【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
118 / 428
転移者イオ編

第57話:サフィール(画像あり)

しおりを挟む
「これからは、あなたをサフィと呼ぶわ」
「サフィ、離れて暮らしていても、時々ここへ帰ってきてくれるかい?」

 両親が、愛称で俺を呼んでくれる。
 前世アズールではなく、現世サフィールの愛称で。

 俺に贈られた名前【サフィール】は、異世界・地球の青い宝石のこと。
 フランス語でサファイアを表す名前だ。
 サファイアは和名を蒼玉そうぎょくといい、石言葉は「誠実」「慈愛」「徳望」の他に、「平和を祈り、一途な想いを貫く」というのがあるそうだ。
 両親は俺が異世界転移者だから、生まれ故郷の青い宝石を調べて、我が子の未来への願いを込めて名付けてくれた。

「学校にはまだ通うんだろ? 母さんが魚の煮つけを作る日は、呼びに行くからな」
「って、それ念話で報せればいいような?」
「迎えに行きたいのよ、エカは」

 見た目の年齢が全然違う双子の兄は、随分と過保護だ。
 兄嫁はニコニコしていて、夫が弟を構い過ぎても放置している。

 両親も兄夫婦も、アズが何も言わずに逝ってしまったことが悲しかったそうだ。
 神様から地球への転生を命じられたことを、アズは両親に話してなかった。
 それはエカも同じだけど、エカの場合はソナに頼んで両親にメッセージを残していたらしい。
 アズは両親には何もメッセージを残さなかった。
 その最期を看取ったのは詩川琉生だけで、どんな会話を交わしたのかは誰も知らない。


「俺には、エルティシアという世界で家族になってくれた女の子がいるんだ」

 自分だけの名前を貰った後、俺はセレスト家の人々に告げた。
 禁書閲覧室で俺を待っているカリンを、みんなに紹介するために。

「家族になる……ということは、その女の子はサフィのお嫁さんかな?」
「嬉しいわ。女の子の家族がまた増えるのね」

 ジャスさん改め、父さんがニコニコしながら言う。
 フィラさん改め、母さんも喜んでくれた。
 寝室には、セレネやソナたちを含めた家族が集まっている。

「お嫁さんじゃなくて、『お母さんになってあげる』って言われたよ」
「「えっ?!」」
「だ、駄目っ。サフィは私の子よ」

【お母さん】というワードに、先に反応したのは、セレネを含めた女性陣。
 母さんは慌てて俺を抱き締めた。

「歳上の女性かい?」
「サフィお前、まさか子供のフリして成人女性を口説いたのか?」

 男性陣には、俺の年齢詐称を疑われた。
 身体は6歳、心は20歳、俺が成人女性を恋愛対象にするかもと思われたようだ。

「違うよ、6歳の女の子だよ」
「どうしてそうなった……?」

 俺が相手の年齢を告げたら、エカが鼻の穴広げて真顔になりながらツッコミを入れた。
 以前エカとソナとリヤンには、エルティシアで家族になってくれた人の話はしてある。
 でも、カリンに会わせる前に魔王騒ぎが起きて、すっかり忘れられていた。

 まあ、困惑されても仕方ない。
 カリン本人を連れて来た方が分かりやすい。

「ちょっと連れてくる」
「あ! こら!」

 って言って、俺は禁書閲覧室へ空間移動した。
 過保護なエカが1人慌てていたけど、気にしない。


 アサケ学園図書館、禁書閲覧室。

「終わったみたいだね」
「うん」

 神霊タマが全て見通したように微笑む。
 俺もタマに笑みを向けて答えた。

 幸い、カリンは待ちくたびれてはいなかった。
 タマが気を利かせたようで、座る椅子がリクライニングチェアになってるぞ。
 カリンは大好きな読書を存分に楽しめて、大満足している。
 タマが作る美味しい食事やお菓子やお茶で、お腹も大満足のようだ。
 トイレなら図書館にあるから、全く不自由なく長時間過ごせたらしい。
 きっと下手なネカフェより居心地が良かったに違いない。

「お帰り。なんだか物凄い力の流れが視えたけど、魔王と戦ってたの?」
「うん、そんな感じ」
「虹色の閃光が視えたわ」
「うん、七徳の光ナークスを使えたよ」

 聖なる力が視えるカリンには、俺が何をしてたか分ったみたいだ。

「それと、家族が増えた」
「それは良い事ね」

 報告を受けて、カリンは嬉しそうに微笑む。
 彼女は家族を欲していた子だから、きっと喜んでくれる筈だ。
 俺はカリンに、今日起きたことを全て話した。

 前世の血縁者が、現世おれも必要だと言ってくれたこと。
 魔族に騙されて魔王になっていた子供を助けたこと。
 名前をもらったこと。
 カリンがお母さんになってくれる話をしたら、前世の母がダメと言っていたことも。

「お姉ちゃんにしておいて正解だったわね」
「お嫁さんを期待してるみたいだよ?」
「あなたが母性本能をくすぐるうちは、ないわ」
「……ソウデスカ」

 カリンは、以前俺に言われて「お姉ちゃん」で妥協済みだ。
 相変わらずお嫁さんになるという発想が無いのが、残念なような、予想通りのような。
 彼女にとって、まだ俺は母性本能を刺激する存在だった。

「でも……」

 ふと思いついたように、カリンは言う。
 大人びた微笑みを浮かべて。

「サフィ、あなたがもっと背が高くなって、カッコ良くなったら考えてもいいわ」

 ……お?
 これは未来に期待していいやつか? 

「新しい家族に、一緒に会いに行ってくれる?」
「ええ、喜んで」

 カリンの承諾を得て、俺は彼女と手を繋いで空間移動した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

トレジャーキッズ

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。 ただ、それだけだったのに…… 自分の存在は何のため? 何のために生きているのか? 世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか? 苦悩する子どもと親の物語です。 非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。 まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。 ※更新は週一・日曜日公開を目標 何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。 【1】のみ自費出版販売をしております。 追加で修正しているため、全く同じではありません。 できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり
ファンタジー
ある日、相沢智司(アイザワサトシ)は自らに秘められていた力を開放し、魔神として異世界へ転生を果たすことになった。強大な力で大抵の願望は成就させることが可能だ。 彼が望んだものは……順風満帆な学園生活を送りたいというもの。15歳であり、これから高校に入る予定であった彼にとっては至極自然な願望だった。平凡過ぎるが。 だが、彼の考えとは裏腹に異世界の各組織は魔神討伐としての牙を剥き出しにしていた。身にかかる火の粉は、自分自身で払わなければならない。智司の望む、楽しい学園生活を脅かす存在はどんな者であろうと容赦はしない! 強大過ぎる力の使い方をある意味で間違えている転生魔神、相沢智司。その能力に魅了された女性陣や仲間たちとの交流を大切にし、また、住処を襲う輩は排除しつつ、人間世界へ繰り出します! ※番外編の「地球帰還の魔神~地球へと帰った智司くんはそこでも自由に楽しみます~」というのも書いています。よろしければそちらもお楽しみください。本編60話くらいまでのネタバレがあるかも。

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~

黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。 ※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...