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本作の元になった夢の話
真冬の夜の夢⑫
しおりを挟む「な……何だこれは……ぐはっ!」
セーターは急速に形を変え、不気味な生物と化してブラックTを締め上げる。
「……も……モチ、あのセーター一体何っ?!」
投げた俺が一番びっくりだよ。
「だから言ったろ、首には近付けるなって」
顔を引き攣らせながらモチが言う。
もはやどう見てもセーターではなくなった生物は、獲物のブラックTをがっちり捕らえて離さない。
「……おのれ……小癪な道具を使いおって……」
脱皮して逃れようとするブラックTだけど、四方八方からギュウギュウ締め付けられていては無理らしい。
「お疲れ様~」
って言いながら、カジュちゃんが歩み寄ってきた。
カジュちゃんは、魔法対決で散らかった部屋の床に落ちていたホウキを拾い上げる。
「なかなか倒せないみたいだから、このままU川先生に引き渡しちゃおうか?」
ホウキの柄でブラックTをツンツンと突付きながら、カジュちゃんは言う。
「なっ?!」
U川先生の名を聞いた途端、ブラックTは青ざめた。
「やめろっ、あやつのところに行くくらいなら死んだ方がマシだっ」
必死に訴えるブラックT。
何に怯えているんだろう?
「頼むっ、このままトドメをさせ、殺してくれっ」
「でもお前、不死身なんだろ?」
懇願するブラックTに、困った顔でにモチが言う。
本当に不死身であるらしく、絶句するブラックT。
「あっ、そういえばU川先生、これが一番効くとか言ってたよな」
俺はふと思い出し、魔法を使うのに邪魔だから背負っていた発砲スチロールの剣を手にする。
これを擦り合わせるのが有効なんだったかな?
「ヒッ! ……そっそれはっ……」
発泡スチロールの剣を見たブラックTの顔が、より一層青ざめた。
「そっか、そんな事言ってたな確か」
モチも武器を鞘から抜いて構えた。
顔面蒼白となったブラックTの耳元で、俺とモチは発泡スチロール剣を合わせた。
キュシ、キュシ、キュシ!
人の耳にも不快な、発泡スチロールが擦れ合う音。
「!!!」
ブラックTは音に反応してビクンビクン痙攣した後、白目をむいて泡を吹いて動かなくなった。
「……死んだかな?」
ツンツンと剣先で突付いてみるモチ。
返事がない。ただの屍のようだ。
「で、どうするこれ?」
「土に埋める?」
「焼却炉で燃やしちゃおっか?」
「燃えないゴミで出すとか?」
「大きいから粗大ゴミかも?」
3人でそんな話をしていたら……
「あ~ら、やったじゃなぁい?」
……いきなり現れるU川先生。
「でもこれじゃ箱詰めは無理でしょ~、軽トラを借りてくるからそれに積んじゃってね」
U川先生はなんだか嬉しそうだ。
俺たちは、スキップしながら駐車場へ向かうU川先生を見送る。
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「うん、死んだ方がマシとか言ってた」
「でも、死んだ後なら別にいいんじゃない?」
コソコソ話し合った後、俺たちはU川先生の指示のもと、謎の生物ぐるぐる巻き状態のブラックTを軽トラの荷台へ積み込んだ。
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