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転移者イオ編
第37話:薬と健康食品の店(画像あり)
しおりを挟むタマに差し入れを渡した後、俺・翔・カリンの3人は、アサケ王国を出てアマギ王国へ向かった。
アマギ王国には、エアが経営する薬と健康食品の店がある。
ギルド職員たちに口止め料として配りまくったせいで、在庫が乏しくなったから買い足しに行こう。
カリンは健康や美容を重視するから、エアと気が合うかもしれない。
粉雪舞う街の中。
ログハウス風の建物は二重壁になっていて、内壁に保温効果を持つ石材が使われている。
床にも同じ石材が使われて、底冷えしない仕組み。
この構造は、転生以前のエアが考案したものだ。
店内は広く、棚には様々な薬草や茶葉、お菓子や保存食が入った大きなガラス瓶が並んでいる。
ここで売られているものには回復効果や支援効果が付いた品が多く、健康補助食品なども取り扱われていた。
エアはアマギ王国の人々の健康を守るため、様々な食品を研究しながら暮らしている。
「いらっしゃいイオ。いつ髪を染めたの?」
……俺の変装が、エアに見抜かれたのは想定内。
「これなら、アズと間違えないだろ?」
……という理由にしておこう。
「そうね、それなら間違えないね。雰囲気もなんだか違う感じがするし」
……今の身体は本体の完コピだけど、なんか違う感じがするのか?
「どう違って見える?」
「というか、表情が明るくなったみたい」
訊いてみると、タマと同じような感想が返ってきた。
エルティシアに行く前の俺ってそんなに暗く見えたんだろうか?
「何か良い事でもあった?」
「そうだな、そうかもしれない」
「それは、あそこにいる2人の影響?」
話しながら、エアは隣の喫茶コーナーでティータイムを楽しむ翔とカリンに目を向ける。
エアの店は商品が並ぶ販売コーナーと、試食を兼ねたティータイムが楽しめる喫茶コーナーがあった。
カリンが美味しそうに食べているのは、骨や歯を丈夫にするカルシウム入りクッキーだ。
飲んでいるお茶には酸味のある柑橘系の果汁が入っていて、風邪を予防する効果がある。
「うん。あの2人のおかげで、楽しく過ごせるようになったよ」
「それなら良かった。イオにも幸せでいてほしいから」
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
エアはセレスト家から離れた俺を心配していたらしい。
話しながら、俺が買い物カゴに入れていくのは持続回復のチョコと、各種支援効果のキャンディ。
命中率・攻撃力・回避率・防御力・状態異常抵抗力などが上がるキャンディは、冒険者の愛用品だ。
俺は古代魔法の各種身体強化が使えるのでキャンディには頼ってないけど、ラーナのギルド職員の要望で仕入れることにした。
このキャンディは、冒険者による魔物狩りで役立てられている。
「そういえば、あれからあの試薬は飲ませてみた?」
「残念ながら、エカが口移しを警戒して死ななくなったから試せてないよ」
エアが訊いてきたのは、例の蘇生薬のこと。
最初に渡されたものは、飲ませたら蘇生後に御腐人が喜ぶ世界へ行きそうになったからやめとけって話した。
その後、効果を調整したという薬を渡されているが、未だ使っていない。
「飲ませるのは、エカ以外でもいいのよ?」
「見ず知らずの行き倒れ死体には、飲ませたくないな」
実験してほしいエアが、ニコニコしながら言う。
俺は苦笑して、相手を選ばせろと主張した。
蘇生薬は、それを口に含んだ者を保護する効果もある。
伝染病や毒で死んだ人に口移しで飲ませても、ウイルスや毒物の影響を受けない。
それ以前に、俺の場合は完全回避の効果で病にも毒にも侵されない。
しかし、縁もゆかりもない死体に飲ませる気にはならないぞ。
「と言ってるあなたの前世は、見ず知らずの行き倒れ少年に完全回復薬を飲ませたけどね」
「生きてたからまだマシ? ってそんな場面に遭遇しないことを祈っておくよ」
エアは、前世に出来たことは、現世も出来ると思っているようだ。
もしも同じ場面に遭遇したとして、出来るかどうかは俺にも分からないよ。
俺は買い物を終えて喫茶コーナーで試食の菓子とお茶をごちそうになった後、また来るよとエアに声掛けして翔たちと共に店を出た。
◇◆◇◆◇
ナーゴでの買い物ツアーは終わり、3人は翔の異世界転移魔法でエルティシアに転移した。
俺は買い込んだ調味料を調理場へ届けに行き、料理長に醤油と味噌の使い方を伝えた。
「おお! 炙るとこんなに良い香りがするのか!」
「この【コメ】という穀類を炊いて、丸めて作る【おにぎり】に塗って焼くのも美味しいよ」
俺が買ってきた米粉の団子に醤油をつけて、炭火で炙りながら料理長が感動している。
味噌は砂糖を混ぜて、団子に薄く塗って炙ると、これまた香ばしく良い香りがする。
料理長に、俺は焼きおにぎりも推してみた。
醤油や味噌が焼ける香りって、外国人でも美味しそうと感じるそうだけど、異世界人にもウケるようだ。
調理場で香ばしい香り漂うモチモチした団子を頬張っていたら、匂いに釣られた若い神官たちが覗きに来ちゃったよ。
そんなことは想定内で、神殿のみんなが食べられるように団子は山ほど買い込んできた。
焼き立て団子を配って歩いたら、俺の株が急上昇したっぽい。
法王様にもお届けに行って、この団子の材料になる【コメ(イネ)】の栽培を広めてもいいですか? って訊いたら快諾してくれた。
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