【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

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転移者イオ編

第26話:ギルド登録とテスト(画像あり)

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「じゃあ、まずはチュートリアルから始めよう」
「もうすっかりゲーム感覚だね」

 フルダイブオンラインゲームに思えてくるエルティシア生活が始まった。
 まずはギルド登録に行くらしいよ。

「この世界の冒険者は、創作界隈で一般的なものと同じだよ。ギルドに登録して、ランクに合わせた依頼が掲示板に張り出されるから、それをこなしてお金を稼ぐんだ」

 翔の話を聞きながら、冒険者ギルドの建物前まで来て、扉を開ける。
 ギルドハウスは石と木で出来た建物で、入口から最初の場所は受付エリア。
 奥のカウンターに3人の受付嬢がいる。
 冒険者たちがその前に並んでいて、クエスト受付や完了報告をしていた。
 部屋の壁際に掲示板があり、ランクごとに分けて貼られた依頼情報のチラシが見える。
 ごく普通のギルドハウス、俺がよく行くナーゴのギルドハウスとそんなに変わらない感じ。

 ナーゴに転移した時は、寝て起きたら学園の寮の一室で、よく分からないままに学園に入学していたな。
 野外授業で初めて狩りをしたのは半年ほど前、あの頃は獲物を集めてタゲられる役ばっかりしていたよ。
 ちなみに「タゲられる」っていうのは、ネトゲ用語で「敵の攻撃対象ターゲットになる」という意味。
 ユニークスキル【完全回避】は常時発動タイプで、俺が何もしなくても敵の物理も魔法も状態異常も全く食らわない。
 スライムからドラゴンまでありとあらゆる敵に役立つけど、俺が剣術も魔法も素人だった頃は自力で敵を倒せず、自分の周囲に敵を集めて味方の範囲魔法で片付けてもらう一択だったよ。

『日本から来た転移者だと、チート能力を持っていても序盤は慣れてなくて色々やらかすよね? でもイオの場合はナーゴでの経験があるし、同じステータスでの開始だから、通常よりもスムーズに進められると思うよ』
『ナーゴでの俺の経験なんて、大した事ないけどね』
『竜を倒した人が何言ってるの』
『いやあれは本物じゃなくて、召喚された竜だから弱かったんじゃないかな?』
『アチャラ様が呼んだ竜は、本物と同じステータスだったと思うよ』

 そんな会話を交わす翔と俺の声は、建物内の他の人々には聞こえない。
 念話でやりとりしているので、他の人からは翔と俺は無言で列に並んでいるように見えている。
 この世界の人々には異世界転移があることは熟知されている(千年前に異世界転移者が世界を救った歴史がある)そうだけど、転移者を見た人はいないらしい。
 転移者の条件が「翔の作品を完読した人」だからね。

 あの薄い本は日本の同人誌即売会で販売したけど、全然売れなくて本人曰く「黒歴史として処分した」とか。
 なので現在残っているのは、禁書閲覧室の棚に置かれたあの1冊だけ。
 あれは100冊の同人誌を「供養」と称して学校の焼却炉でコッソリ燃やしている時に、1冊くらいは思い出に残そうとして保管したものらしい。
 残り99冊は灰となり、1冊は翔と一緒に異世界転移、黒歴史の証拠品は日本から消えた。

 ちなみに、西暦1998年に「児童・生徒の健康に悪影響を及ぼす可能性がある」として、文部科学省が全国の国公私立の小中高校におけるゴミ焼却炉を原則として全廃する方針を示したため、現在は焼却炉は存在しない。
 問題視されたのは、ゴミを焼却する際に発生する、猛毒物質のダイオキシン。
 ダイオキシンは学校や一般家庭の場合、塩素を含むプラスティック(PVC等)や食品トレイ、そのほか塩素を含むあらゆる物質から、燃焼温度800℃以下の燃焼によって発生する。
 これが問題視され始めたのは、20世紀末のこと。
 翔は20世紀の中学生なので、当時はまだ学校に焼却炉があったそうだよ。

 そんな話を念話で聞いている間に列は進み、ギルド受付の順番がきた。

「新規登録ですね。実技試験がありますので隣の試験場へどうぞ」

 受付嬢が片手で指し示す扉を開けて出た試験場には、受験者の得意分野に合わせてテストを受けられる設備が整っている。
 俺はナーゴのギルドテストと同じく【剣術】を選択して試験を受ける事にした。

「頑張って~」

 翔は見学用のベンチに座り、ニコニコしながら応援している。

「兄ちゃんが応援してるぞ、全力で頑張れよ坊主」

 試験官のマッチョなオジサンは、翔を付き添いの父兄か何かだと思ったらしい。
 翔はアジア系、俺はヨーロッパ系に近い顔立ちだから、全然似てないけど。
 子供で冒険者になるのは親のいない子が多いから、孤児院の仲間だと思われたかも。

「はい、全力で頑張ります」

 と答えて、俺は試験用の片手剣を手に、丸木がサークル状に並ぶ真ん中に入る。
 これもナーゴで馴染みのものだ。
 ナーゴのギルドでテストした後も訓練は続けたから、以前より多少は伸びてるかもしれない。

「始め!」

 試験官の声に応じて、俺は左手に持っている剣の柄に右手を伸ばし、抜き放って周囲の丸木を斬った。

「へ?!」
「い、いつ剣を抜いた?!」

 試験官と、次の試験待ちをしていた冒険者の卵がビックリしてる。
 後で聞いたら、彼等の目には「始め」の合図直後、俺の周囲の丸木が全て、上半分が切断されて転がったように見えたらしい。

「た……対人も試していいか?」
「はい」

 慄く試験官に対人テスト用の木剣を渡されて、続く試験もやっぱり驚かれた。
 対人テストの相手はAランク冒険者だったけど、俺の動きを目視出来なかったらしい。
 俺は開始直後に対戦相手の足を木剣で払い、倒れた背中に乗って、うなじに剣を突きつけて勝利判定をもらった。


『さすがダブル転移者、チュートリアルからブッ飛んでるね』

 ギルド登録を済ませて外に出ると、翔が笑いながら言う。

 試験の結果、俺のギルド登録ランクはS、エルティシア史上最年少のSランク入りとなった。
 うっかり最初からいきなり目立ったかもしれない。
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