【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

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前世編

第19話:エカの水魔法

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 休憩時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。
 実技の授業が始まる。

 クラス全員ゾロゾロと廊下を歩いてゆく。
 エカもその中に混じって外へ歩いて行った。

 実技の練習場に着くと、カギシッポの黒仔猫人がエカを睨んで言う。

「おい、インチキじゃないと言うなら火魔法以外を使ってみろよ」
「いいよ」

 答えたエカが、イメージを組み始める。

 魔法は、起こる事象をイメージして、それに呼び名となる起動言語キーワードを付ける事で発生する。
 起動言語キーワードは声に出した方が魔法を発動しやすいけど、心の中で呟くだけでも発動可能だ。

 火がダメって言うなら水にしとけばいいよね?
 水の魔法、中等部なら中位水魔法かな。
 中位なんて普通だろうから、上位くらいいっとこうか。

 そう思ったエカの心の声は、召喚獣のボクにだけ聞こえる。
 エカの魔法イメージがまとまり、両手の間に水の球が現れてくる。

 初等部での実技と違い、先生が見本を見せるわけではない中等部。
 神様から魔法に特化した能力を授けられたエカには、基礎さえ分れば充分だった。
 初めての中等部実技で、エカは臆する事無く魔法を使う。

「…ニャッ?!」
「お、おい…アイツ…」
「…杖無しで魔法?!」

 カギシッポの黒仔猫人リーダーと、黒白長毛とシャム柄の子分たちが、驚いてシッポを膨らませた。
 先生や他の生徒たちも、呆然とエカを眺めている。

「インチキかそうでないか、ちゃんと見とけよ…」

 両手の間に現れた水の球を指先へ移しながら、エカが言う。
 溜めの状態、水の球が指先でグルグルと回転している。

上位水属性攻撃メリュジーヌ!」

 片手の指先を的に向けて、エカは起動言語キーワードを発した。
 その指先から放たれた水の球は変化し、上半身は女性で下半身は魚らしき形をとって飛び出す。

「「「!!!」」」

 言葉も出ないくらい驚いた3人の視線の先で、エカから放たれた水の異形は的を直撃した。

 ドォーンッ!

 大波が岸壁に当たるような音が響く。


「これでいい?」
「「「………」」」

 エカが問いかけても、3人は全身の毛を逆立てて固まっていた。

 ちょっと脅かし過ぎたんじゃないかな?


「…エカくん、君は杖を使わないのかい?」

 一緒に驚いていた先生が聞いてくる。

「杖は持ってないので使いません」

 何でもない事のようにエカは答えた。

「杖がある方が威力も格段に上がるし、命中率も上がるんだけど…」

 先生は杖を持つ意味を教えてくれた。

 …が。

「…君の場合は、無くてもいいかもしれないね」

 そう言って、先生は苦笑する。

 エカに絡んでいた3人も、他の生徒も、粉砕された的を見て呆然としていた。
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