【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
249 / 428
本作の元になった夢の話

真冬の夜の夢⑥

しおりを挟む


 俺とモチがM本先生に飛ばされた先は、発明家U川先生が管理する【ウダの館】だった。
 自ら開発した日焼けマシンでいつも褐色のピカピカお肌を維持するU川先生(♂)は、カジュちゃんの連絡を受けて、俺たちの武器を用意して待っていた。

「あんたたち遅かったじゃなぁい」

 傍らで作業を手伝う男子生徒E藤君の尻をナデナデしながらU川先生は言う。

「先生、パーツの組み立てが終わりました」

 頬をヒクヒク引き攣らせながら、報告するE藤君。

「チェックお願いします」

 ノーマルな彼の心は、作業が済んだらとっとと帰りたい気持ちでいっぱいだ。

「い~んじゃなぁい?」

 ゴキゲンなU川先生、E藤君の耳にフッと息を吹きかける。
 E藤君、ゾワッとしたのか青ざめたよ?

「じゃっ、俺帰りますんで」

 そそくさと逃げ出すE藤君。
 なかなかの素早さだ。

「あら冷たいんじゃなぁい?」

 残念そうに見送るU川先生。
 これがここの日常だ。
 俺たちも帰っていいかな?

「じゃ、俺たちもこの辺で」
「お疲れ様でしたぁ」

 って帰ろうとしたんだけど。

「ちょっと待ちなさぁい」

 って言われて2人揃って後ろ襟をガシッと掴まれた。

「用事が済んでないのに帰ろうとするんじゃないわよ。あんたたちに渡す物があるんだからぁ」

 そう言って、U川先生はE藤君に作らせた物を差し出した。

「あんたたちブラックTと戦うんでしょ~、これ持って行きなさぁい」

 手渡された物を見て、俺たちは目が点になった。
 この真っ白くて軽い素材は……

「……何スかこれ?」
「発泡スチロールの剣よ~、見りゃ分るでしょ~」

 モチの質問に、面倒くさそうに言うU川先生。
 うん、どうやら見た目通りのようだ。

「あんたたちは、それを使ってブラックTと戦いなさぁい」
  「何でこんなもん持って戦わなきゃならんのですか?」
  「発泡スチロールの武器なんて、殴ってもダメージ与えられないっスよ」

 どっからどう見ても普通の発泡スチロール、軽いし脆そうだし、ちょっと叩いただけで折れそうなそれは、剣というには色々足りてない品物だ。

「馬鹿ね~あんたたち。ブラックTにはそれが一番効くのよぉ、そんな事も知らないの~?」

 やれやれと溜息をつくU川先生。
 いや、知らんし。
 まだ会ってもいない敵の弱点なんか誰からも聞いてないぞ。

「ブラックTはね~、発泡スチロールを擦り合わせる音が嫌いなのぉ。分ったぁ? これテストに出すから覚えときなさぁい」
「そんな訳分らん問題出さないで下さい」

 片手の人差し指を立ててウインクするU川先生に、モチがツッコミを入れた。

「とにかく、ブラックTを倒したら箱詰めしてアタシんとこに送ってちょうだい。顔と大事なとこは傷つけないでねぇ」
「……って、なんで顔を知ってんスか?」

 ニコニコしながら言うU川先生に、俺はツッコミ質問を入れた。
 っていうか、大事なとこってどこ?

  「ん~、だってあいつアタシのコレだし~」

 指を一本立てるU川先生(♂)。
 その指が表わすのは「彼氏」だ。
 U川先生の交友関係って……

 そんなこんなで、謎の武器を手に【ウダの館】を出る俺たち。
 次はどこへ飛ばされるのかな?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

俺だけが持つユニークスキル《完全記憶能力》で無双する

シア07
ファンタジー
主人公、レン・クロニクスと幼馴染である、サクヤが一緒に買い物へ行っている時だった。 『ユニークスキル《完全記憶能力》の封印が解除されました』 という機械のような声が聞こえ、突如頭が痛みだす。 その後すぐ周りが急に暗くなり、頭の中に数々の映像が見せられた。 男女の怪しげな会話。 サクヤとの子供時代の会話。 つい最近出来事など様々だった。 そしてレンはそれをみて気づく。 ――これがレン自身の記憶であることを。 さらにその記憶は。 「なんで、全部覚えてるんだ……」 忘れることがなかった。 ずっと覚えている。 行動も時間もなにもかもすべて。 これがレンだけが持つ、最強のユニークスキル《完全記憶能力》の能力だった。 ※他サイトでも連載しています

処理中です...