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転移者イオ編
第18話:身体の異変(画像あり)
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「はい、到着。ここがエルティシアだよ」
2回目となる異世界転移。
案内する翔の言葉は、俺にはそこまでしか聞こえなかった。
転移した途端、心臓を握り潰されるような激痛を感じたから。
こんなの、今まで経験したことがない。
胸が締め付けられるとか、そんな生易しいもんじゃない。
見えない力が心臓を包んで、収縮しながら潰しにかかっているような……
俺は両手で胸を抑えて目を閉じ、必死にその力に抗った。
肺も同じ力に侵食されて、満足に呼吸が出来ない。
声も出せず、意識が朦朧とし始めた。
この力は、俺を殺そうとするものだ。
死にたくない。
まだ、やりたいことがいっぱいある。
この身体の余命はあと994年もあるのに、こんな謎の力に殺されたくない。
何故かエカの顔が脳裏に浮かぶ。
泣きながら「死ぬな!」と言われた気がする。
もしもエカがこの場にいたら、間違いなくそう言う筈。
念話は繋げてないけど、エカは何か感知しているのだろうか?
エカのイメージが浮かんだら、謎の力が少し弱まったような気がする。
双子は、強い絆で結ばれている。
以前聞いた、アチャラ様の言葉も浮かんだ。
意識を保てたのは、そこまでだった。
「え?! どうしたの?!」
驚く翔の声を微かに聞いた辺りで、俺の記憶は一旦途切れた。
意識が浮上してきた時、俺は唇に何か柔らかいものが触れているのを感じた。
頬に触れているのは、誰かの髪か?
目を開けると、エカの顔が間近にあるのが見えた。
甘苦い味が口の中に残っている。
この味は、よく知っている薬だ。
エカが飲ませたのか?
口移し、俺が飲ませてやった時は泣くほど嫌がってたくせに。
「あ、気がついたみたい」
と言う声は、ルビイか。
その声にハッとしたように、エカが顔を離した。
ルビイはエカの妻ソナの召喚獣だけど、孵化させたのがアズだったらしい。
それで、アズの魂を持つ転生者の俺とも繋がりがある不死鳥だ。
「大丈夫か? どこか痛いところはないか?」
「……うん」
エカに訊かれて、俺は自分の身体に痛みは無いことを伝えた。
まだ頭がボーッとしていて、身体の感覚がイマイチ分からないけど。
何だろう? 俺どうしたんだっけ?
とりあえず、エカに完全回復薬を飲まされた事は分った。
「なんで、お前が死にかけてんだよ……」
「……え~と……なんでだろう?」
見るのはもう何回目か忘れた、エカの泣き顔。
聞かれても、何が起きたか俺もよく分からない。
ふと視線を巡らせると、今いるのは世界樹の根元だと分った。
俺はエカに抱かれていて、隣にエカの妻ソナと不死鳥ルビイ、エカの息子リヤンまでいる。
「いつからここに?」
「ついさっきだ。ルビイが突然スッ飛んで行くし、何か胸騒ぎがしてここに来たら、お前が倒れてた」
「まだ生きてるから蘇生出来ないって言ったら、エカが完全回復薬を飲ませたの」
エカとルビイの話から彼等の状況は分った。
けど、自分に何が起きたかは分からない。
「イオは倒れる前に何があったか覚えてないの?」
「いつもの読書タイムで、図書館にいたような?」
ソナに聞かれて答えつつ、記憶を探る。
意識を失う前に、何があったっけ?
「そうだ思い出した。確か【読者サービス】とかで、異世界に招待されたんだ」
「読者サービス?」
「それで死にかけるって、呪いの本じゃないの?」
思い出した事を話したら、リヤンがキョトンとして、ソナには呪いを疑われた。
でも呪いなんて、完全回避があるから、俺には普通は効かない。
「その異世界って、まさか地球じゃないよな?」
ってエカに訊かれた。
世界樹の民が地球へ転移すると、汚染大気に耐えられず死亡するらしい。
地球の場合は完全回避が無効化されて、俺でも死亡すると聞いている。
でも、俺が連れて行かれたのは地球じゃない。
「地球じゃないよ。エルティシアって世界」
「知らないな……とりあえず、今後むやみに異世界転移禁止だぞ」
言いながら、エカは俺を抱えて歩き出す。
完全回復薬が効いて全快してるから、もう歩けるんだけど。
放したら逃げると思われているのか、エカはしっかり縦抱きしている。
ソナたちも一緒に歩き出し、俺はエカたちの家に運ばれた。
「今日は泊まっていけよ。死にかけたばかりの奴を独りで帰せないからな」
「わ、分ったよ」
エカは自宅の客室へ俺を運ぶと、ベッドに寝かせて言った。
完治しているから安静にする必要は無いんだけど、随分と過保護だ。
とはいえ、さすがに今回は観念するしかない。
ソナがポタージュスープを作って持ってきてくれたのを美味しく頂いて、大人しく寝ておくことにする。
ルビイの話では、発見時の俺は殆ど息をしてなくて、心臓も止まりかけていたらしい。
俺を殺そうとしていた謎の力は、ルビイが診た時には消えていたという。
ダメージは深刻で、発見が遅かったら死亡していた筈だと言われた。
不死鳥が2羽もいるんだから、俺が心肺停止してから蘇生でもよかったかもね。
けど、エカは待てずに完全回復薬を飲ませたらしい。
その様子は以前エカが大怪我した時の俺と同じで、全く躊躇なく行動したそうだ。
フラムに「似た者同士だね」と言われた。否定はしない。
運ばれた先がジャスさんとフィラさんの家ではなく、エカたちが住む家だから、まだいいか。
過保護スイッチが入ったエカに添い寝されて、その夜はお泊りコースになった。
2回目となる異世界転移。
案内する翔の言葉は、俺にはそこまでしか聞こえなかった。
転移した途端、心臓を握り潰されるような激痛を感じたから。
こんなの、今まで経験したことがない。
胸が締め付けられるとか、そんな生易しいもんじゃない。
見えない力が心臓を包んで、収縮しながら潰しにかかっているような……
俺は両手で胸を抑えて目を閉じ、必死にその力に抗った。
肺も同じ力に侵食されて、満足に呼吸が出来ない。
声も出せず、意識が朦朧とし始めた。
この力は、俺を殺そうとするものだ。
死にたくない。
まだ、やりたいことがいっぱいある。
この身体の余命はあと994年もあるのに、こんな謎の力に殺されたくない。
何故かエカの顔が脳裏に浮かぶ。
泣きながら「死ぬな!」と言われた気がする。
もしもエカがこの場にいたら、間違いなくそう言う筈。
念話は繋げてないけど、エカは何か感知しているのだろうか?
エカのイメージが浮かんだら、謎の力が少し弱まったような気がする。
双子は、強い絆で結ばれている。
以前聞いた、アチャラ様の言葉も浮かんだ。
意識を保てたのは、そこまでだった。
「え?! どうしたの?!」
驚く翔の声を微かに聞いた辺りで、俺の記憶は一旦途切れた。
意識が浮上してきた時、俺は唇に何か柔らかいものが触れているのを感じた。
頬に触れているのは、誰かの髪か?
目を開けると、エカの顔が間近にあるのが見えた。
甘苦い味が口の中に残っている。
この味は、よく知っている薬だ。
エカが飲ませたのか?
口移し、俺が飲ませてやった時は泣くほど嫌がってたくせに。
「あ、気がついたみたい」
と言う声は、ルビイか。
その声にハッとしたように、エカが顔を離した。
ルビイはエカの妻ソナの召喚獣だけど、孵化させたのがアズだったらしい。
それで、アズの魂を持つ転生者の俺とも繋がりがある不死鳥だ。
「大丈夫か? どこか痛いところはないか?」
「……うん」
エカに訊かれて、俺は自分の身体に痛みは無いことを伝えた。
まだ頭がボーッとしていて、身体の感覚がイマイチ分からないけど。
何だろう? 俺どうしたんだっけ?
とりあえず、エカに完全回復薬を飲まされた事は分った。
「なんで、お前が死にかけてんだよ……」
「……え~と……なんでだろう?」
見るのはもう何回目か忘れた、エカの泣き顔。
聞かれても、何が起きたか俺もよく分からない。
ふと視線を巡らせると、今いるのは世界樹の根元だと分った。
俺はエカに抱かれていて、隣にエカの妻ソナと不死鳥ルビイ、エカの息子リヤンまでいる。
「いつからここに?」
「ついさっきだ。ルビイが突然スッ飛んで行くし、何か胸騒ぎがしてここに来たら、お前が倒れてた」
「まだ生きてるから蘇生出来ないって言ったら、エカが完全回復薬を飲ませたの」
エカとルビイの話から彼等の状況は分った。
けど、自分に何が起きたかは分からない。
「イオは倒れる前に何があったか覚えてないの?」
「いつもの読書タイムで、図書館にいたような?」
ソナに聞かれて答えつつ、記憶を探る。
意識を失う前に、何があったっけ?
「そうだ思い出した。確か【読者サービス】とかで、異世界に招待されたんだ」
「読者サービス?」
「それで死にかけるって、呪いの本じゃないの?」
思い出した事を話したら、リヤンがキョトンとして、ソナには呪いを疑われた。
でも呪いなんて、完全回避があるから、俺には普通は効かない。
「その異世界って、まさか地球じゃないよな?」
ってエカに訊かれた。
世界樹の民が地球へ転移すると、汚染大気に耐えられず死亡するらしい。
地球の場合は完全回避が無効化されて、俺でも死亡すると聞いている。
でも、俺が連れて行かれたのは地球じゃない。
「地球じゃないよ。エルティシアって世界」
「知らないな……とりあえず、今後むやみに異世界転移禁止だぞ」
言いながら、エカは俺を抱えて歩き出す。
完全回復薬が効いて全快してるから、もう歩けるんだけど。
放したら逃げると思われているのか、エカはしっかり縦抱きしている。
ソナたちも一緒に歩き出し、俺はエカたちの家に運ばれた。
「今日は泊まっていけよ。死にかけたばかりの奴を独りで帰せないからな」
「わ、分ったよ」
エカは自宅の客室へ俺を運ぶと、ベッドに寝かせて言った。
完治しているから安静にする必要は無いんだけど、随分と過保護だ。
とはいえ、さすがに今回は観念するしかない。
ソナがポタージュスープを作って持ってきてくれたのを美味しく頂いて、大人しく寝ておくことにする。
ルビイの話では、発見時の俺は殆ど息をしてなくて、心臓も止まりかけていたらしい。
俺を殺そうとしていた謎の力は、ルビイが診た時には消えていたという。
ダメージは深刻で、発見が遅かったら死亡していた筈だと言われた。
不死鳥が2羽もいるんだから、俺が心肺停止してから蘇生でもよかったかもね。
けど、エカは待てずに完全回復薬を飲ませたらしい。
その様子は以前エカが大怪我した時の俺と同じで、全く躊躇なく行動したそうだ。
フラムに「似た者同士だね」と言われた。否定はしない。
運ばれた先がジャスさんとフィラさんの家ではなく、エカたちが住む家だから、まだいいか。
過保護スイッチが入ったエカに添い寝されて、その夜はお泊りコースになった。
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