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前世編
第85話:副会長とダンジョン探索
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「エカもアズと一緒に戦いたいのね」
アズからの連絡を待ちながら、部屋のソファで待機するエカに寄り添いつつ、ソナが言う。
「うん。小さい時から一緒で、父さん母さんから魔王と戦う相棒だって言われてたから」
ソナの頭に頬を寄せて、エカが応える。
里に生まれる筈だったソナの魂を攫い、異世界のニホンに落として苦しめた魔王。
エカは絶対に許すもんかって思っていて、魔王軍との戦いとなれば全員ブッ飛ばすつもりでいたんだ。
でも、いざ戦いが始まったら、前線に出るのは双子の弟のアズだけ、自分は安全なところで待って魔王の心臓を破壊するのみ。
好戦的な性格ではないけれど、エカはもどかしさを感じていた。
しばらくして、ベノワの念話で送られてくる、アズたちのダンジョン攻略の様子。
砦の時みたいに兵士もいるのかと思ったら、同行しているのはロコと、副会長のコッコだけ。
コッコはサビといわれる毛色で、黒と茶と白が混ざり合う三毛の一種だけど、色が錆びた鉄のようなので違う毛色に見える。
所属は体育学部の隠密科で、トップの成績だった筈。
ダンジョンで魔物に見付からず、罠も発動させずに進める隠密科は、調査技術に特化してるらしいよ。
このダンジョンで魔王の心臓を見つけたのはコッコで、アズたちはダンジョンを占領している魔族の討伐に来ている。
アカツキ王国からアサケ王国も飛び越えた西方、海の向こうの大陸。
アスカ王国のダンジョンを、アズ、ロコ、コッコの3人が歩いていた。
「そこ、矢が飛び出てくるから」
「はーい」
コッコに言われた場所に進んで行くアズ。
トラップが発動して矢が飛んでくるけど、もちろん当たらない。
矢は全てはずれて岩壁に突き刺さり、発動した罠は無害なものになった。
「そこ、落とし穴ね」
「はーい」
コッコに教えられてまた進んで行くアズ。
地面に穴が開き、底には鋭い槍が並んでるけど、みんなアズを避けるように曲がってしまった。
アズは無傷で底に降り立ち、軽々と跳躍して穴から出て来た。
「あなたを見ていると、罠がとても無意味なものに感じるわ」
ロコが苦笑した。
やがて前方に、黒い異形の群れが現れた。
この洞窟の魔物ではなく、魔物を食い尽くして居座っている魔族だ。
「あなたに構わず範囲を撃つけど、いいわね?」
「もちろんです」
ロコが杖を出現させ、アズは背負っていた剣を抜いた。
四神の支援魔法を全てロコとコッコにかけ、自分には風神の息吹のみかけて、アズが駈け出す。
時間が止まったように動かない敵の群れを、容赦なく斬り捨てて進む。
後ろから無数の氷の矢が飛んでくるけど、アズには一切当たらない。
氷の矢は、敵だけを貫いて凍らせた後、粉々に砕いてゆく。
通路の行き止まりには、本来の主である終点ボスを捕食している大柄な魔族がいた。
途中にいた雑魚よりも大きく、強そうな感じがする。
アズは自分に、一撃のダメージUP効果がある火神の激怒をかけた。
手にした剣が赤く発光して、鍛冶屋の炉で加熱した鉄のように見える。
大柄な魔族はロコが放った氷の槍の凍結効果に抵抗して、それを引き抜いた。
そこへアズの斬撃が入り、魔族を斜めに切り裂く。
しぶとい生命力でもがく敵に、コッコの投げナイフがトドメの一撃となる。
絶命した魔族は、砕けて黒い粒子と化して消えた。
その後ろに見えたのは、大きな黒い水晶……魔王の心臓だ。
『エカ、出番だよ』
『OK』
アズの念話に応じて、エカは魔道具の転送陣を起動した。
互いの居場所へ転送する、王様から渡された魔道具だ。
その魔道具によってエカはすぐアズの隣へ行けるし、アズもエカの隣に行く事が出来る。
魔王の分身に襲われないように、今回ソナには自室で待機してもらった。
エカの接近に反応して現れた分身は、行動する隙を与えずアズの剣に貫かれた。
魔王の分身は体格や顔立ちに違いがあるものの、みんな人型だ。
今回現れた者は小柄で、暗殺向きの体格だったのかもしれない。
でもその小さい身体が不利となり、剣で串刺しにされたらもう動けなくなった。
アズが容赦なく振り払うと、分身は砕けて消え去る。
エカは分身には構わず、魔王の心臓に向けて爆裂魔法を放つ。
「爆破消滅」
起動言語と共に放たれた魔法は、黒水晶を粉々に砕いて消し去った。
アズからの連絡を待ちながら、部屋のソファで待機するエカに寄り添いつつ、ソナが言う。
「うん。小さい時から一緒で、父さん母さんから魔王と戦う相棒だって言われてたから」
ソナの頭に頬を寄せて、エカが応える。
里に生まれる筈だったソナの魂を攫い、異世界のニホンに落として苦しめた魔王。
エカは絶対に許すもんかって思っていて、魔王軍との戦いとなれば全員ブッ飛ばすつもりでいたんだ。
でも、いざ戦いが始まったら、前線に出るのは双子の弟のアズだけ、自分は安全なところで待って魔王の心臓を破壊するのみ。
好戦的な性格ではないけれど、エカはもどかしさを感じていた。
しばらくして、ベノワの念話で送られてくる、アズたちのダンジョン攻略の様子。
砦の時みたいに兵士もいるのかと思ったら、同行しているのはロコと、副会長のコッコだけ。
コッコはサビといわれる毛色で、黒と茶と白が混ざり合う三毛の一種だけど、色が錆びた鉄のようなので違う毛色に見える。
所属は体育学部の隠密科で、トップの成績だった筈。
ダンジョンで魔物に見付からず、罠も発動させずに進める隠密科は、調査技術に特化してるらしいよ。
このダンジョンで魔王の心臓を見つけたのはコッコで、アズたちはダンジョンを占領している魔族の討伐に来ている。
アカツキ王国からアサケ王国も飛び越えた西方、海の向こうの大陸。
アスカ王国のダンジョンを、アズ、ロコ、コッコの3人が歩いていた。
「そこ、矢が飛び出てくるから」
「はーい」
コッコに言われた場所に進んで行くアズ。
トラップが発動して矢が飛んでくるけど、もちろん当たらない。
矢は全てはずれて岩壁に突き刺さり、発動した罠は無害なものになった。
「そこ、落とし穴ね」
「はーい」
コッコに教えられてまた進んで行くアズ。
地面に穴が開き、底には鋭い槍が並んでるけど、みんなアズを避けるように曲がってしまった。
アズは無傷で底に降り立ち、軽々と跳躍して穴から出て来た。
「あなたを見ていると、罠がとても無意味なものに感じるわ」
ロコが苦笑した。
やがて前方に、黒い異形の群れが現れた。
この洞窟の魔物ではなく、魔物を食い尽くして居座っている魔族だ。
「あなたに構わず範囲を撃つけど、いいわね?」
「もちろんです」
ロコが杖を出現させ、アズは背負っていた剣を抜いた。
四神の支援魔法を全てロコとコッコにかけ、自分には風神の息吹のみかけて、アズが駈け出す。
時間が止まったように動かない敵の群れを、容赦なく斬り捨てて進む。
後ろから無数の氷の矢が飛んでくるけど、アズには一切当たらない。
氷の矢は、敵だけを貫いて凍らせた後、粉々に砕いてゆく。
通路の行き止まりには、本来の主である終点ボスを捕食している大柄な魔族がいた。
途中にいた雑魚よりも大きく、強そうな感じがする。
アズは自分に、一撃のダメージUP効果がある火神の激怒をかけた。
手にした剣が赤く発光して、鍛冶屋の炉で加熱した鉄のように見える。
大柄な魔族はロコが放った氷の槍の凍結効果に抵抗して、それを引き抜いた。
そこへアズの斬撃が入り、魔族を斜めに切り裂く。
しぶとい生命力でもがく敵に、コッコの投げナイフがトドメの一撃となる。
絶命した魔族は、砕けて黒い粒子と化して消えた。
その後ろに見えたのは、大きな黒い水晶……魔王の心臓だ。
『エカ、出番だよ』
『OK』
アズの念話に応じて、エカは魔道具の転送陣を起動した。
互いの居場所へ転送する、王様から渡された魔道具だ。
その魔道具によってエカはすぐアズの隣へ行けるし、アズもエカの隣に行く事が出来る。
魔王の分身に襲われないように、今回ソナには自室で待機してもらった。
エカの接近に反応して現れた分身は、行動する隙を与えずアズの剣に貫かれた。
魔王の分身は体格や顔立ちに違いがあるものの、みんな人型だ。
今回現れた者は小柄で、暗殺向きの体格だったのかもしれない。
でもその小さい身体が不利となり、剣で串刺しにされたらもう動けなくなった。
アズが容赦なく振り払うと、分身は砕けて消え去る。
エカは分身には構わず、魔王の心臓に向けて爆裂魔法を放つ。
「爆破消滅」
起動言語と共に放たれた魔法は、黒水晶を粉々に砕いて消し去った。
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