【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
30 / 428
転生者モチ編

第29話:捕獲アイテム(画像あり)

しおりを挟む
 5つ目の飛ばされ先は、魔工学部の職員エリア、詩川先生の研究室だった。
 多くの魔道具を生み出しているそこは、【ウタの館】と呼ばれる場所だ。

  「あんたたち遅かったじゃなぁい」

 傍らで作業を手伝う男子生徒、江藤の尻をナデナデしながら、詩川先生は言う。
 江藤は、顔がヒクッと引きつっていた。

「先生、パーツの組み立て終わりました。チェックお願いします」
「い~んじゃなぁい?」

 組み立てていた魔道具(?)を差し出す江藤。
 詩川先生がニッコリ笑い、江藤の耳にフッと息を吹きかけた。

「じゃっ、俺帰りますんで」
「あら冷たいんじゃなぁい?」

 それが日常なのか、江藤の撤収が素早い。
 詩川先生は残念そうに言いながら見送った。

「「俺たちも帰っていいですか?」」
「ちょっと待ちなさいよ~」

 俺とイオがハモる。 
 帰りかける俺たちの襟首を、詩川先生がガシッと掴んで引き留めた。

「あんたたちに渡す物があるんだから」

 観念した俺たちが振り返ると、詩川先生は江藤に作らせていた物を差し出してくる。
 それは、耳栓に似た小さな魔道具だった。

「「…何スか、これ?」」
「今回の作戦に役立つアイテムよ」

 ハモる俺たちに詩川先生が答える。
 修行のインパクトが強過ぎて忘れかけてたけど、魔王の手下を捕獲するんだっけ?

「トゥッティの耳の中にこれを突っ込めば気絶するから、楽に捕獲出来るわよ~」
「「トゥッティって誰?!」」

 詩川先生は、モチと俺に1つずつ超小型魔道具を手渡して言った。
 それを受け取りつつ、俺たちはハモりツッコミをした。

「あんたたちが捕まえる奴の名前だけど。まだ聞いてなかったの~?」
「「聞いてませ~ん!」」
「あらあら。学園長ってば説明足りないわね」

 捕獲対象の名前を聞いてないって答えたら、詩川先生は苦笑した。
 今頃になって、ようやく捕獲対象の名前が分った。
 名前は分ったけど、特徴は知らないぞ。

「トゥッティ捕獲後の管理はアタシがやるから、捕まえたらここへ連れてくるのよ」
「王宮じゃなくていいんですか?」

 そういや、捕獲後のことも聞いてなかったぜ。
 学園長も王様も、捕まえた後の事は何も言ってなかった。

「こっちの方が脱走防止魔道具が揃ってるからね」
「じゃあ、ここへ運びます」

 幸い(?)、詩川先生のところでの修行は無かった。
 捕獲に役立つ魔道具を受け取り、使い方や捕獲後について聞いたところで完了した。

「じゃ、最後はリユのところへ行きなさ~い。アタシが頼んでおいた物が出来てる筈よ」

 6つ目の飛ばされ先がラストか。
 妹ちゃんは何を作っているんだろう?
 そんなことを思いつつ、俺たちは次の場所へ飛ばされる。
 飛ばされた場所は、カジュちゃんと妹ちゃんがいる女子談話室だった。

「おかえり~」
「夕飯とっといたよ」
「「ありがとぉぉぉ!」」

 妹ちゃんが、異空間倉庫ストレージで保管していたクリームシチューを、テーブルに置いてくれた。
 出来たてが維持されたシチューは、湯気が立つほど熱々だ。

「修行どうだった?」
「どんな事してきたの?」

 シチューを貪り食う俺たちに、カジュちゃんと妹ちゃんがお茶を出しつつ聞く。
 腹が満たされたところで、俺たちは起きたことをありのままに話した。

「死んじゃった笹谷先生がゾンビになって追いかけてきた」
「やだそれ学校の怪談?!」
「福島先生に言われてソース100パターン作ったら【神の雫】が出来上がった」
「なにこれ調合の伝説?!」
「スケートリンクの氷を蒸発させたら、山根さんに心臓凍るほど怒られた」
「それは北極の海に落ちるより凍っちゃうね」
「修行始めるぞって言って、松本先生が西洋竜ドラゴン召喚した」
「それで、お兄ちゃんも東洋龍シェンロン出しといた?」

 交互に話す俺とイオ。
 思えばツッコミ満載な修行だったな。

「あと、詩川先生が捕獲用アイテムくれた」
「リユにも何か作ってもらってるって言ってたぞ」
「うん、出来てるよ」

 食事を終えてテーブルが片付いたところで、妹ちゃんが異空間倉庫ストレージからレース編みセーターみたいな服を取り出した。
 茶色いレース糸らしき物で編まれた、涼し気な夏用セーターに見える。

 ……いやまて。その素材は……!

「これが捕獲用アイテム?」
「ただの糸じゃないよ、前にモチが教えてくれた、300メガ倍増のアレ使用なの」

 俺は一気に青ざめた。
 間違いない、アレだ。
 動植物学部にあったアレだ。

「2人に持たせるように言われてるから、渡しておくね」
「使い方はモチが知ってる……のかな?」

 3人が、不思議そうに首を傾げて俺を見る。
 俺は、ハッと我に返った。

「………それ、首には絶対近付けるなよ」
「え? 着る物じゃないの?」
「腰に巻いとけ」

 俺が言うと、イオは少し首を傾げた後、レース編みセーターを腰に巻いた。
 動植物学部で見かけた後、俺はコッソリ調べたんだ。
 アレは、絶対に首には近付けてはいけないやつ。
 【ナーゴの変な生き物図鑑】に載ってるアレは、危険な特殊効果をもっていた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

俺だけが持つユニークスキル《完全記憶能力》で無双する

シア07
ファンタジー
主人公、レン・クロニクスと幼馴染である、サクヤが一緒に買い物へ行っている時だった。 『ユニークスキル《完全記憶能力》の封印が解除されました』 という機械のような声が聞こえ、突如頭が痛みだす。 その後すぐ周りが急に暗くなり、頭の中に数々の映像が見せられた。 男女の怪しげな会話。 サクヤとの子供時代の会話。 つい最近出来事など様々だった。 そしてレンはそれをみて気づく。 ――これがレン自身の記憶であることを。 さらにその記憶は。 「なんで、全部覚えてるんだ……」 忘れることがなかった。 ずっと覚えている。 行動も時間もなにもかもすべて。 これがレンだけが持つ、最強のユニークスキル《完全記憶能力》の能力だった。 ※他サイトでも連載しています

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...