【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
20 / 428
転生者モチ編

第19話:街の散策と抽選会(画像あり)

しおりを挟む
 オトンヌの街、美味そうな物が多過ぎて胃袋が辛い。
 俺はまだ所持金ゼロである。
 美術講師のアルバイト代が入るのは月末のことだ。

「ポークの串焼き、美味そう……」
「それはポークじゃなくて、オークだよ」

 ジュウジュウ焼ける肉の香りがたまらん。
 俺の呟きに、イツキがツッコミを入れた。

「モチ、奢るから串焼きみんなで食べよう」

 そこへ、神の声がっ!
 勢いよく振り返ってみたら、神のように後光が差した(ように見えた)イオがいる。

「奢ってくれるの? ありがとう~」

 と言うイツキにも、イオが神に見えたに違いない。
 イオの隣でニコニコしているチッチが、お付きの天使に見えるぞ。

「串焼きデカイから、とりあえず1本ずつでいいかな」
「屋台巡りをするならその方がいいよ」

 硬貨が入ってるっぽい革袋を出しながらイオが訊くと、俺たちではなく屋台のオジサン猫人が答えた。
 串焼き1本がバーべQの鉄串サイズのデカさだから、それで充分だ。

「これをかけるとサッパリした味になるよ。串焼きを食べた後に齧るのもいい」

 そう言ってオジサンが俺たちに配るのは、柑橘系の果実をカットしたもの。
 串焼きは塩コショウに似た味。
 タン塩や唐揚げにレモン汁をかけるようなものだな。
 胃もたれしやすかった日本生活時代の俺とイオには、必須の組み合わせだ。

「いただきまぁす!」
「「「ゴチになりまぁす!」」」

 屋台横のベンチに並んで座るイオとその下僕たち(本日限定)が、一斉にかぶりつく。
 炭火で炙られたポーク肉は、こんがり焼けた良質な豚バラ肉のようだ。

「「うまっ!」」
「やっぱりここの串焼きイチバンだね」
「うんうん」

 俺とイオがハモり、チッチとイツキが頷き合う。
 半分ほど食べたところで柚子レモンぽい味の果汁をかけて、味変わりを楽しむ。
 みんなペロリと完食して、屋台のゴミ箱に串を片付けると、4人で屋台巡りに出た。
 この世界の食文化は地球からの転移者の影響を受けているようで、ケバブや焼きトウモロコシや焼き芋やリンゴ飴っぽいものが売られている。

 しかし、それらよりも、強烈なオーラを放つものを、俺は見つけてしまった。
 俺は無言でイオを肘でつついて、振り向いたところで【それ】を指差す。

「な、なんでアレがこんなところに…?」
「え? 日本あっちにもあるの?」

 呆然と呟くイオに、チッチが言う。

【それ】は、日本人なら多分誰もが知っている物。
 プルミエタウンでは、買い物客のオマケの楽しみとして特設コーナーに用意していた物。
 ガラガラ回して出てくる玉の色で景品が決まる、【ガラポン抽選器】だった。

「なんで異世界こっちに……?」
「いらっしゃい……?」

 吸い寄せられるように俺が近付いていったら、受付の猫人が軽く引いた。
 多分、俺は動揺した時に無意識になる変顔、鼻の穴広げて真顔になっていたんだろう。

「すいません、初めてこの街に来たんですが、その道具は何に使う物ですか?」
「この2人は最近こちらに転移して来た異世界人なんだけど、元の世界の道具と似た物を見て、興味を持ったみたいだよ」

 イオ、イツキ、ナイスフォローだ。
 俺の変顔に引いてた猫人が、本来の営業スマイルになる。

「そうでしたか。これはガラガラと呼ばれる、幸運度を調べる魔導具なんですよ。出た玉によって魔法協会から様々なプレゼントが貰えます」
「やってみたらいいよ。特にイオは運に恵まれてそうだし」

 抽選の受付嬢の説明に続いて、チッチが何やら意味深にウインクして言う。
 小鳥サイズに縮んでチッチの肩に乗っている福音鳥ハピネスまでウインクしているぞ。

「運試しをしてみたいんですが、おいくらですか?」
「銅貨1枚です」
「じゃあ銅貨4枚渡すので、1人1回ずつお願いします」

 黒真珠が高額で売れたのか、今日はやけに気前がいいな、イオ。
 俺とチッチとイツキの分まで出してくれるとは。
 ありがたくガラポンを回させてもらうよ。

「じゃあ最初にやって見せるね」

 最初はイツキ。
 ガラポン改めガラガラの取っ手をつかんで、ゆっくり回す。
 コロンと出た丸い玉は赤色で、淡く発光していた。

「はい、こちらをどうぞ」
「お、まだ持ってなかった魔法だ」

 抽選受付嬢からカードを手渡され、イツキが嬉しそうに言う。
 カードは魔法を習得出来るアイテムらしい。

「次はモチがやってみなよ。チッチはいい物引き当てるの分かってるから、先に引いといた方が残念感が少ないよ」

 ってイツキがアドバイスするから、次は俺がガラガラを回す。
 コロンと出た玉は赤色で、イツキが出した玉よりも強い光を放っていた。

「さすが転移者さん、運が高いですね。はい、こちらは火属性の上位魔法ですよ」

 魔法カードきた!
 しかも上位!
 差し出されたカードのデザインは、イツキのカードよりも派手になっている。

「………モチは、メラゾーマを、おぼえた」

 と呟く俺を、イオが苦笑しながら見ている。
 また変顔になってたか?
 それとも、他社のゲームの魔法名を言ったからか?
 この世界では、魔法は使い手が好みで名前を付ける。
 魔法そのものの呼び名としては火属性の上位とか下位とかだけだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

トレジャーキッズ

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。 ただ、それだけだったのに…… 自分の存在は何のため? 何のために生きているのか? 世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか? 苦悩する子どもと親の物語です。 非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。 まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。 ※更新は週一・日曜日公開を目標 何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。 【1】のみ自費出版販売をしております。 追加で修正しているため、全く同じではありません。 できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり
ファンタジー
ある日、相沢智司(アイザワサトシ)は自らに秘められていた力を開放し、魔神として異世界へ転生を果たすことになった。強大な力で大抵の願望は成就させることが可能だ。 彼が望んだものは……順風満帆な学園生活を送りたいというもの。15歳であり、これから高校に入る予定であった彼にとっては至極自然な願望だった。平凡過ぎるが。 だが、彼の考えとは裏腹に異世界の各組織は魔神討伐としての牙を剥き出しにしていた。身にかかる火の粉は、自分自身で払わなければならない。智司の望む、楽しい学園生活を脅かす存在はどんな者であろうと容赦はしない! 強大過ぎる力の使い方をある意味で間違えている転生魔神、相沢智司。その能力に魅了された女性陣や仲間たちとの交流を大切にし、また、住処を襲う輩は排除しつつ、人間世界へ繰り出します! ※番外編の「地球帰還の魔神~地球へと帰った智司くんはそこでも自由に楽しみます~」というのも書いています。よろしければそちらもお楽しみください。本編60話くらいまでのネタバレがあるかも。

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~

黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。 ※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

処理中です...