【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
164 / 428
前世編

第42話:怯える少女

しおりを挟む
「こりゃ凄いな…」
「最上位の終点ボスを1パーティで倒したのか…」
「異世界人を覗けば最少人数討伐記録だな」

 解体場に置かれた巨大タワバを、野次馬が囲んでる。
 生徒も先生も、この時期に狩られる事はほぼ無い終点ボスを興味深そうに眺めていた。

「こいつの肉は高級食材だから、パーティメンバー内で均等に分けよう」

 ダイキチさんの提案で、巨大タワバの肉は5人で分配する事にしたよ。
 使い道はそれぞれ売る・食べる・誰かに贈るなど自由に決める。
 異空間倉庫ストレージを持つエカは、売らずに家族で分け合って食べる予定だ。
 他メンバーは実家用を少し残して、あとは王家に買い取ってもらった。

「よく頑張ったニャ。これはご褒美ニャン」

 巨大タワバ討伐成功の報せを受けて見に来た王様が、エカたちにご褒美をくれた。

「次からは、これに保管出来るニャ」

 魔道具の異空間倉庫ストレージ
 エカは魔法としても持ってるから倉庫2つ持ちだ。
 そんなに収容する物あるかな??

「中ボスと雑魚の肉は学食が買い取ってくれるそうよ」
「今夜は御馳走だな」

 校内ではさすがにお姫様抱っこは恥ずかしいので降りたクロエと、彼女にさりげなく寄り添うチャデが言う。

 解体して出た大量の殻は、いいダシがとれるそうだよ。
 メンバーの家族用を幾つか取って、残りは学園と王家に買い取ってもらった。

 殻の裏側から採れる薄膜は、欠損部分や大きな傷口に巻いたり貼ったりして再生させる医薬品になるらしい。
 これは医学部と王宮薬師が買い取ってくれた。


 解体と売却を済ませると、王様とエカたちは医務室へ向かった。
 冬の森に倒れていた異世界人と思われる女の子は、王家が保護するそうだよ。
 そろそろ意識が戻る頃かな~と思って行ってみたら………

「ごめんなさい、ちゃんと死ぬから近寄らないで!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」

 ………なんか、大変な事になってるような?

「どうしたの?!」

 エカが勢いよくドアを開けた。

 部屋の中にいた医務室の先生と、黒髪の女の子がハッとしてこちらを見る。

 ベッドの1つの寝具が乱れていて、そこに寝ていた筈の女の子は部屋の隅で縮こまって震えていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい………」

 女の子は可哀想なくらい怯えて泣いてる。

「異世界転移したばかりでビックリしたのかニャ?」

 穏やかな口調で王様が聞いた。

「ごめんなさい、わたし…ちゃんと川に飛び込んだのに…死ねなかったの…」

 女の子は、自分が生きているのがいけない事みたいに思ってるらしい。

「自殺しようとして転移しちゃったのね…時々あるのよ」

 医務室の先生もなるべく穏やかに話しかけた。

「ごめんなさい、転移しちゃって…ごめんなさい…」

 女の子は、自分の意志ではしていない筈の転移の事まで謝り始める。
 とりあえず何でも謝ろうとする子みたいだ。
 医務室の先生は軽く溜息をついて、出入口で困惑している一同を見た。

「エカ、こっちに来て」

 先生に呼ばれて、エカは部屋の中に入った。

 今ここにいる者の中で、エカが一番年下で身体も小さい。
 少女はそのエカと同じくらいの年頃に見えた。

 身体の大きな成猫人よりも、歳が近そうな仔猫人の方が怯えられずに済むかもしれない。
 先生はそう思ってエカを呼び寄せたらしい。

「ごめんなさい、死ねなくて…ごめんなさい…」
「ううん。君は死んでたよ」

 ブルブル震えて謝り続ける女の子。
 落ち着いた声で話しかけながら、エカはゆっくり近付いて床に座った。

「え…? …わたし…死んだの…?」
「うん、死んだよ。心臓も呼吸も、止まってた」

 意外そうな顔をした女の子に聞かれて、エカは答える。

「…よかった…ちゃんと死ねたのね…」
「うん、完璧だったよ」

 …なんか変な会話だけど、女の子は自分が死んだと聞いてホッとした様子だ。

 エカは嘘は言っていない。
 見つけた時、女の子は本当に死んでたからね。

 それにしても、死ななきゃいけないと思うなんて、元の世界で何があったんだろう?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

トレジャーキッズ

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。 ただ、それだけだったのに…… 自分の存在は何のため? 何のために生きているのか? 世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか? 苦悩する子どもと親の物語です。 非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。 まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。 ※更新は週一・日曜日公開を目標 何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。 【1】のみ自費出版販売をしております。 追加で修正しているため、全く同じではありません。 できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり
ファンタジー
ある日、相沢智司(アイザワサトシ)は自らに秘められていた力を開放し、魔神として異世界へ転生を果たすことになった。強大な力で大抵の願望は成就させることが可能だ。 彼が望んだものは……順風満帆な学園生活を送りたいというもの。15歳であり、これから高校に入る予定であった彼にとっては至極自然な願望だった。平凡過ぎるが。 だが、彼の考えとは裏腹に異世界の各組織は魔神討伐としての牙を剥き出しにしていた。身にかかる火の粉は、自分自身で払わなければならない。智司の望む、楽しい学園生活を脅かす存在はどんな者であろうと容赦はしない! 強大過ぎる力の使い方をある意味で間違えている転生魔神、相沢智司。その能力に魅了された女性陣や仲間たちとの交流を大切にし、また、住処を襲う輩は排除しつつ、人間世界へ繰り出します! ※番外編の「地球帰還の魔神~地球へと帰った智司くんはそこでも自由に楽しみます~」というのも書いています。よろしければそちらもお楽しみください。本編60話くらいまでのネタバレがあるかも。

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~

黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。 ※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...