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前世編

第3話:双子の個性

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 ───双子の勇者は、異なる力を授かる。
 1人は敵を殲滅する力、1人は身を護る力。
 2つの力は、それが一対。

 爆裂の勇者が生まれる時、回避の勇者も生まれる。
 爆裂の勇者は魔法の才に恵まれ、四大属性魔法も強力な攻撃力を誇る。
 回避の勇者は運動能力に優れ、身体強化魔法は他者を圧倒する…───

 アサケ国立学園図書館禁書【双子の勇者】より



 ヨロヨロ………コテン☆
 ヒョコッ、トコトコトコ…

 つかまり立ちも伝い歩きもままならないエカの横で、アズは早くも歩き始めてる。
 同じ日に生まれた双子なのに、こんなに差が出るなんて不思議だ。

「エカ、もうちょっとだよ、頑張れ~」

 ボクは応援してみた。

「ん!」

 エカは張り切ってフンスッと気合いを入れて立ち上がろうとして…

 ゴンッ!

 …後ろにひっくり返って、床に後頭部をぶつけてしまった。

 あ、泣くかも。

 って思ったら…

「………」

 …鼻の穴広げて真顔になった。

「エカ、泣かないのは偉いけど、その変顔はやめた方がいいよ」
「せっかく可愛いのに、台無しになっちゃうね」

 ボクが言ったら、ベノワが苦笑して言った。
 ベノワはアズに仕える、福音鳥ハピネスだ。

 エカは泣かずに体を起こし、ふんばってふんばって…

 コテン☆

 …また、コケた。

 エカが歩くのは、まだまだ先になりそうだよ。

「「頑張れ~」」

 ボクの声に重なって、ベノワも応援してくれた。

 すると…

「………」
「…?」

 …既にトコトコ歩き回ってるアズが気付いて、エカに片手を差し出した。
 エカは一瞬キョトンとしたけど、その意味をすぐに理解して、手を握って立ち上がる。

 弟に支えられて、エカもゆっくり歩き出した。

「2人、仲良しでいいね」
「ずっと助け合って生きてほしいね」

 ボクとベノワはそんな事を話しながら、双子たちを見守った。

 邪悪と戦う運命を背負った双子だけど、今はとりあえず自力歩行を頑張ってる。
 アズはいずれ前衛を務める者だからか、運動能力の発達がエカより早いみたいだ。


 一方、言語能力の発達は、エカの方が早かった。

「………」
「ママ、オヤツちょうだい」

 まだアズが喋れず、欲しい物があると指差しで伝える頃。
 エカはハッキリした言葉を話すようになっていた。

 いずれ多くの魔法言語を扱う事になるからかな?
 同世代の他の子と比べても、エカの言語発達はとても早かった。

「フラム、だいすき」

 そんな事を言われた時には、嬉しすぎてウルッときちゃったよ。

「ボクもエカが大好きだよ」

 エカの胸に飛び込んでスリスリしたら、抱き締めてくれた。
 ボクが苦しくない程度の力加減を、エカはもう分ってるみたいだ。
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