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転生者モチ編
第9話:蘇生魔法使い(画像あり)
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「へ~、さすが転生者、入学前から魔法やスキル付いてんだね」
翌朝、魔法学部に入った俺とイオは、先に入学していた黒髪メンバーと雑談をしていた。
この教室は、近年増築したそうで、比較的新しい建物になっている。
円形に並べられた机と椅子、教壇はその中央。
大人数向けの教室は、天井が高く広々としていた。
天井には彫刻が施されていて、魔法陣ぽいものが描かれている。
765名の一斉転移者の多くが希望した魔法学部は、人数が多いのでクラス分けされている。
今ここにいるのは俺たちと同じクラスに入ってるメンバーで、カジュちゃんは別のクラスだ。
妹ちゃんも魔法学部在席だそうで、カジュちゃんのクラスにいる。
「みんなはもう何か魔法を覚えた?」
「早くに目を覚ました奴は、1つか2つ習得してるよ」
イオが黒髪メンバーに聞いている。
目を覚ました時期にバラつきがあり、早くに目が覚めたメンバーはもう魔法が使えるらしい。
ジャミさんの話ではすぐ使えるようになるということだったけど、2~3日の差でそんなに変わるのか。
「どんな魔法?」
「大体みんな初歩の属性魔法だけど、江原がチート発揮していきなり蘇生魔法覚えたよ」
江原は、プルエタウンイベントチームの学生アルバイト。
プルミエタウンに住み込みで働きつつ、平日昼間は大学に通っている。
穏やかな性格の、小柄ぽっちゃり男子だ。
「江原の蘇生魔法凄いよ、死んで24時間以内なら、どんな状態でも完全復活する」
「それ、ほとんど神の領域ってやつ?」
聞いた蘇生魔法は、時間制限はあるものの、かなりのチートっぷりだ。
いっそ笹谷さんの付き人をしてあげれば、倒れた時の対応が楽かもしれない。
まあでも笹谷さんは医学部に任せておけば<学生の技術向上に役立つのかな?
「おかげで神殿から熱烈スカウトきちゃって、元の世界へ帰れない予感が…」
苦笑しながら言う江原。
確かにそんな奇跡みたいな魔法が使えるなら、神殿が欲しがるだろう。
元の世界に帰ろうとしたら異世界の人々に引き止められるよね。
「で、スカウトに応じるの?」
「帰らないで~って引き止められたら、どうする?」
「う~ん、イベントチームよりお金稼げて、たまに実家に帰れるなら、神殿就職して残ろうかな?」
俺たちに聞かれて答えた江原の考えは、意外と現実的だ。
元々親元を離れてプルミエタウンで生活していたから、異世界に来ても割と平気なのかもしれない。
◇◆◇◆◇
「よ~し授業始めるぞ~」
雑談していたところに、先生が入って来た。
え? ここのクラス担任、松本係長?
体育学部で審判してたよね?
あちらのクラス担任かと思ったけど、違ったようだ。
担任は魔法学部のクラスで、体育学部では格闘技系の審判役をしているそうだ。
「今日はモチとイオが初授業だから、とりあえずみんな自分が覚えた魔法を使って見せてやれ」
みんなの魔法が見れるのか、楽しみだ。
俺の実装前の魔法も、早く使えるようになりたい。
「ここのクラス、我が社の人間ばかりだから自己紹介は省略で」
新入りのための自己紹介タイムは、省略されたけど。
既に知ってる人に紹介する必要ないよな。
みんなでゾロゾロ移動、屋外の練習場。
クラスのみんなは順番に、覚えた魔法を使って見せてくれた。
「ファイヤボール!」
野球ボールくらいの火球が飛ぶ。
「アイスニードル!」
鋭く尖った氷の刃が飛ぶ。
「ストーンブラスト!」
鉄砲玉みたいに小石が飛ぶ。
「ストーム!」
突風が起きて的が吹き飛んだぞ?
みんなの魔法を見ていたら、俺も魔法が使えそうな気がしてくる。
よし、俺も挑戦だ。
「係長!俺も魔法使ってみていいスか?」
「爆裂系って攻撃魔法か? 試していいぞ。 あと、ここでは係長じゃなくて先生と呼べ」
「はーい!」
係長に先生と呼べってツッコまれた。
俺が爆裂系の魔法持ちだってことは、既に担任に伝えられているようだ。
「そうだ、ついでにイオの完全回避とかいうのも見せてみろ」
「え?」
係長もとい先生、思いついたようにイオに言う。
傍観モードに入っていたイオがキョトンとした。
「あそこの的の隣に立ってろ」
「…マジっすか」
「心配無い、我がクラスには優秀な蘇生魔法使いがいる」
「それって死なないと使えないんじゃ…」
「大丈夫、もしも死にかけだったらトドメさしてやる」
おいおい松本先生、生徒の扱い雑だな。
江原が「どんな状態でも」死んでいれば蘇生できるからか。
いやでもトドメは駄目だろ、治癒魔法とかないの?
「モチ、魔法はイメージ、発動はノリと勢いだ。やってみろ」
「いっきまぁす!」
松本先生、今度は俺に雑なアドバイスをくれた。
イメージとノリと勢いか、それなら得意分野だ。
爆裂ってことは爆発するんだよな?
じゃあ、アレか。
「自爆!」
張り切って起動言語を言ったところまでは、覚えてる。
次の記憶は、みんながポカーンとしてる中に立っているところだった。
え? なに?
ほんのちょっと記憶が途切れてるけど?
俺が固まっていたら、イオが近付いてきた。
「モチ、お前さっき何した?」
「爆発する魔法をイメージしたら、浮かんだのがあの魔法だった…」
イオに訊かれて、俺は覚えてる限りを答えた。
爆裂のイメージで浮かんだのは、他社ゲームの魔法だ。
「………アホか。自爆してどうする」
松本先生のツッコミが入る。
その日、俺は禁断の魔法【自爆】を覚えた。
翌朝、魔法学部に入った俺とイオは、先に入学していた黒髪メンバーと雑談をしていた。
この教室は、近年増築したそうで、比較的新しい建物になっている。
円形に並べられた机と椅子、教壇はその中央。
大人数向けの教室は、天井が高く広々としていた。
天井には彫刻が施されていて、魔法陣ぽいものが描かれている。
765名の一斉転移者の多くが希望した魔法学部は、人数が多いのでクラス分けされている。
今ここにいるのは俺たちと同じクラスに入ってるメンバーで、カジュちゃんは別のクラスだ。
妹ちゃんも魔法学部在席だそうで、カジュちゃんのクラスにいる。
「みんなはもう何か魔法を覚えた?」
「早くに目を覚ました奴は、1つか2つ習得してるよ」
イオが黒髪メンバーに聞いている。
目を覚ました時期にバラつきがあり、早くに目が覚めたメンバーはもう魔法が使えるらしい。
ジャミさんの話ではすぐ使えるようになるということだったけど、2~3日の差でそんなに変わるのか。
「どんな魔法?」
「大体みんな初歩の属性魔法だけど、江原がチート発揮していきなり蘇生魔法覚えたよ」
江原は、プルエタウンイベントチームの学生アルバイト。
プルミエタウンに住み込みで働きつつ、平日昼間は大学に通っている。
穏やかな性格の、小柄ぽっちゃり男子だ。
「江原の蘇生魔法凄いよ、死んで24時間以内なら、どんな状態でも完全復活する」
「それ、ほとんど神の領域ってやつ?」
聞いた蘇生魔法は、時間制限はあるものの、かなりのチートっぷりだ。
いっそ笹谷さんの付き人をしてあげれば、倒れた時の対応が楽かもしれない。
まあでも笹谷さんは医学部に任せておけば<学生の技術向上に役立つのかな?
「おかげで神殿から熱烈スカウトきちゃって、元の世界へ帰れない予感が…」
苦笑しながら言う江原。
確かにそんな奇跡みたいな魔法が使えるなら、神殿が欲しがるだろう。
元の世界に帰ろうとしたら異世界の人々に引き止められるよね。
「で、スカウトに応じるの?」
「帰らないで~って引き止められたら、どうする?」
「う~ん、イベントチームよりお金稼げて、たまに実家に帰れるなら、神殿就職して残ろうかな?」
俺たちに聞かれて答えた江原の考えは、意外と現実的だ。
元々親元を離れてプルミエタウンで生活していたから、異世界に来ても割と平気なのかもしれない。
◇◆◇◆◇
「よ~し授業始めるぞ~」
雑談していたところに、先生が入って来た。
え? ここのクラス担任、松本係長?
体育学部で審判してたよね?
あちらのクラス担任かと思ったけど、違ったようだ。
担任は魔法学部のクラスで、体育学部では格闘技系の審判役をしているそうだ。
「今日はモチとイオが初授業だから、とりあえずみんな自分が覚えた魔法を使って見せてやれ」
みんなの魔法が見れるのか、楽しみだ。
俺の実装前の魔法も、早く使えるようになりたい。
「ここのクラス、我が社の人間ばかりだから自己紹介は省略で」
新入りのための自己紹介タイムは、省略されたけど。
既に知ってる人に紹介する必要ないよな。
みんなでゾロゾロ移動、屋外の練習場。
クラスのみんなは順番に、覚えた魔法を使って見せてくれた。
「ファイヤボール!」
野球ボールくらいの火球が飛ぶ。
「アイスニードル!」
鋭く尖った氷の刃が飛ぶ。
「ストーンブラスト!」
鉄砲玉みたいに小石が飛ぶ。
「ストーム!」
突風が起きて的が吹き飛んだぞ?
みんなの魔法を見ていたら、俺も魔法が使えそうな気がしてくる。
よし、俺も挑戦だ。
「係長!俺も魔法使ってみていいスか?」
「爆裂系って攻撃魔法か? 試していいぞ。 あと、ここでは係長じゃなくて先生と呼べ」
「はーい!」
係長に先生と呼べってツッコまれた。
俺が爆裂系の魔法持ちだってことは、既に担任に伝えられているようだ。
「そうだ、ついでにイオの完全回避とかいうのも見せてみろ」
「え?」
係長もとい先生、思いついたようにイオに言う。
傍観モードに入っていたイオがキョトンとした。
「あそこの的の隣に立ってろ」
「…マジっすか」
「心配無い、我がクラスには優秀な蘇生魔法使いがいる」
「それって死なないと使えないんじゃ…」
「大丈夫、もしも死にかけだったらトドメさしてやる」
おいおい松本先生、生徒の扱い雑だな。
江原が「どんな状態でも」死んでいれば蘇生できるからか。
いやでもトドメは駄目だろ、治癒魔法とかないの?
「モチ、魔法はイメージ、発動はノリと勢いだ。やってみろ」
「いっきまぁす!」
松本先生、今度は俺に雑なアドバイスをくれた。
イメージとノリと勢いか、それなら得意分野だ。
爆裂ってことは爆発するんだよな?
じゃあ、アレか。
「自爆!」
張り切って起動言語を言ったところまでは、覚えてる。
次の記憶は、みんながポカーンとしてる中に立っているところだった。
え? なに?
ほんのちょっと記憶が途切れてるけど?
俺が固まっていたら、イオが近付いてきた。
「モチ、お前さっき何した?」
「爆発する魔法をイメージしたら、浮かんだのがあの魔法だった…」
イオに訊かれて、俺は覚えてる限りを答えた。
爆裂のイメージで浮かんだのは、他社ゲームの魔法だ。
「………アホか。自爆してどうする」
松本先生のツッコミが入る。
その日、俺は禁断の魔法【自爆】を覚えた。
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