【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
28 / 428
転生者モチ編

第27話:赤い鳥と青い鳥(画像あり)

しおりを挟む
 笹谷さんに飛ばされた先は、五右衛門風呂みたいな巨釜おおがまに、お湯が煮えたぎる部屋だった。
 俺はなんと、その釜の中に落下!

「モチっ?!」

 イオがギョッとして叫ぶ声が聞こえた。
 しかし、煮えたぎる熱湯の中に落ちた俺は何ともなかった。
 ボコボコと大きな泡が出るほどの高温なのに。
 ちょうどいいくらいのお湯に浸かってる感じだ。

「あ~いい湯加減。服着たまま入りたくはないけど!」
「悪いけどそこ、風呂じゃないから」

 悠々とお湯に浸かる俺。
 突然声がして、慌てて振り向いたら、そこには福島先生がいた。

「早く出てくれる?」
「す、すいません……」

 福島先生には【デビルアイさん】の異名があり、睨むと山根さんとは違った魔的な怖さがある。
 俺はビビリながら釜の外に出た。
 火にかかっている鉄釜のフチに触っても火傷しなかった。

「笹谷くんのところで、不死鳥フェニックスの孵化に成功したみたいね」

 福島先生に驚いた様子は無かった。
 ここに来る前にどこで何してたか知ってるらしい。

「モチはそこの椅子で休憩してていいわ」
「は、はい」

 言われて、俺は福島先生が指差す木の椅子に腰かけた。
 フラムと名乗った不死鳥フェニックスが、右手からシュルンと出てくる。
 俺の周囲を1周しながら、フラムは衣服を乾かして、また右手の中へ戻っていった。

「ここではイオに修行してもらうわ」

 言いながら、福島さんが釜に向かって指をパチンと鳴らす。
 大コンロの火が消え、釜の中だけ時間が巻き戻ったように、煮えたぎっていたお湯が常温の水に戻った。

「俺は何すればいいですか?」
「ソース作りを100回やってみて」

 福島先生がパチンパチンと指を鳴らす度に、ドンッドンッて感じでハーブやスパイスや調味料の入った壺が出現する。
 調合道具一式も一緒に出てきた。

「失敗してもOK。もしも奇跡が起きて【神の雫】と呼ばれる伝説のソースを作れたら、ご褒美あげるわ」

 福島先生がニッコリ微笑む。
 頑張れイオ。
 俺は椅子で休憩しながら、見物人と化した。

「イオは確か調理は得意だったわね。でも今は調理の事は考えず、思いのままに素材を混ぜなさい」
「はい」

 妹ちゃんにお任せで普段は料理を作ることは無いが、イオも調理は得意分野だ。
 給食室や料理学部でも見たことないようなスパイスを含め、種類豊富に用意された素材。
 イオはそれを、片っ端から混ぜてみる。
 素材を適当に選んで、混ぜて、次々にソースを作る。
 運勝負なので、味見は無し。
 ひたすら混ぜて混ぜて、出来たソースをテーブルに並べている。

 100回目のソース作りの時に、奇跡は起きた。

 食欲をそそる香り。
 ベースはウスターソースにガーリックか?

「……なんか、凄い美味そうな匂いがする……」
「さすが、前世でも福音鳥ハピネス主人マスターだった子。やるわね」

 俺が呟いたら、福島先生も満足そうに言う。
 やり遂げたイオが、ソースを入れた容器をテーブルに置いた直後……

 パキンッ!

 ……何かが割れた音がする。

 イオの右手から、青い鳥が飛び出した。
 青い鳥は急速に大きくなり、飾り羽根が多く尾羽の長い、華やかな姿に変わる。
 それが、イオの前世に仕えていた福音鳥ハピネス「ベノワ」の復活だった。

「神の雫まで作ったのは凄いわ。はい、これご褒美」

 福島先生が、イオに布袋を渡す。
 布袋の中には、1つ1つ個包装されたチョコレートボンボンが入っていた。

「私が作った回復効果つきボンボンよ。ポーション代わりに疲れた時に食べなさい」
「ありがとうございます!」

 イオは布袋を異空間倉庫ストレージに収納した。

「ここでの修業は終了よ。次、いってらっしゃい」

 って福島先生が片手を振ると、またモチと俺の足元に魔法陣が現れる。
 3度目になるともう悟った気分で、俺たちは次の場所へ飛ばされて行った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

トレジャーキッズ

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。 ただ、それだけだったのに…… 自分の存在は何のため? 何のために生きているのか? 世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか? 苦悩する子どもと親の物語です。 非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。 まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。 ※更新は週一・日曜日公開を目標 何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。 【1】のみ自費出版販売をしております。 追加で修正しているため、全く同じではありません。 できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり
ファンタジー
ある日、相沢智司(アイザワサトシ)は自らに秘められていた力を開放し、魔神として異世界へ転生を果たすことになった。強大な力で大抵の願望は成就させることが可能だ。 彼が望んだものは……順風満帆な学園生活を送りたいというもの。15歳であり、これから高校に入る予定であった彼にとっては至極自然な願望だった。平凡過ぎるが。 だが、彼の考えとは裏腹に異世界の各組織は魔神討伐としての牙を剥き出しにしていた。身にかかる火の粉は、自分自身で払わなければならない。智司の望む、楽しい学園生活を脅かす存在はどんな者であろうと容赦はしない! 強大過ぎる力の使い方をある意味で間違えている転生魔神、相沢智司。その能力に魅了された女性陣や仲間たちとの交流を大切にし、また、住処を襲う輩は排除しつつ、人間世界へ繰り出します! ※番外編の「地球帰還の魔神~地球へと帰った智司くんはそこでも自由に楽しみます~」というのも書いています。よろしければそちらもお楽しみください。本編60話くらいまでのネタバレがあるかも。

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~

黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。 ※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...