【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
213 / 428
前世編

第91話:心臓の隠し場所

しおりを挟む
 魔王本体を含めて、7つあるという魔王の心臓。
 その5つ目までの破壊を終えたエカは、アサケ学園の生徒会室に呼ばれていた。
 学園内なので赤い毛並みの仔猫人に変身しているエカに、異世界人として認識されているので人型を維持するソナもついて行った。

 生徒会室には、銀のシマシマ猫人に変身した生徒会長ロコ、サビ柄の猫人副会長コッコ、不死鳥キイの主人だけど元の毛色を維持する茶トラ猫人カイ、コッコの双子の妹でサビ柄猫人の書記ケコがいる。
 見た目ソックリのでっぷり太った三毛猫人の王様と学園長、白猫人の王太后ジャミ様もいる。
 薄紅色の毛並みと水色の毛並みの仔猫人に変身した世界樹の子供たち、ローズとエアまで揃っていた。

「あれ? アズは?」

 その中に青い毛並みの仔猫人も青い髪の少年もいない事に気付いて、エカは聞いた。
 これだけ揃っているのに、エカと同じ魔王討伐の要であるアズが不在なのが不思議だ。

「アズは禁書閲覧室で調べものをしているわ」

 教えてくれたケコは、黒い表紙に金文字でタイトルが書かれた分厚い本を抱えている。
 エカは何度か図書館へ行ってるけど、黒い表紙の本は見た事が無かった。

「そういえばアズが『禁書が読める』って言ってたけど、学園の図書館にあるんですか?」
「これがその禁書の1つよ。これがある場所に入れるのは、王族以外ではアズだけかもね」

 エカの問いかけに、ケコが本を差し出しながら答える。

「禁書を管理する神霊様の許可は得ているそうよ」

 そう言って渡された本を、エカはパラパラとめくって流し読みしてみた。
 本には、過去に発見された魔王の心臓について書かれている。
 これまでにエカが破壊した5つと同様にダンジョン最奥、岩の間、湖や溶岩の底に隠される事が多かったらしい。
 その中に特異な隠し場所として、竜や高位の魔族の体内という例も書いてあった。

「6つ目の心臓が見つからなくて、アズに話したらその本を貸してくれたの」
「こんなに良い本があるなら……」

 早く貸してくれればよかったのにと言いかけて、エカはハッとした。

 色々な隠し方をしてある魔王の心臓。
 未だ見つからない1つ。

 ……特異な隠し方……

 エカは、以前ルルが脱走した時の事を思い出した。
 魔王の分身に、連れ去られそうになっていた黒い仔犬。
 あの時、分身は「僕の物だ」と言った。
 それにこれまで、魔王の分身は心臓の側に出現している。

「……まさか、今みんな集まってるのは……」
「そう、ルルについてよ」

 エカの言葉を、ロコが続けた。
 ロコはローブのポケットから丸い鏡のような物を取り出して、エカに見せる。
 そこにはアサケ大陸の地図が映っていて、学園がある地域に真っ黒い点が表示されていた。

「異世界人が作った魔王と魔族探知用の魔導具よ。濃い黒色ほど魔王に近い存在なんだけど……」

 言いながら、ロコが鏡の表面を指先でつまんで開くような動作をすると、地図が拡大されて学園の建物配置図に変わる。
 黒点はその中の、図書館部分にあった。

「ルルの前世は魔族だから、探知して表示されるのは不思議じゃない。問題はここまで濃い色で表示されるのが、破壊する前の心臓5つとルルだけって事ね」

 ロコは愁いを帯びた溜息をつく。

「……ルルの体内に隠されているとしたら、どうやって取り出すんですか?」

 問いかけるエカの声が、少し掠れた。
 隣に立つソナは呆然として言葉が出なくなり、エカの手をギュッと握る。

 禁書の過去例では、心臓を隠されていた竜も魔族も討伐されている。
 体内の魔王の心臓ごと爆裂魔法で破壊したと書いてあった。
 でも、ルルは敵対者じゃない。

 一同が沈黙した時、扉が開く音がした。

「エカ、フラムの力を貸して」

 入って来たのはアズ、懐からルルが顔を出している。

 ボクの力を借りるという事が何を意味するか、エカもみんなも理解した。

「魔王の心臓はルルの心臓の中にある。破壊すれば、ルルも無事では済まない。だから、フラムの力で蘇生してほしいんだ」
「クゥン」

 アズと一緒に、ルルからもお願いされた気がした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

トレジャーキッズ

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。 ただ、それだけだったのに…… 自分の存在は何のため? 何のために生きているのか? 世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか? 苦悩する子どもと親の物語です。 非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。 まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。 ※更新は週一・日曜日公開を目標 何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。 【1】のみ自費出版販売をしております。 追加で修正しているため、全く同じではありません。 できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

処理中です...