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転生者モチ編

第50話:説得全敗(画像あり)

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 何度拒まれても逃げられても、俺は諦めない。
 武道科に移籍したり、冒険者登録をしたりしてから、イオはアズの遺品を身に着けることが多くなった。
 そのせいで俺はうっかり「アズ」と呼びそうになる。

「今日は魚の煮付けを作ったわ。イオも誘ってあげて」

 母さんも諦めない。
 イオの好物は俺やアズと共通のものが多い。
 その事を教えたら、今日は魚の煮付けを作っていた。

「うん、誘ってみるよ」

 俺はまた放課後の図書館にいるイオに声をかけに行く。
 通路の奥、その先に禁書閲覧室が隠された場所、壁の中から出てくるのは、アズの服を着たアズそっくりの子供。

「ア……じゃなくて、イオ」

 あまりに瓜二つで、危うくアズと呼んでしまうところだった。
 また来たのかという感じで、イオが苦笑する。

「モ……じゃなかった、エカ、どうしたの?」

 向こうは向こうで、俺をモチと呼びそうになっている。
 似た者同士と笑えればいいんだろうけど、俺にはそんな精神的余裕が無い。

「母さんが魚の煮付けを作ったから、夕食に誘いに来たよ」

 帰ってこいと言っても拒否られるから、夕食に招待する程度に抑えよう。
 実家に住めとはもう言わないから、せめてメシくらいは食べに来いよと誘った。

「俺に構わず、エカとソナたちだけで食べに行きなよ」

 お断りされてしまった。
 イオの声も表情も穏やかなのに、はっきりとした拒絶がある。

「そんなこと言うなよ、お前も家族なのに」

 ウルッときてしまった。
 駄目だ、耐えろ俺。

「俺は家族ではないよ。【家族の生まれ変わり】だ。エカやジャスさんやフィラさんが求める【アズール】とは違う」
「それなら俺も生まれ変わりだ。同じだろう?」

 転生後初めて会った時は、父さん母さんと呼んでいたのに。
 イオはもう他人だと主張するように、両親を名前呼びした。
 俺は必死で涙を堪えながら、自分も同じ転生者だと言い返す。

「同じじゃない。エカには前世の記憶があるし、意識は前世のものだから」

 その言葉が、堪えていた涙を溢れさせた。
 俺が【モチ】のままでいれば、イオも家族でいられたのかもしれない。

「……ごめん……」
「君は、俺が知っている【モチ】じゃない」

 まるで俺の心を読んだかのように、イオは静かに言葉を突きつけた。
 俺はもう何も言えなくなり、床に涙を落としながら項垂れる。

「謝らなくていいよ。エカが悪いわけじゃない」

 声は穏やかだけど、イオの態度はよそよそしい。
 もう家族と暮らすのは諦めて、独りで生きてゆくのだと決めたのかもしれない。

「じゃ、夜間訓練に行くから。夕飯はやめておくよ」

 イオは最後まで穏やかなまま、また俺を置いて去ってしまった。
 これまでの説得、全敗。
 なんで俺はあいつの前では涙もろくなるんだ?
 滅多に泣かない筈の俺を泣かしたランキングは、イオがトップ独走中だ。

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