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転生者モチ編
第42話:更なる選択肢(画像あり)
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「転生したあなたに、見せたい物があるの」
居間のソファに座った俺に、甘い花の香りのお茶を出してくれたソナが言う。
彼女は寝室と思われる部屋から小箱を持ってきて、俺の前のテーブルに置いた。
赤いビロードに似た布張りの小さな箱。
俺の中の人が、俺の心にもう何度目か分からない揺さぶりをかけてくる。
「エカ、ここに20年前のあなたの心と記憶がある。今のあなたはこれを欲しいと思う?」
ソナの言葉を聞いて、中の人が何故こんなに騒いでいるのか分かった。
どういう方法かは分からないけど、前世の俺は「心」と「記憶」を残しておいたらしい。
余程未練があったんだろう。
「ソナ……さん」
無意識に呼び捨てにしそうになり、俺は「さん」を付けた。
ソナは一瞬、寂しそうに表情を曇らせる。
申し訳ない気持ちはあったけれど、俺にとっては今日初めて会う人だから、敬称をつけておいたよ。
「前世の記憶を取り戻した俺に、傍にいてほしいと思いますか?」
「もちろんよ。でも、あなたの意志を優先するわ」
問いに答えるソナから、前世の俺も現世の俺も大切にしてくれる気持ちが感じられた。
心を乱しまくる俺の中の人に比べると、ソナはかなり落ち着いている。
「こんな子供の姿でも、夫として愛してくれますか?」
「今は子供の姿でも、すぐ追い付くから平気よ。世界樹の民は成人後はほとんど変わらないの」
20代くらいに見えるソナと、6歳児の姿をした俺。
夢で見た20年前のソナも、今と同じくらいの歳に見えたから、実年齢は40代かそれ以上だろう。
そういえば、父さんと母さんも20代くらいに見える(一体何歳なんだろう……)。
成人後は見た目年齢が変化しないのなら、俺が成人すれば同じ歳くらいに見えるかな?
俺はソナに両手を差し出した。
「じゃあ、前世の心と記憶を下さい」
前世の記憶が、欲しい。
前世の想いを、継承したい。
それは、俺が家族と暮らすために必要なものだ。
大切な家族との記憶、愛する人への想い、それを取り戻したい。
「俺はこの世界で、俺を必要としてくれる人の為に生きたいから」
その言葉を聞いて、ソナは泣き笑いを浮かべて俺を抱き締める。
それから、小箱を開けて見せてくれた。
そこには、指輪が1つ入っている。
金色の翼を象ったリングは、おそらく結婚指輪だろう。
ソナは微笑み、まるで結婚式で相手に指輪をはめる時みたいに、俺の左手をとった。
俺の左手の薬指に通された指輪は、サイズが変化してピッタリになった。
その直後、俺の脳に、転生前の記憶が一気に流れ込む。
膨大な記憶の本流に押し流されて、俺の意識は遠のいていった。
倒れかかる俺を、ソナが抱き留めてくれたのが分かる。
「ありがとうエカ……愛してるわ……」
ソナの声と、柔らかい唇の感触を最後に、現世の俺は表層意識から退いていった。
居間のソファに座った俺に、甘い花の香りのお茶を出してくれたソナが言う。
彼女は寝室と思われる部屋から小箱を持ってきて、俺の前のテーブルに置いた。
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「エカ、ここに20年前のあなたの心と記憶がある。今のあなたはこれを欲しいと思う?」
ソナの言葉を聞いて、中の人が何故こんなに騒いでいるのか分かった。
どういう方法かは分からないけど、前世の俺は「心」と「記憶」を残しておいたらしい。
余程未練があったんだろう。
「ソナ……さん」
無意識に呼び捨てにしそうになり、俺は「さん」を付けた。
ソナは一瞬、寂しそうに表情を曇らせる。
申し訳ない気持ちはあったけれど、俺にとっては今日初めて会う人だから、敬称をつけておいたよ。
「前世の記憶を取り戻した俺に、傍にいてほしいと思いますか?」
「もちろんよ。でも、あなたの意志を優先するわ」
問いに答えるソナから、前世の俺も現世の俺も大切にしてくれる気持ちが感じられた。
心を乱しまくる俺の中の人に比べると、ソナはかなり落ち着いている。
「こんな子供の姿でも、夫として愛してくれますか?」
「今は子供の姿でも、すぐ追い付くから平気よ。世界樹の民は成人後はほとんど変わらないの」
20代くらいに見えるソナと、6歳児の姿をした俺。
夢で見た20年前のソナも、今と同じくらいの歳に見えたから、実年齢は40代かそれ以上だろう。
そういえば、父さんと母さんも20代くらいに見える(一体何歳なんだろう……)。
成人後は見た目年齢が変化しないのなら、俺が成人すれば同じ歳くらいに見えるかな?
俺はソナに両手を差し出した。
「じゃあ、前世の心と記憶を下さい」
前世の記憶が、欲しい。
前世の想いを、継承したい。
それは、俺が家族と暮らすために必要なものだ。
大切な家族との記憶、愛する人への想い、それを取り戻したい。
「俺はこの世界で、俺を必要としてくれる人の為に生きたいから」
その言葉を聞いて、ソナは泣き笑いを浮かべて俺を抱き締める。
それから、小箱を開けて見せてくれた。
そこには、指輪が1つ入っている。
金色の翼を象ったリングは、おそらく結婚指輪だろう。
ソナは微笑み、まるで結婚式で相手に指輪をはめる時みたいに、俺の左手をとった。
俺の左手の薬指に通された指輪は、サイズが変化してピッタリになった。
その直後、俺の脳に、転生前の記憶が一気に流れ込む。
膨大な記憶の本流に押し流されて、俺の意識は遠のいていった。
倒れかかる俺を、ソナが抱き留めてくれたのが分かる。
「ありがとうエカ……愛してるわ……」
ソナの声と、柔らかい唇の感触を最後に、現世の俺は表層意識から退いていった。
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