【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

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転生者モチ編

PROLOGUE(画像あり)

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 異世界を再現した体感型VRゲームがウリの、株式会社SETA。
 そのゲーム世界をテーマにした屋内型遊園地プルミエタウンは、大人も子供も楽しめる人気のテーマパークだ。
 NPCと呼ばれる従業員たちは、施設内に居住し、プルミエタウンのキャラクターとして扱われている。
 そのキャラクターの1人として、俺はイベントステージ司会をしていた。
 司会はペアで、相方は俺の親友が担当している。

「次の抽選は、獣人変身リング!」
「みんな~変身したいかぁ~?」

 俺と相方の呼びかけに、お客様プレイヤーたちがノリノリで「おーっ!」って返事をする。
 賞品が微妙な(主にネタ品)場合は、みんな目をそらしてシーンとするのがお約束。
 獣人変身リングは、コスプレイヤーたちに大人気の賞品だ。

「では、抽選用魔導具【アタルくん】起動!」

 って言いながら、相方が起動するのは、お客様プレイヤーに配られたカードに対応した番号をランダムに選び出す抽選機。
 アタルくんは、招き猫の形をした魔導具で、ネーミングはうちの係長によるもの。
 魔導具というのは、その動力に電気ではなく魔石を使う道具のことだ。
 使っている魔石は、我が社が契約しているプルミエ王国からの提供。

「みんな~っ! カードに魔力を注げ!」

 俺の呼びかけで、お客様プレイヤーたちが様々なパフォーマンスで抽選カードに魔力を込める。
 地球には魔力が存在しないけれど、異世界アーシアの環境を忠実に再現したプルミエタウン内に入ると、みんな魔力を得るんだよ。

「そこ、踊らなくていいから」

 相方にツッコミを入れられているグループは常連で、キレッキレのダンスをしながら魔力を込めている。
 当たれ~と念じるだけでいいんだけど、ノリのいいお客様プレイヤーは色々やってくれるから面白い。

「当たったニャ~ン」

 棒読みに最近誰もツッコミを入れなくなったアタルくんボイス(CV:福島主任)が流れると同時に、俺たちの背後にあるスクリーンに当たり番号が表示された。
 該当番号のカードを持っていた子供が飛び上がって喜び、周囲の家族が笑顔で拍手する。
 変身リングは子供たちにも大人気だ。
 はずれた人々は残念そうにしつつも、次の賞品こそはと気合いを入れていた。

 毎週日曜日の抽選会は、今週も大盛況。
 特賞の【異世界アーシア・ペアご招待券】は、中学生の男の子が当選者となった。

「おめでとう! 未成年だから大人の人と一緒に異世界転移しようね」
「パパとママ、どっちと行くのかな?」
「ジャンケンで決めてもらいます」

 どうやら、ペアの相手はジャンケンで決まるらしい。
 常連の家族だったので、ノリのいい両親がステージ上でジャンケンして見せてくれた。
 結果は、お母さん勝利。
 お父さんは自腹(おこづかい)で行きますと笑っていた。
 家族で異世界旅行、いいね。


 



 NPC(従業員)たちが暮らす居住区プライベートエリアは、プルミエタウンの中にある。
 社員寮は戸建てで、異世界アーシア産の建材で建てられた家々は、中世ファンタジー作品によくある石と木で出来た建物だ。
 タウン内には食材を扱う店もあり、NPC割引があるので外で買うよりもかなりお得になる。
 料理が出来ない単身者は、宿屋の食堂で食べることも可能で、そちらも割引あり。
 福利厚生が充実したところがSETAという会社の魅力でもあった。
 俺は調理師免許があるので料理は作れるけど、独り用のメシというのは味気ない。

 そんな俺の楽しみは……

「ごはん出来たよ」

 ……って毎日朝夕食に呼んでくれる、相方の妹が作る料理の数々。

 俺と相方の社宅は隣同士、呼びに来る女の子は料理上手で兄の友人の分まで作ってくれるデキた妹ちゃんだ。

「いつもありがとう!」

 お礼を言って、遠慮なく食べに行く。
 家庭料理といえば、俺の中ではこの妹ちゃんの手料理。
 小さい頃に両親が離婚して、母親がいない家庭で育った俺は、コンビニ弁当やスーパーの惣菜育ちだった。
 だから、妹ちゃんの料理を初めて食べた時は、なんでこんなに美味い物が作れるのかって驚いたよ。

「うん、今日の肉じゃがも美味い!」

 妹ちゃんの料理の中で、俺の大好物は肉じゃが。
 相方の好物でもあり、2人ともたくさん食うから、いつも多めに作ってくれる。

「これ、夜食にどうぞ。原稿描き頑張ってね」

 妹ちゃんが雑炊をくれた。
 雑炊が入ってる容器は魔導具で、状態維持の効果がある。
 できたてアツアツが維持された雑炊を土産に貰い、俺は夜食を楽しみに帰宅した。
 俺はテーマパークで働きながら漫画家をやっていて、今日は締切近い原稿を1本仕上げるところだ。

「トーン貼りとベタ塗り、手伝うよ」

 相方が手伝いに来てくれた。
 アシスタントを雇うほど稼げていない俺には、頼もしいボランティアだ。
 俺が描いた原稿に、相方がトーンを貼ったりベタ塗りしたり。
 2人とも明日はテーマパークの仕事が休みなので、今夜は徹夜だねと言いつつ。

 締切時刻3分前……

「「できたぁ~!」」

 ……毎度ながら滑り込みセーフで完成!

「お疲れ様でした」

 転送用の魔導具で編集さんに送ったら、すぐにメッセージが返ってきた。

「ね……寝るぞ。やっと眠れる……」

 夜食になる筈が朝食になったアツアツの雑炊を食べた後、ベッドに横になろうとしたら、相方が床で寝落ちていた。

「おお相方よ、死んでしまうとは何事じゃ」

 とか冗談を言いつつ、相方の両脇に腕を通して抱えるようにしながらベッドに引きずり上げて寝かせた後、その横にダイブして俺も寝る。

 それは、原稿完了後のお約束だった。
 いつものように2人並んで、存分に睡眠をとる。
 爆睡して目が覚めたら、妹ちゃんが何か美味しいゴハンを食べさせてくれる筈。
 そんなことを思ってる間に、俺は寝落ちていた。

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