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前世編
第89話:保護者みたいな弟
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「魔王の心臓はあの森の湖に沈んでるわ」
魔物も魔族も一掃された森を指差してコッコが言う。
「エカ、次の魔物が湧く前に破壊お願い」
「OK」
ロコに言われたエカが答えて、4人は森の中へ向かった。
シーツの端を持って歩くアズの後ろを、シーツを被った3人が一列になって続く。
なんだか奇妙な光景だけど、これなら敵に不意打ちされても被害は出ない。
「……水が真っ黒……」
エカは湖水を見ると鼻の穴広げて真顔になる。
森の湖は、底が見えないどころか漆黒の水に覆われた不気味なものになっていた。
「面倒ね。水が魔王の心臓と融合してる」
湖水を見つめてロコが言う。
この湖底にある魔王の心臓は、水ごと爆裂魔法で破壊しないといけないらしい。
「……」
エカは、さっき雑魚魔族殲滅に爆裂魔法を使った事をちょっと後悔した。
生命力が尽きるほどではないけど、今の状態で膨大な量の水と魔王の心臓をまとめて破壊すると意識が保てなくなる。
まあしょうがないか、と爆裂魔法を起動しようとするエカの肩を、アズが軽く叩いて振り返らせた。
「ちょっと待って」
「え?」
直後、アズとエカの声以外の音が消える。
ふと見れば、周囲の風景もロコとコッコも、時間が止まったように動きが停止していた。
「アズ? なんで今、風神の息吹を?」
「見られないようにしたんだよ」
怪訝な表情で聞くエカに、アズが少し困ったような笑みで答える。
「はい、これ食べて」
首を傾げるエカの口に、アズが何か放り込んだ。
プランの街名物と同じ、花の砂糖漬けだ。
「ん、美味い」
モグモグした直後に生命力が全快したので、エカはその花が何か理解した。
アズが放り込んだのは、世界樹の花の砂糖漬けだ。
「エアが作ったお菓子、残しといて良かった。これで気絶せずに済むね」
と言うアズ、やはり爆裂魔法が生命力を消費する事を知ってるみたいだ。
しかも多分、何回使ったらエカが倒れるかも分かってる。
「な、なんで知ってるの?」
「本で読んだ」
動揺して広げかけるエカの鼻をつまんで、アズが真顔で言う。
「え? 学園の図書館にそんな本あった?」
「俺、禁書読めるから」
いつもの変顔になれないまま困惑するエカに、涼しい顔でアズが言った。
「それに、エカの修行、見たから」
「え……?」
エカも驚いてるけど、ボクも驚いた。
だってあの場にいたのは、エカとボクと創造神だけだったからね。
「創造神が見せてくれたよ。で、エカが無理しないように見張っとけって言われた」
その話を聞いて、エカはアズが爆裂魔法に詳しい理由を知った。
見張っとけなんて言われてる事には、何か納得いかないものを感じたみたいだけどね。
「というわけで、エカが無茶しようとしたら俺が止めるからね」
「ワンッ」
ニコッと笑うアズの懐からルルが顔を出して、一緒に見張ってるぞと言うように鳴いた。
双子の弟が保護者みたいになってる事にエカはちょっと不満そうだったけど、ボクとしては助かる。
エカが生命力を無駄使いして倒れる前に、アズに止めてもらおう。
「それじゃ、そろそろ加速解除していい?」
「いいよ」
アズの問いかけにエカが応じると、周囲の動きが通常に戻った。
爆裂魔法を起動する際に現れる魔王の分身は、完全回避がついたシーツのおかげでエカに手出し出来ない。
分身は、エカの隣にいるアズの斬撃で両断されて消滅した。
4回目ともなると、この防衛機能みたいなものはあまり意味が無い気がしてきたよ。
「爆破消滅!」
妨げられる事無く発動した爆裂魔法で、湖水ごと魔王の心臓は消滅した。
魔物も魔族も一掃された森を指差してコッコが言う。
「エカ、次の魔物が湧く前に破壊お願い」
「OK」
ロコに言われたエカが答えて、4人は森の中へ向かった。
シーツの端を持って歩くアズの後ろを、シーツを被った3人が一列になって続く。
なんだか奇妙な光景だけど、これなら敵に不意打ちされても被害は出ない。
「……水が真っ黒……」
エカは湖水を見ると鼻の穴広げて真顔になる。
森の湖は、底が見えないどころか漆黒の水に覆われた不気味なものになっていた。
「面倒ね。水が魔王の心臓と融合してる」
湖水を見つめてロコが言う。
この湖底にある魔王の心臓は、水ごと爆裂魔法で破壊しないといけないらしい。
「……」
エカは、さっき雑魚魔族殲滅に爆裂魔法を使った事をちょっと後悔した。
生命力が尽きるほどではないけど、今の状態で膨大な量の水と魔王の心臓をまとめて破壊すると意識が保てなくなる。
まあしょうがないか、と爆裂魔法を起動しようとするエカの肩を、アズが軽く叩いて振り返らせた。
「ちょっと待って」
「え?」
直後、アズとエカの声以外の音が消える。
ふと見れば、周囲の風景もロコとコッコも、時間が止まったように動きが停止していた。
「アズ? なんで今、風神の息吹を?」
「見られないようにしたんだよ」
怪訝な表情で聞くエカに、アズが少し困ったような笑みで答える。
「はい、これ食べて」
首を傾げるエカの口に、アズが何か放り込んだ。
プランの街名物と同じ、花の砂糖漬けだ。
「ん、美味い」
モグモグした直後に生命力が全快したので、エカはその花が何か理解した。
アズが放り込んだのは、世界樹の花の砂糖漬けだ。
「エアが作ったお菓子、残しといて良かった。これで気絶せずに済むね」
と言うアズ、やはり爆裂魔法が生命力を消費する事を知ってるみたいだ。
しかも多分、何回使ったらエカが倒れるかも分かってる。
「な、なんで知ってるの?」
「本で読んだ」
動揺して広げかけるエカの鼻をつまんで、アズが真顔で言う。
「え? 学園の図書館にそんな本あった?」
「俺、禁書読めるから」
いつもの変顔になれないまま困惑するエカに、涼しい顔でアズが言った。
「それに、エカの修行、見たから」
「え……?」
エカも驚いてるけど、ボクも驚いた。
だってあの場にいたのは、エカとボクと創造神だけだったからね。
「創造神が見せてくれたよ。で、エカが無理しないように見張っとけって言われた」
その話を聞いて、エカはアズが爆裂魔法に詳しい理由を知った。
見張っとけなんて言われてる事には、何か納得いかないものを感じたみたいだけどね。
「というわけで、エカが無茶しようとしたら俺が止めるからね」
「ワンッ」
ニコッと笑うアズの懐からルルが顔を出して、一緒に見張ってるぞと言うように鳴いた。
双子の弟が保護者みたいになってる事にエカはちょっと不満そうだったけど、ボクとしては助かる。
エカが生命力を無駄使いして倒れる前に、アズに止めてもらおう。
「それじゃ、そろそろ加速解除していい?」
「いいよ」
アズの問いかけにエカが応じると、周囲の動きが通常に戻った。
爆裂魔法を起動する際に現れる魔王の分身は、完全回避がついたシーツのおかげでエカに手出し出来ない。
分身は、エカの隣にいるアズの斬撃で両断されて消滅した。
4回目ともなると、この防衛機能みたいなものはあまり意味が無い気がしてきたよ。
「爆破消滅!」
妨げられる事無く発動した爆裂魔法で、湖水ごと魔王の心臓は消滅した。
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