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前世編
第80話:アズとアカツキ王国
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世界から隔離された空間で続いた修行。
歴代の爆裂魔法使いの中で最も早く完了したと創造神は言った。
エカはもう何回倒れたか覚えてなかった。
ボクも何回復活させてあげたか分からない。
『これで完了だ。完全回復薬を使うがよい』
『いえ、フラムに蘇生してもらった方が早いです』
反撃を食らって大量に出血しているエカの手に、創造神が完全回復薬を出現させた。
けど、エカはそれを使わず、何も無い場所に魔法を撃って生命力を使い切る。
もうちょっと命大事にしてもいいのに。
って思いつつ、ボクは今回の修行最後の蘇生をしてあげた。
「これは貴重品なので、残しておきます」
意識が戻ったエカはそう言うと、手に持たされている薬を異空間倉庫に収納した。
『それと同じ効果の物をリユが作っている。貰いに行くとよいだろう』
【リユ】というのは創造神がエアを呼ぶ時の名前だ。
世界樹の民の最初の名前は、創造神が与えてくれるんだよ。
エアが作ってるって事はお菓子タイプの完全回復薬かな。
『では元の空間へ帰りなさい』
【声】と共に、何か見えない力がエカとボクを押して、水晶の外へポンッと押し出された。
「エカ?!」
「修行はどうだったかニャ?」
待っていたソナと王様の位置が、修行開始前に見た時と違ってる。
時間が止まってたんじゃなくて、物凄くゆっくりになってたらしい。
「魔族が襲ってきても戦える程度にはなりました」
「頑張ったニャ。あとはアズにからの連絡待ちニャン」
王様やソナと一緒にお城へ帰った後、夕食でのエカの食欲が凄かった。
それはもうアズ並みの食べっぷり。
「すごーい! 大食い大会に出られそう!」
気持ちいい食べっぷりに、ソナがニコニコしながら言った。
そっか、アズも異空間で修行してたんだな……
エカとボクはこの時、アズが急に大食いになったワケを悟った。
「王様、アズは今どこにいるんですか?」
「アカツキ王国に行ってもらったニャン」
お腹が満たされたエカが食後のお茶を飲みながら聞くと、王様が教えてくれたのは遥か遠い国の名前。
地図の場所を調べるって、外国の調査だったのか。
真夜中、エカは相変わらず独りになるのを嫌がるソナに腕枕して添い寝してる。
横になってはいるけど、エカは眠ってない。
『フラム、エカは起きてる?』
そこへ、ベノワを通したアズからの偵察報告がきた。
『起きてるよ。アズ、アカツキ王国ってどんなところ?』
エカも、ボクを通してアズと話す。
『映像で見せてあげるよ』
そう言ってアズが送ってきたのは、碧空を飛翔するベノワの背中から見た風景だった。
緑の森や草原、大きな岩がゴツゴツした山、一面に広がる青い海を越えると、大陸が見えてきた。
その大陸の中央へ進み、頑丈な防壁に囲まれたお城と街が見えてくると、ベノワは下降する。
見知らぬ街の門、そこに立つ2人の門番。
門番は2人ともチャデに似た大柄で筋肉質な茶トラ猫人だ。
ベノワを従えたアズが近付いてゆくと、2人はすぐにこちらに気付き驚いた顔をした。
「アカツキ王国の王都はここですか?」
「は、はい!」
「ようこそ世界樹の使徒様!」
アズが声をかけると、門番たちは歓迎の意を示す。
左右に分かれて深々と一礼する門番たちの間を通り抜けて、アズは王都に入った。
猫人変身を解除していたから、門番たちはすぐにアズが世界樹の民と分ったらしい。
この世界では、世界樹の民といえば創造神の使いだからね。
街の人々も、アズの姿を見た途端みんな驚き、道を開けて一礼する。
何にも妨げられる事無く王都の奥まで進み、アズは王城の前まで来た。
「アズール・セレストです。アサケ王国より依頼を受けて来ました」
「アズール様、どうぞお入り下さい」
お城の門番たちは、街の門番たちとは少し違う驚きを見せる。
来る事が分っていたような、待っていた者が来た時のような反応だ。
報せを受けた侍女が案内役として付いて、アズはお城の中に入ってゆく。
「こちらでお茶をお召し上がりになって、しばらくお待ち下さいませ」
謁見の間に行くのかと思ったらそうではなかった。
侍女がアズを連れて行ったのは、花々が咲き誇る庭園だ。
出されたお茶を飲んでいると、アズの身体から緑色の煙が湧き出てまとまり、緑の丸薬に変わってテーブルに転がる。
「……!」
傍らに待機して見ていた侍女が息を呑んだ。
驚きもせずお茶を飲み終えたアズは、空になったカップにその丸薬を入れて侍女に返す。
両手でカップを受け取った侍女が、深々と一礼して下がって行った。
「試すような事をしてしまって、ごめんね」
入れ替わるように、ドレス姿の少女が現れる。
猫人ではない、銀の長い髪にアイスブルーの瞳の美少女だ。
着ているドレスも白と水色で、雪か氷の精霊みたいな雰囲気があった。
「アズール・セレストといえば完全回避のユニークスキルを持つ子、それが本物か知りたかったの」
「今ので分ってもらえましたか?」
「ええ。充分よ」
少女もアズも平然と話してるけど、その映像を見たエカは困惑気味で鼻の穴広げて真顔になった。
この子、異世界から来た子かな?
侍女に命じてアズのお茶に毒を盛って、そこまでして完全回避を確かめたかったの?
歴代の爆裂魔法使いの中で最も早く完了したと創造神は言った。
エカはもう何回倒れたか覚えてなかった。
ボクも何回復活させてあげたか分からない。
『これで完了だ。完全回復薬を使うがよい』
『いえ、フラムに蘇生してもらった方が早いです』
反撃を食らって大量に出血しているエカの手に、創造神が完全回復薬を出現させた。
けど、エカはそれを使わず、何も無い場所に魔法を撃って生命力を使い切る。
もうちょっと命大事にしてもいいのに。
って思いつつ、ボクは今回の修行最後の蘇生をしてあげた。
「これは貴重品なので、残しておきます」
意識が戻ったエカはそう言うと、手に持たされている薬を異空間倉庫に収納した。
『それと同じ効果の物をリユが作っている。貰いに行くとよいだろう』
【リユ】というのは創造神がエアを呼ぶ時の名前だ。
世界樹の民の最初の名前は、創造神が与えてくれるんだよ。
エアが作ってるって事はお菓子タイプの完全回復薬かな。
『では元の空間へ帰りなさい』
【声】と共に、何か見えない力がエカとボクを押して、水晶の外へポンッと押し出された。
「エカ?!」
「修行はどうだったかニャ?」
待っていたソナと王様の位置が、修行開始前に見た時と違ってる。
時間が止まってたんじゃなくて、物凄くゆっくりになってたらしい。
「魔族が襲ってきても戦える程度にはなりました」
「頑張ったニャ。あとはアズにからの連絡待ちニャン」
王様やソナと一緒にお城へ帰った後、夕食でのエカの食欲が凄かった。
それはもうアズ並みの食べっぷり。
「すごーい! 大食い大会に出られそう!」
気持ちいい食べっぷりに、ソナがニコニコしながら言った。
そっか、アズも異空間で修行してたんだな……
エカとボクはこの時、アズが急に大食いになったワケを悟った。
「王様、アズは今どこにいるんですか?」
「アカツキ王国に行ってもらったニャン」
お腹が満たされたエカが食後のお茶を飲みながら聞くと、王様が教えてくれたのは遥か遠い国の名前。
地図の場所を調べるって、外国の調査だったのか。
真夜中、エカは相変わらず独りになるのを嫌がるソナに腕枕して添い寝してる。
横になってはいるけど、エカは眠ってない。
『フラム、エカは起きてる?』
そこへ、ベノワを通したアズからの偵察報告がきた。
『起きてるよ。アズ、アカツキ王国ってどんなところ?』
エカも、ボクを通してアズと話す。
『映像で見せてあげるよ』
そう言ってアズが送ってきたのは、碧空を飛翔するベノワの背中から見た風景だった。
緑の森や草原、大きな岩がゴツゴツした山、一面に広がる青い海を越えると、大陸が見えてきた。
その大陸の中央へ進み、頑丈な防壁に囲まれたお城と街が見えてくると、ベノワは下降する。
見知らぬ街の門、そこに立つ2人の門番。
門番は2人ともチャデに似た大柄で筋肉質な茶トラ猫人だ。
ベノワを従えたアズが近付いてゆくと、2人はすぐにこちらに気付き驚いた顔をした。
「アカツキ王国の王都はここですか?」
「は、はい!」
「ようこそ世界樹の使徒様!」
アズが声をかけると、門番たちは歓迎の意を示す。
左右に分かれて深々と一礼する門番たちの間を通り抜けて、アズは王都に入った。
猫人変身を解除していたから、門番たちはすぐにアズが世界樹の民と分ったらしい。
この世界では、世界樹の民といえば創造神の使いだからね。
街の人々も、アズの姿を見た途端みんな驚き、道を開けて一礼する。
何にも妨げられる事無く王都の奥まで進み、アズは王城の前まで来た。
「アズール・セレストです。アサケ王国より依頼を受けて来ました」
「アズール様、どうぞお入り下さい」
お城の門番たちは、街の門番たちとは少し違う驚きを見せる。
来る事が分っていたような、待っていた者が来た時のような反応だ。
報せを受けた侍女が案内役として付いて、アズはお城の中に入ってゆく。
「こちらでお茶をお召し上がりになって、しばらくお待ち下さいませ」
謁見の間に行くのかと思ったらそうではなかった。
侍女がアズを連れて行ったのは、花々が咲き誇る庭園だ。
出されたお茶を飲んでいると、アズの身体から緑色の煙が湧き出てまとまり、緑の丸薬に変わってテーブルに転がる。
「……!」
傍らに待機して見ていた侍女が息を呑んだ。
驚きもせずお茶を飲み終えたアズは、空になったカップにその丸薬を入れて侍女に返す。
両手でカップを受け取った侍女が、深々と一礼して下がって行った。
「試すような事をしてしまって、ごめんね」
入れ替わるように、ドレス姿の少女が現れる。
猫人ではない、銀の長い髪にアイスブルーの瞳の美少女だ。
着ているドレスも白と水色で、雪か氷の精霊みたいな雰囲気があった。
「アズール・セレストといえば完全回避のユニークスキルを持つ子、それが本物か知りたかったの」
「今ので分ってもらえましたか?」
「ええ。充分よ」
少女もアズも平然と話してるけど、その映像を見たエカは困惑気味で鼻の穴広げて真顔になった。
この子、異世界から来た子かな?
侍女に命じてアズのお茶に毒を盛って、そこまでして完全回避を確かめたかったの?
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