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転移者イオ編

第24話:作られる者(画像あり)

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「キャラクタークリエイト!」

 翔の起動言語と共に、白く輝く粒子が現れて集まり、人の形を形成し始める。
 生物、それも人間を無から作り出すなんて、まさに神の領域だ。

 粒子は密集して、1人の人間に変わった。
 6歳前後の健康的な子供の身体、世界樹の民特有のやや細面で西洋人ぽい中性的な顔立ち、肌は白く、髪と瞳はサファイアブルー。

 それが、ナーゴの勇者アズールの幼少期の姿。
 俺の前世の姿であり、ナーゴ転移後の姿でもある。

「もしも容姿を変えたくなったら、変身魔法を伝授出来るよ」
「そっか、この身体には魔王の呪い(?)が無いんだ」
「そういうこと。なんなら日本人だった頃の姿にもなれるよ」
「エルティシアにはアズールを知る者はいないだろうから、この姿でいいよ」

 翔は俺が元の姿に戻りたがってると思ったのか、そう言ってくれたけど。
 俺は日本人だった頃の姿を覚えていない。
 地球からナーゴに異世界転移をした際に、当代魔王の力で【前世返り】した俺に、地球人としての姿と名前の記憶は残されていなかった。
 765名一斉異世界転移から半年以上、今では転移後の姿に慣れてしまったからそれでいい。


「これから君には、エルティシアに来た転移者プレイヤーとして生活してもらうよ。経済面は僕が支援するから安心して」
「経済面までサポートしてもらえるの?」

 ナーゴを出る前にエカに怒られてショボくれてた翔は、立ち直ったのか初めて会った時のテンションに戻っている。
 経済面をサポート出来るなんて、翔はこの世界で貴族か何か地位があるのだろうか?
 ギルド入りしてゼロから稼ぐつもりだった俺には、とてもありがたい話だ。

「クリエイト完了。エル、イオを宿らせてあげて」
「はい」

 エルランティス様の力で、俺は新しい身体に宿った。
 翔のスキルが作り出した肉体うつわは、ナーゴでの俺の身体をコピーしたもの。
 まるでナーゴからそのまま異世界転移したかのように、そっくりそのままで再現された。
 本来なら異世界では無効化される、ナーゴの創造神から与えられたユニークスキル【完全回避】も再現されたので、普通に転移するよりもずっとお得な異世界転移だ。

「完璧な再現度だ。翔は何者?」
「翔は私を創った神ですよ」
「え?!」

 エルランティス様の言葉に、俺は驚いて翔を見た。

 ……創造神を、創った?!

 驚きのあまり声も出ないよ。
 翔がエルランティス様を創り、エルランティス様がこの世界を創ったのなら、真の創造神は翔ってことだよね?

 まじまじと眺めてみた翔の姿は、12~3歳の中学生くらいの少年だ。
 体格は痩せ型で東洋人系の整った顔立ち、肌色は黄色人種と同じ、髪と瞳は黒い。

 見た目は普通の少年なのに、神レベルの魔法やスキルを使いこなす人。
 いやむしろ、この世界の神なのか?

「エルランティスの作者は僕。ちなみにこの身体もキャラクタークリエイトで作ったものだよ。ナーゴで暮らしていた頃の僕の身体が世界樹の中にあるから、その遺伝子データをコピーしたんだ」

 翔は微笑んで答えた。
 転移者チートは見慣れてる俺だけど、神様を創るなんて規格外すぎて思考がちょっと追い付かないぞ?

「エルティシアは、僕が創造魔法【ワールドクリエイト】で作り上げた世界だよ。20世紀にアメリカのゲーム会社が作った、惑星を創造するゲームみたいなものと思ってもらえればいいかな」
「私は翔に作られ、この世界の【創造神】に設定されたものです」
「ゲームとして説明してもらうと理解しやすいけど、現実で考えたらブッとんだ魔法だね」

 翔が作ってくれた肉体《うつわ》に入り、手指の動きを確かめつつ、俺は2柱の神様たちの話を聞いていた。

「で、来る前に聞いた『30分で済む用事』っていうのは、この話を聞くことだけかな?」
「いや、エルティシアでの生活も含めてだよ」

 短時間で済む用事とは御案内を聞くことだろうかと思ったら、違ったらしい。
 生活してたら、30分で済まない気がするよ。

「本を読んでくれた君なら知ってると思うけど、エルティシアから元の世界へ戻る際は時間の流れの調整が出来るんだ」

 翔の話を聞いて、俺は薄い本のラスト辺りを思い出した。
 本の主人公はエルティシアで約1年生活して、日本に帰ったら30分しか経ってなかった。
 それと同じことが、ナーゴからの転移でも出来るのか。

「こっちで何年生活しても、ナーゴでは30分しか経ってないくらいに調整可能だから、存分に楽しんでね」
「それは助かるな。一応ナーゴでは【役目】があるから」

 時間を気にせず過ごせるのは嬉しい。
 ナーゴでは少々忙し過ぎたから。
 あっちに置いてきた魂には、神様から与えられた役目があるから、あまり長時間は留守に出来ない。

 俺の役目、それは【爆裂の勇者を護る】事。
 エカたちが魔族討伐に行く時は危機に備えてナーゴにいなきゃならない。
 それが俺のナーゴでの存在理由だから。

「あれ? 30分で戻るんなら俺の【本体】に時の封印をかける必要なかったんじゃない?」

 ふと気付いて、俺は聞いてみた。
 30分後に戻れるのなら身体が衰弱する事は無い。
 肉体の【生命の時】を停止させる必要は無い気がした。

「【時の封印ルタンアレテ】のもう1つの使い道があるんだよ。生命の時を止めておけば、こちらの世界で得たもの全てを、向こう側にコピー出来るんだ。持ち物からステータスまで全て……ね」

 つまり、こちら側で武術系の修行をすれば、向こう側にも反映されるのか。
 それは悪くないかもしれない。

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