神の言葉を待った。
 根元に一番近いところには、この事態を起こした張本人のアズが同じく跪いている。

『まず、魔王の心臓を6つまで破壊出来た事は褒めておこう』

 その場に居る全員の心に、念話が流れ込んでくる。
 創造神かみさまにいきなり怒られるかも、と緊張していたエカは少しホッとしていた。

『魔王の心臓は持ち主の意志によって古代の兵器と同等の殺戮を行なうもの。爆裂魔法で消し去れば次代の魔王の転生まで出現はしない』

 魔王の蘇生用だと思っていた心臓は、それ以外に危険な力も秘めていたらしい。
 正確には6つ目ではなく魔王本体の心臓なんだけど、そこは大した違いは無いのかな?
 ルルは自分が持つ心臓を破壊された後、少年の中にあった6つ目の心臓を回収して自己蘇生している。

『魔王も黒い血を失った今は大した事は出来ぬであろう』

 アズのベルトポーチが見えない力で開けられ、ルルが入った捕獲玉がふわりと空中に浮かぶ。
 捕獲玉は空中を漂い、世界樹の中に入っていった。

『ルルを殺さないで下さい……』

 アズが念話で懇願する。
 身体は動かせないみたいだ。
 捕獲玉を抜き取る時に抵抗しないように麻痺させられたらしい。
 アズの身体が麻痺なんて受けるのは初めてだろうね。

『これは仲間ではないが、護りたいと思うのか?』
『ルルは俺の子です』
『妻も恋人もおらぬ男に子は成せぬよ』
『養子です』

 ……創造神かみさまとアズの会話が、おかしな方向になってるような……?

『この者はそのようには思っておらぬぞ?』
『……え?』
『其方を慕ってはおるが、親とは思っておらぬ』
『……そうですか……。でも、俺にとっては大切な子です』

 神様の言葉に含まれる意味を、ボクは察したけどアズは分からないみたいだ。
 アズの真後ろで跪いているエカとソナは、何となく察してるみたいだけどね。

『まあよい。この者からは魔王の力が失われておるゆえ、生かしておいても害は無かろう』

 創造神かみさまの言葉と共に、捕獲玉がまた空中を漂ってアズのベルトポーチに戻される。
 直後に麻痺を解かれたアズが、深々と頭を下げた。

『悪さをせぬように、其方が常に傍にいて見張りなさい』
『わかりました』
『では、当代の勇者たちは使命を果たしたものとしよう。以後は自らが願う未来を生きなさい』
『『ありがとうございます!』』

 双子の勇者の念話が重なる。
 後方で緊張しながら成り行きを見守っていた人々も、ホッとした様子だった。

 エカとアズが消されるなんて事にならなくて良かった。
 ボクもベノワも主人マスターを失わずに済んでホッとしたよ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~

黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。 ※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...