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前世編
第56話:ソナと世界樹の里
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「ソナに教えておきたい秘密があるんだ。ついて来て」
学生寮のエカとアズの部屋。
ソナの手を引いて、エカは部屋の奥にある転送陣へと進む。
それは、エカとアズが実家へ帰る時に使っているもの。
ローズとエアもそれぞれの部屋にあるから、この転送陣を使うのはエカとアズだけだった。
「これは、どこに繋がっているの?」
「俺の実家だよ」
短すぎる説明を聞いただけで転送されたソナは、現地に着いてしばし呆然。
「…猫ちゃんじゃない人たちがいる…!」
「世界樹の民っていう種族だよ。……俺も、ね」
この時にはソナはもうほとんど元の世界の記憶が無かった。
だから、自分と似たニンゲンタイプの種族を初めて見るような感覚だったらしい。
驚くソナの前で、エカは本来の姿に戻って驚き追加だ。
「エカが……猫ちゃんじゃ、ない?!」
「学園やお城では内緒だよ。こっちが俺の本当の姿なんだ」
状況に思考が追い付かなくて困惑するソナに、エカはちょっと申し訳なさそうに言う。
エカの本当の姿は夢の中で見ているんだけど、今のソナにはその記憶は無かった。
「ソナはこの姿より、猫人姿の方がいいかな?」
「ううん。どんな姿でもエカはエカだわ」
「よかった」
ソナは、エカの見た目に好意を寄せているわけじゃない。
エカの言葉や行動に救われて、信頼を寄せているんだ。
だから猫人でも元の姿でも、ソナがエカを慕う気持ちは変わらなかった。
「おかえり、エカ、ソナ」
「わたしも、おかえり、なの?」
庭から聞こえる話し声に気付いて玄関の扉を開けたフィラさんが、二人を見て微笑みかけた。
いらっしゃい、ではなく、おかえり、と言われて、ソナが不思議そうに首を傾げる。
「ソナはエカのお嫁さんになるんでしょう? だから、ここはあなたのお家よ」
「「えっ?!」」
ソナが驚く声にエカの声も重なった。
ボクにしてみたら、あれだけベッタリくっついてて今更? って思うけどね。
エカもソナも互いを異性とか恋人とか、今日までそういう感覚はほとんど無かったらしいよ。
「どうして驚くの? ずっと一緒にっていうのは、結婚の約束じゃないの?」
「お、エカ、その子が未来の嫁さんか?」
フィラさんが首を傾げていると、畑仕事を終えて帰って来たジャスさんが追い打ちみたいに言う。
「と、父さんまで何言い出すんだよ」
今のエカの顔は、髪より赤いかもしれない。
ソナも同じくらい真っ赤だ。
「とりあえず、中に入りなさい。ごはん出来てるから」
軽く苦笑して、フィラさんが先に家の中へ入って行った。
まだ顔が赤いエカが照れつつもソナの手を引いて中に入り、最後にジャスさんも入った。
食卓には、ソナの分も食事が用意してある。
「お口に合えばいいのだけど。たくさん食べてね」
「美味しそう~いただきます」
手を合わせるソナを真似て、セレスト家の3人も手を合わせて「いただきます」を言う。
ソナはニホンに居た時の記憶は無くなったけど、いただきますの挨拶とハシの使い方だけは忘れなかった。
学生寮のエカとアズの部屋。
ソナの手を引いて、エカは部屋の奥にある転送陣へと進む。
それは、エカとアズが実家へ帰る時に使っているもの。
ローズとエアもそれぞれの部屋にあるから、この転送陣を使うのはエカとアズだけだった。
「これは、どこに繋がっているの?」
「俺の実家だよ」
短すぎる説明を聞いただけで転送されたソナは、現地に着いてしばし呆然。
「…猫ちゃんじゃない人たちがいる…!」
「世界樹の民っていう種族だよ。……俺も、ね」
この時にはソナはもうほとんど元の世界の記憶が無かった。
だから、自分と似たニンゲンタイプの種族を初めて見るような感覚だったらしい。
驚くソナの前で、エカは本来の姿に戻って驚き追加だ。
「エカが……猫ちゃんじゃ、ない?!」
「学園やお城では内緒だよ。こっちが俺の本当の姿なんだ」
状況に思考が追い付かなくて困惑するソナに、エカはちょっと申し訳なさそうに言う。
エカの本当の姿は夢の中で見ているんだけど、今のソナにはその記憶は無かった。
「ソナはこの姿より、猫人姿の方がいいかな?」
「ううん。どんな姿でもエカはエカだわ」
「よかった」
ソナは、エカの見た目に好意を寄せているわけじゃない。
エカの言葉や行動に救われて、信頼を寄せているんだ。
だから猫人でも元の姿でも、ソナがエカを慕う気持ちは変わらなかった。
「おかえり、エカ、ソナ」
「わたしも、おかえり、なの?」
庭から聞こえる話し声に気付いて玄関の扉を開けたフィラさんが、二人を見て微笑みかけた。
いらっしゃい、ではなく、おかえり、と言われて、ソナが不思議そうに首を傾げる。
「ソナはエカのお嫁さんになるんでしょう? だから、ここはあなたのお家よ」
「「えっ?!」」
ソナが驚く声にエカの声も重なった。
ボクにしてみたら、あれだけベッタリくっついてて今更? って思うけどね。
エカもソナも互いを異性とか恋人とか、今日までそういう感覚はほとんど無かったらしいよ。
「どうして驚くの? ずっと一緒にっていうのは、結婚の約束じゃないの?」
「お、エカ、その子が未来の嫁さんか?」
フィラさんが首を傾げていると、畑仕事を終えて帰って来たジャスさんが追い打ちみたいに言う。
「と、父さんまで何言い出すんだよ」
今のエカの顔は、髪より赤いかもしれない。
ソナも同じくらい真っ赤だ。
「とりあえず、中に入りなさい。ごはん出来てるから」
軽く苦笑して、フィラさんが先に家の中へ入って行った。
まだ顔が赤いエカが照れつつもソナの手を引いて中に入り、最後にジャスさんも入った。
食卓には、ソナの分も食事が用意してある。
「お口に合えばいいのだけど。たくさん食べてね」
「美味しそう~いただきます」
手を合わせるソナを真似て、セレスト家の3人も手を合わせて「いただきます」を言う。
ソナはニホンに居た時の記憶は無くなったけど、いただきますの挨拶とハシの使い方だけは忘れなかった。
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