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転移者イオ編
第47話:謀略の蛇(画像あり)
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ルルに拒まれた蛇将軍が日本へ行った理由は、魔王の子供を利用するつもりだったのかもしれない。
でも、日本人として暮らし、異世界転移して前世の両親の霊と交流できることを喜んでいた詩川琉生が、猫人文明を滅ぼす魔王になるわけがない。
拘束された身で、トゥッティは琉生を魔王にする機会を伺っていたんだ。
そんな時に、俺に呪いをかけてしまった事を知って気落ちしている琉生を見れば、騙して魔王にしようとするだろう。
俺が空間移動で生徒会室に戻ると、出かける前とはかなり様子が違っていた。
円卓や椅子が破壊され、天井も壁も床も、大きな爪で引き裂いたみたいに裂けている。
床には、裂傷を負ったナジャ学園長、ジャミ占い師、生徒会役員たちが、気を失って倒れていた。
江原も負傷していて意識が無く、床に倒れている。
室内を見回すと、みんなと一緒にいた筈のエカがいない。
何処へ行ったんだろう?
とりあえず、先にみんなを治療しよう。
俺は【治療の力】を範囲発動して、室内の怪我人を同時に治療した。
「何があったんですか?」
「大変ニャ! 魔族にエカが連れ去られてしまったニャン!」
その場にいた全員を完治させると、ナジャ学園長に聞いてみた。
慌てた様子の学園長から返ってきた言葉に、一瞬耳を疑う。
爆裂魔法使いのエカが、魔族に攫われた。
殺さずに連れ去ったのは、不死鳥の力による復活を防ぐためか。
最悪の事態だ。
エカがいなければ、6つの心臓を壊せない。
「一瞬だったニャ。敵の気配に気付く前に江原が何かに切り裂かれて、驚いている間にエカが首を噛まれていたニャン」
「敵は2人だったよ。1人はトゥッティで、もう1人は知らない女の子。黒髪黒目だけど、日本人じゃなくて、魔族だと思う」
「2人とも動きが全く見えなかった。僕たちを攻撃したのがどっちか分からないくらいだよ」
「エカは、一瞬で接近したトゥッティに噛まれて、グッタリしていたから意識を奪われたんだと思う」
学園長と生徒会役員たちの話から、トゥッティと魔族の女の子に生徒会室を襲撃されたことは分った。
多分その女の子が、魔族転生した詩川琉生だろう。
噛まれたエカが気を失ったのは、牙から睡眠系の毒を注入されたか。
「セレネ、出てきて」
『はぁい』
俺はセレネを呼び出した。
現れた彼女を見た途端、その場にいた皆がギョッとして身構える。
「みんなが見た女の子は、この子に似ていた?」
「そ、そっくりニャ……」
……確定だな。
「襲撃してきた女の子は、詩川先生の転生者で、魔王です」
俺の言葉に、学園長たちが固まる。
確認を終えると、俺はセレネに指示して腕輪の中に戻ってもらった。
「霊体の子は雰囲気が違うようだけど、同じ存在のようにも視えるねぇ。詩川先生の前世かい?」
ジャミ占い師は、さすがに鋭い。
セレネを見ただけで、何者か分かっていた。
「はい。詩川先生の前世で、俺の前世アズの娘です」
「つまり、詩川琉生としての記憶を失くした魂を、魔族から取り返す鍵というわけだね」
ジャミ占い師は、俺の考えが分ったみたいだ。
猫人にしては長命な彼女は、エカとアズの子供時代も見ていて、高校生転生者だった詩川琉生が、アズの息子だということも知っていたそうだよ。
「しかし、抵抗されずに鍵を使うのは難しいだろうねぇ」
「はい。それに、トゥッティがこちら側の情報を持っていることも不利ですね」
トゥッティは765名一斉転移から捕獲されるまで、アサケ学園の中に潜伏していた。
詩川先生の死後も、学園内に潜伏していたのかもしれない。
だから、回復魔法が使える江原を真っ先に無力化し、爆裂魔法使いのエカを眠らせて攫ったんだろう。
こちらの手の内が読まれている。
切り札のエカがいなければ、魔族に対抗出来ないと思われているようだ。
まさか、こんなに早く行動してくるとは思わなかった。
俺が生徒会室を離れる時に、エカも同行させていれば、攫われずに済んだのに。
悔やんでも、もう遅い。
これからどうするかを、考えよう。
『フラム、聞こえる?』
俺はエカの召喚獣フラムに、念話を送ってみた。
以前、エカが魔族に襲われて瀕死になったとき、フラムが念話に応じたのを思い出したから。
『イオ?! 聞こえるよ!』
フラムは、すぐに応えてくれた。
これでエカに意識が無くても、フラムに状況を聞ける。
『今、どこにいるの?』
『地下牢かな、多分』
『相互転移の腕輪、エカは着けている?』
『ううん。トゥッティがはずして持ち去ってるよ』
……やっぱり。
トゥッティが監禁されていたのは、魔工学部の研究棟だから、魔導具の効果は知られているようだ。
エカが相互転移の腕輪を着けていると、俺が転移して助けに来ることを読まれている。
『はずした腕輪は、トゥッティが着けてるのかな?』
『トゥッティは、エカが目覚めそうになるタイミングでここへ来て、首を噛んで眠らせるんだけど、腕輪は着けてないよ』
エカを眠らせた毒は永続的ではなく、睡眠薬のように時間が経てば効果が切れるらしい。
トゥッティが腕輪を着けていないとすると、どこかに捨てたのか?
とりあえず腕輪を回収に行こう。
捨てた場所が何処か分かれば、何か手がかりがあるかもしれない。
でも、日本人として暮らし、異世界転移して前世の両親の霊と交流できることを喜んでいた詩川琉生が、猫人文明を滅ぼす魔王になるわけがない。
拘束された身で、トゥッティは琉生を魔王にする機会を伺っていたんだ。
そんな時に、俺に呪いをかけてしまった事を知って気落ちしている琉生を見れば、騙して魔王にしようとするだろう。
俺が空間移動で生徒会室に戻ると、出かける前とはかなり様子が違っていた。
円卓や椅子が破壊され、天井も壁も床も、大きな爪で引き裂いたみたいに裂けている。
床には、裂傷を負ったナジャ学園長、ジャミ占い師、生徒会役員たちが、気を失って倒れていた。
江原も負傷していて意識が無く、床に倒れている。
室内を見回すと、みんなと一緒にいた筈のエカがいない。
何処へ行ったんだろう?
とりあえず、先にみんなを治療しよう。
俺は【治療の力】を範囲発動して、室内の怪我人を同時に治療した。
「何があったんですか?」
「大変ニャ! 魔族にエカが連れ去られてしまったニャン!」
その場にいた全員を完治させると、ナジャ学園長に聞いてみた。
慌てた様子の学園長から返ってきた言葉に、一瞬耳を疑う。
爆裂魔法使いのエカが、魔族に攫われた。
殺さずに連れ去ったのは、不死鳥の力による復活を防ぐためか。
最悪の事態だ。
エカがいなければ、6つの心臓を壊せない。
「一瞬だったニャ。敵の気配に気付く前に江原が何かに切り裂かれて、驚いている間にエカが首を噛まれていたニャン」
「敵は2人だったよ。1人はトゥッティで、もう1人は知らない女の子。黒髪黒目だけど、日本人じゃなくて、魔族だと思う」
「2人とも動きが全く見えなかった。僕たちを攻撃したのがどっちか分からないくらいだよ」
「エカは、一瞬で接近したトゥッティに噛まれて、グッタリしていたから意識を奪われたんだと思う」
学園長と生徒会役員たちの話から、トゥッティと魔族の女の子に生徒会室を襲撃されたことは分った。
多分その女の子が、魔族転生した詩川琉生だろう。
噛まれたエカが気を失ったのは、牙から睡眠系の毒を注入されたか。
「セレネ、出てきて」
『はぁい』
俺はセレネを呼び出した。
現れた彼女を見た途端、その場にいた皆がギョッとして身構える。
「みんなが見た女の子は、この子に似ていた?」
「そ、そっくりニャ……」
……確定だな。
「襲撃してきた女の子は、詩川先生の転生者で、魔王です」
俺の言葉に、学園長たちが固まる。
確認を終えると、俺はセレネに指示して腕輪の中に戻ってもらった。
「霊体の子は雰囲気が違うようだけど、同じ存在のようにも視えるねぇ。詩川先生の前世かい?」
ジャミ占い師は、さすがに鋭い。
セレネを見ただけで、何者か分かっていた。
「はい。詩川先生の前世で、俺の前世アズの娘です」
「つまり、詩川琉生としての記憶を失くした魂を、魔族から取り返す鍵というわけだね」
ジャミ占い師は、俺の考えが分ったみたいだ。
猫人にしては長命な彼女は、エカとアズの子供時代も見ていて、高校生転生者だった詩川琉生が、アズの息子だということも知っていたそうだよ。
「しかし、抵抗されずに鍵を使うのは難しいだろうねぇ」
「はい。それに、トゥッティがこちら側の情報を持っていることも不利ですね」
トゥッティは765名一斉転移から捕獲されるまで、アサケ学園の中に潜伏していた。
詩川先生の死後も、学園内に潜伏していたのかもしれない。
だから、回復魔法が使える江原を真っ先に無力化し、爆裂魔法使いのエカを眠らせて攫ったんだろう。
こちらの手の内が読まれている。
切り札のエカがいなければ、魔族に対抗出来ないと思われているようだ。
まさか、こんなに早く行動してくるとは思わなかった。
俺が生徒会室を離れる時に、エカも同行させていれば、攫われずに済んだのに。
悔やんでも、もう遅い。
これからどうするかを、考えよう。
『フラム、聞こえる?』
俺はエカの召喚獣フラムに、念話を送ってみた。
以前、エカが魔族に襲われて瀕死になったとき、フラムが念話に応じたのを思い出したから。
『イオ?! 聞こえるよ!』
フラムは、すぐに応えてくれた。
これでエカに意識が無くても、フラムに状況を聞ける。
『今、どこにいるの?』
『地下牢かな、多分』
『相互転移の腕輪、エカは着けている?』
『ううん。トゥッティがはずして持ち去ってるよ』
……やっぱり。
トゥッティが監禁されていたのは、魔工学部の研究棟だから、魔導具の効果は知られているようだ。
エカが相互転移の腕輪を着けていると、俺が転移して助けに来ることを読まれている。
『はずした腕輪は、トゥッティが着けてるのかな?』
『トゥッティは、エカが目覚めそうになるタイミングでここへ来て、首を噛んで眠らせるんだけど、腕輪は着けてないよ』
エカを眠らせた毒は永続的ではなく、睡眠薬のように時間が経てば効果が切れるらしい。
トゥッティが腕輪を着けていないとすると、どこかに捨てたのか?
とりあえず腕輪を回収に行こう。
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