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本作の元になった夢の話
真冬の夜の夢⑥
しおりを挟む俺とモチがM本先生に飛ばされた先は、発明家U川先生が管理する【ウダの館】だった。
自ら開発した日焼けマシンでいつも褐色のピカピカお肌を維持するU川先生(♂)は、カジュちゃんの連絡を受けて、俺たちの武器を用意して待っていた。
「あんたたち遅かったじゃなぁい」
傍らで作業を手伝う男子生徒E藤君の尻をナデナデしながらU川先生は言う。
「先生、パーツの組み立てが終わりました」
頬をヒクヒク引き攣らせながら、報告するE藤君。
「チェックお願いします」
ノーマルな彼の心は、作業が済んだらとっとと帰りたい気持ちでいっぱいだ。
「い~んじゃなぁい?」
ゴキゲンなU川先生、E藤君の耳にフッと息を吹きかける。
E藤君、ゾワッとしたのか青ざめたよ?
「じゃっ、俺帰りますんで」
そそくさと逃げ出すE藤君。
なかなかの素早さだ。
「あら冷たいんじゃなぁい?」
残念そうに見送るU川先生。
これがここの日常だ。
俺たちも帰っていいかな?
「じゃ、俺たちもこの辺で」
「お疲れ様でしたぁ」
って帰ろうとしたんだけど。
「ちょっと待ちなさぁい」
って言われて2人揃って後ろ襟をガシッと掴まれた。
「用事が済んでないのに帰ろうとするんじゃないわよ。あんたたちに渡す物があるんだからぁ」
そう言って、U川先生はE藤君に作らせた物を差し出した。
「あんたたちブラックTと戦うんでしょ~、これ持って行きなさぁい」
手渡された物を見て、俺たちは目が点になった。
この真っ白くて軽い素材は……
「……何スかこれ?」
「発泡スチロールの剣よ~、見りゃ分るでしょ~」
モチの質問に、面倒くさそうに言うU川先生。
うん、どうやら見た目通りのようだ。
「あんたたちは、それを使ってブラックTと戦いなさぁい」
「何でこんなもん持って戦わなきゃならんのですか?」
「発泡スチロールの武器なんて、殴ってもダメージ与えられないっスよ」
どっからどう見ても普通の発泡スチロール、軽いし脆そうだし、ちょっと叩いただけで折れそうなそれは、剣というには色々足りてない品物だ。
「馬鹿ね~あんたたち。ブラックTにはそれが一番効くのよぉ、そんな事も知らないの~?」
やれやれと溜息をつくU川先生。
いや、知らんし。
まだ会ってもいない敵の弱点なんか誰からも聞いてないぞ。
「ブラックTはね~、発泡スチロールを擦り合わせる音が嫌いなのぉ。分ったぁ? これテストに出すから覚えときなさぁい」
「そんな訳分らん問題出さないで下さい」
片手の人差し指を立ててウインクするU川先生に、モチがツッコミを入れた。
「とにかく、ブラックTを倒したら箱詰めしてアタシんとこに送ってちょうだい。顔と大事なとこは傷つけないでねぇ」
「……って、なんで顔を知ってんスか?」
ニコニコしながら言うU川先生に、俺はツッコミ質問を入れた。
っていうか、大事なとこってどこ?
「ん~、だってあいつアタシのコレだし~」
指を一本立てるU川先生(♂)。
その指が表わすのは「彼氏」だ。
U川先生の交友関係って……
そんなこんなで、謎の武器を手に【ウダの館】を出る俺たち。
次はどこへ飛ばされるのかな?
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