【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

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転生者モチ編

第37話:世界樹の森と民(画像あり)

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 ───昔々、創世神かみさまは、不毛の地に1粒の種を落とした。
 そこは、愚かなニンゲンが戦争を起こし、焼き尽くして全ての生き物が消えた世界。

 ……再び生命いのちが生まれるように……

 創世神かみさまは、再生と浄化の力を、その種に与える。
 種は芽吹き、根や枝葉をのばし、枝から気根を垂らして新たな木を作ってゆく。
 とても長い時代ときをかけて、1粒の種は森を創った。
 神はその木を世界樹と名付けた。

 不毛の地には、滅びたニンゲンの悪意と、滅びの兵器の毒が残っていた。
 世界樹は悪意と毒を大地から取り除き、1つの黒い果実に変える。
 神はそれをもぎ取り、ニンゲンに似せた姿の魔王に変えた。

 ……この悪意と毒を、打ち消すものを創ろう……

 そして神は、魔王を倒す種族を創る。
 ニンゲンに似た姿をしつつも、ニンゲンではない存在。
 千年の時を生きる、その種族は世界樹の民…───

   アサケ学園禁書【はじまりの書】より





 イオから借りて読んだ本の内容が、記憶の底から浮上する。
 その風景を見た途端に、懐かしさと切なさが込み上げた。

 やっと帰ってこれた……
 ……ここは、ずっと帰りたかった場所だ!

 初めて見る風景なのに。
 そんなことを思うのは、俺ではなくて中の人の感情なんだろう。

 蒼天の下にあるのは、広大な深緑の樹海。
 見渡す限り緑の森が広がっていて、その向こうには地平線が見えた。
 心地よい風が吹き、枝から離れた木の葉が空へと舞い上がる。
 転送陣ゲートを通り抜けた先は、世界樹の森と呼ばれる場所だった。

「凄い、四季の森よりも広いですね」
「ここは、転生者たちが前世で生まれ育った場所ニャン」
「不思議……この風景を見てると、心の奥がジワッとするの」
「前世の記憶なんて無いのに、懐かしいって感じるね」

 江原がその広さに感動して言う。
 ドナベのふちに顎を乗せて眼下の風景を眺めながら、三毛猫国王が言う。
 女の子たちもドナベの中から顔を出して、下を眺めながら話している。

 心の中に泉のように湧き出る感情が抑えきれないものになり、涙で視界がぼやける。
 頬を次々に伝う涙を、止めることができない。
 視線を感じて振り向いたら、並んで飛翔する青い鳥の背に乗るイオがこちらを見て、苦笑しながら涙を流していた。

 イオにも、中の人がいるのだろうか?
 俺と同じで、前世の夢を見たりしたことがあるのか?
 双子なら、ありえるよな。
 朝まで爆睡の奴でも、夢は見るだろうし。

「そろそろ下へ降りるニャン」

 三毛猫国王が乗るドナベと、女子たちが乗るドナベが、揃って下降し始める。
 UFOの着陸みたいにスーッと滑らかにゆっくりと下降するドナベに、召喚獣に乗る3人が続いた。


 森の中の村は、世界樹の里というそうだ。
 畑で作業をしていた人々が、降りて来る一行に気付いて駆け寄って来る。
 人々はみんな長身で細身、顔立ちはやや中性的で美しく、北方人種のように色素の薄い肌、髪と瞳の色は様々だ。
 禁書には「千年の寿命をもつ種族」みたいなことが書いてあったから、創作界隈でいうところのエルフに似た存在なのかもしれない。

「ナムロ様、お久しぶりです」
「何年振りですかな?」

 ナムロというのは、三毛猫国王の名前?
 パパとか陛下とか王様とか呼ばれていて、名前呼びを聞いたのは今が初めてだな。
 集まって来た人々は、一緒にいる俺たちの存在に気付いて視線を向けた。

「君たちは異世界人か?」
「そっちの黒髪の子は日本人かな?」

 江原にも視線が向く。
 隣にいる天馬ペガサスがチラッと主の髪を見て、鼻づらを近付けるとフンッと鼻息をかけた。
 途端に、江原の髪が天馬ペガサスの毛並みと同じ白色に、その瞳も同じ水色に変わる。
 そういや、召喚獣をもつと髪や瞳の色が変わるんだっけ。

「……あぁ……無駄に目立つから隠してたのに……」
「さすが転移者」
「神話級の召喚獣とは凄いな」

 勝手に色を変えられた江原が困り顔になる。
 天馬ペガサスとお揃いカラーになった江原を見て、人々がどよめいた。

「そっちの2人は不死鳥フェニックス福音鳥ハピネスか」
「ジャシンスとネモフィラみたいだな」
「そういえばあの家の子供たちと顔が似てるな」
「今日はこの子たちと会わせたい人たちがいるから来たニャン」

 里の人々と王様の会話を聞きながら、俺の中の人がまた心を揺さぶる。
 ジャシンス、ネモフィラ……
 会話に出てきた名前に反応したようだ。

「まずは里長に挨拶ニャ」

 と言う王様について移動しかけたその時、ドサッと何か荷物を落としたような音がした。
 何だろう? と思って一同が振り向いた先には、鮮やかな赤色の髪をした男性がいた。
 俺と同じ、炎を思わせる赤毛に真紅の瞳。

「……エカ……、……アズ……」
「ジャス、いいところに……」

 その人は、俺とイオを交互に見て、涙を流しながら呼びかける。
 ナムロ国王が言いかけたところで、赤毛の男性はダッシュで駆け寄って来た。

「帰って来たのか!」
「「……父さん……」」

 ジャスと呼ばれた男性は、涙を流しながら俺とイオを2人まとめて抱き締める。
 その腕の中で、俺たちはハモった。
 自然に出た言葉は、きっと前世の影響が強かったに違いない。
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