78 / 428
転移者イオ編
第17話:異世界の歩き方(画像あり)
しおりを挟む
遂に薄い本を読み終えた。
本の主人公は元の世界、日本へ帰っていった。
異世界で慕ってくれる人々がいても、日本に帰るんだな。
同じ転生+転移でも、元の世界に戻りたいと思わない俺とは対照的だ。
「じゃあ、次はこれだね」
「うん」
俺は、タマにオススメされた本を手に取る。
黒い布張り表紙に金の文字。
それは禁書棚にある他の本と同じだけど、この本はそれに加えて金色の魔法陣が描かれている。
タイトルは【異世界の歩き方】。
著者名が表記されていないのは、他の禁書と同じだ。
目次を見ると、見覚えのある世界名がある。
◆チキュウ
創造神については不明。
民族によって言語が違い、世界名も異なる呼び名が複数ある。
民族によって信仰するものが違う。
転移者が多いニホンという国では、神ではなく「ホトケ」と呼ぶものを信仰する人が多いらしい。
魔法は架空のものとして扱われている。
とても多くの国家と言語が存在する世界。
文明が発展する代償として自然界が蝕まれており、大気汚染が酷い。
過去にナーゴの民がチキュウに転移して、汚染大気に耐えられず死亡する事故が発生した。
ナーゴの民の転移は不可、転生は可。
チキュウ人のナーゴとの往復転移なら健康に問題く出来る。
◆アーシア
創造神アーシアに創られた世界。
魔法や精霊などが存在する。
完全記憶を持つ聖女が、転生を繰り返しながら世界を浄化し癒やしている。
聖女には双子の兄がおり、勇者として人々を護り続ける。
チキュウからの転移者が多く、食文化や魔導具開発に貢献している。
自然環境はナーゴと同程度で、大気も澄んでいる。
ナーゴの民の転移・転生が可能。
◆エルティシア
創造神エルランティスに創られた世界。
魔法という概念は無い。
妖精が存在し、人間に力を提供する事で魔法に似た現象を生み出す。
瑠璃色の瞳を持つ者は、全ての妖精に愛される聖者として人々からも慕われる。
他世界からの転移者は少ない。
大気や水や土壌は、【聖なる力】によって定期的に浄化されている。
ナーゴの民の転移・転生は理論上は可能。
「薄い本の世界って実在するの?」
俺は本からタマに視線を移して訊いた。
エルティシアが実在なんて予想外だ。
薄い本の舞台となる異世界が実在しているとは思わなかった。
だって、奥付を見たら20世紀の作品だし、作者はナーゴが初めての異世界転移だったみたいだし。
あれはてっきり創作の世界だと思ってたよ。
その問いにタマが答える前に……
「在るよ」
……って。
背後からタマとは違う声がして、俺は驚いて勢いよく振り返った。
この場所に来れる者は限られている。
アサケ王家の王族か、タマの姿が視える者しか、ここを見つけられないし中に入れない。
「え? 誰?」
黒髪、黒い瞳の少年がいた。
優しそうな顔立ちは、女の子っぽくも見える。
服装は日本の中高生に定番の黒い詰襟学生服だ。
年頃は日本人なら中学生くらいかもしれない。
「翔、久しぶり」
ってタマが言うから知り合いか。
俺みたいにタマの姿が視える人っぽい。
「久しぶり、タマ。初めての読者サービスに来たよ」
翔と呼ばれた日本人中学生ぽい子が微笑む。
読者サービスって何?
サインでもするの?
謎の言葉に俺の疑問追加だ。
「良かったねイオ、読者サービスだって」
「ど、どうも」
タマも微笑んでるけど、俺は何がナニヤラで困惑しかない。
日本に住んでいた頃に雑誌などで見かけた読者サービスは、オリジナルグッズが多かったな。
この子も日本人らしいから、何かキャラクターグッズでもくれるんだろうか?
俺はそんなことを思いつつ、歩み寄って来る黒髪の少年を見上げる。
しかし、彼が言う読者サービスは、グッズなどではなかった。
「ちょっと失礼」
「へ?」
「じゃ、行こうか」
「って何処へ?!」
閲覧室の椅子に座っていた俺に近付くと、翔はヒョイッと俺を抱き上げた。
なんか何処かへ連れて行くらしい。
どういう読者サービスだ?
「勿論、エルティシアだよ」
「異世界転移はもうお腹いっぱいだけど?!」
「帰りたい時は元の世界へ帰れるから安心して」
「そういう意味ではなく……」
薄い本を読破すると、異世界エルティシア御招待が読者サービスのようだ。
妖精たちが住まう、古代ギリシア風の異世界へ転移させるのか?
日本に住んでいた頃の俺なら、大歓迎したかもしれない。
しかし今はもうナーゴに転移済みで、異世界スローライフ満喫中だ。
ファンタジーな世界はナーゴで充分味わってるから、今更また異世界転移する気は無いぞ。
それにこう見えても忙しいんだ、呑気に異世界見物している暇は無い。
「遠慮しないで、さあ行くよ」
「いってらっしゃい。お土産はアムルの実でいいよ」
「俺は行くとは言ってな~いっ!」
翔が俺を抱っこしたまま、ニコニコしながら足元に転移魔法陣を展開し始める。
タマは全く止める様子は無く、そちらもニコニコしながらお土産リクエストなんかしてくる。
2人とも、俺の話を聞け!
俺の意志は完全無視で、異世界に招待される。
はい、拉致られ経験2回目。
エカに捕まった時もそうだけど、身体が小さいと拉致しやすいんだな。
6歳児の姿、そろそろやめた方がいいだろうか?
本の主人公は元の世界、日本へ帰っていった。
異世界で慕ってくれる人々がいても、日本に帰るんだな。
同じ転生+転移でも、元の世界に戻りたいと思わない俺とは対照的だ。
「じゃあ、次はこれだね」
「うん」
俺は、タマにオススメされた本を手に取る。
黒い布張り表紙に金の文字。
それは禁書棚にある他の本と同じだけど、この本はそれに加えて金色の魔法陣が描かれている。
タイトルは【異世界の歩き方】。
著者名が表記されていないのは、他の禁書と同じだ。
目次を見ると、見覚えのある世界名がある。
◆チキュウ
創造神については不明。
民族によって言語が違い、世界名も異なる呼び名が複数ある。
民族によって信仰するものが違う。
転移者が多いニホンという国では、神ではなく「ホトケ」と呼ぶものを信仰する人が多いらしい。
魔法は架空のものとして扱われている。
とても多くの国家と言語が存在する世界。
文明が発展する代償として自然界が蝕まれており、大気汚染が酷い。
過去にナーゴの民がチキュウに転移して、汚染大気に耐えられず死亡する事故が発生した。
ナーゴの民の転移は不可、転生は可。
チキュウ人のナーゴとの往復転移なら健康に問題く出来る。
◆アーシア
創造神アーシアに創られた世界。
魔法や精霊などが存在する。
完全記憶を持つ聖女が、転生を繰り返しながら世界を浄化し癒やしている。
聖女には双子の兄がおり、勇者として人々を護り続ける。
チキュウからの転移者が多く、食文化や魔導具開発に貢献している。
自然環境はナーゴと同程度で、大気も澄んでいる。
ナーゴの民の転移・転生が可能。
◆エルティシア
創造神エルランティスに創られた世界。
魔法という概念は無い。
妖精が存在し、人間に力を提供する事で魔法に似た現象を生み出す。
瑠璃色の瞳を持つ者は、全ての妖精に愛される聖者として人々からも慕われる。
他世界からの転移者は少ない。
大気や水や土壌は、【聖なる力】によって定期的に浄化されている。
ナーゴの民の転移・転生は理論上は可能。
「薄い本の世界って実在するの?」
俺は本からタマに視線を移して訊いた。
エルティシアが実在なんて予想外だ。
薄い本の舞台となる異世界が実在しているとは思わなかった。
だって、奥付を見たら20世紀の作品だし、作者はナーゴが初めての異世界転移だったみたいだし。
あれはてっきり創作の世界だと思ってたよ。
その問いにタマが答える前に……
「在るよ」
……って。
背後からタマとは違う声がして、俺は驚いて勢いよく振り返った。
この場所に来れる者は限られている。
アサケ王家の王族か、タマの姿が視える者しか、ここを見つけられないし中に入れない。
「え? 誰?」
黒髪、黒い瞳の少年がいた。
優しそうな顔立ちは、女の子っぽくも見える。
服装は日本の中高生に定番の黒い詰襟学生服だ。
年頃は日本人なら中学生くらいかもしれない。
「翔、久しぶり」
ってタマが言うから知り合いか。
俺みたいにタマの姿が視える人っぽい。
「久しぶり、タマ。初めての読者サービスに来たよ」
翔と呼ばれた日本人中学生ぽい子が微笑む。
読者サービスって何?
サインでもするの?
謎の言葉に俺の疑問追加だ。
「良かったねイオ、読者サービスだって」
「ど、どうも」
タマも微笑んでるけど、俺は何がナニヤラで困惑しかない。
日本に住んでいた頃に雑誌などで見かけた読者サービスは、オリジナルグッズが多かったな。
この子も日本人らしいから、何かキャラクターグッズでもくれるんだろうか?
俺はそんなことを思いつつ、歩み寄って来る黒髪の少年を見上げる。
しかし、彼が言う読者サービスは、グッズなどではなかった。
「ちょっと失礼」
「へ?」
「じゃ、行こうか」
「って何処へ?!」
閲覧室の椅子に座っていた俺に近付くと、翔はヒョイッと俺を抱き上げた。
なんか何処かへ連れて行くらしい。
どういう読者サービスだ?
「勿論、エルティシアだよ」
「異世界転移はもうお腹いっぱいだけど?!」
「帰りたい時は元の世界へ帰れるから安心して」
「そういう意味ではなく……」
薄い本を読破すると、異世界エルティシア御招待が読者サービスのようだ。
妖精たちが住まう、古代ギリシア風の異世界へ転移させるのか?
日本に住んでいた頃の俺なら、大歓迎したかもしれない。
しかし今はもうナーゴに転移済みで、異世界スローライフ満喫中だ。
ファンタジーな世界はナーゴで充分味わってるから、今更また異世界転移する気は無いぞ。
それにこう見えても忙しいんだ、呑気に異世界見物している暇は無い。
「遠慮しないで、さあ行くよ」
「いってらっしゃい。お土産はアムルの実でいいよ」
「俺は行くとは言ってな~いっ!」
翔が俺を抱っこしたまま、ニコニコしながら足元に転移魔法陣を展開し始める。
タマは全く止める様子は無く、そちらもニコニコしながらお土産リクエストなんかしてくる。
2人とも、俺の話を聞け!
俺の意志は完全無視で、異世界に招待される。
はい、拉致られ経験2回目。
エカに捕まった時もそうだけど、身体が小さいと拉致しやすいんだな。
6歳児の姿、そろそろやめた方がいいだろうか?
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
トレジャーキッズ
著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。
ただ、それだけだったのに……
自分の存在は何のため?
何のために生きているのか?
世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか?
苦悩する子どもと親の物語です。
非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。
まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。
※更新は週一・日曜日公開を目標
何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。
【1】のみ自費出版販売をしております。
追加で修正しているため、全く同じではありません。
できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~
あめり
ファンタジー
ある日、相沢智司(アイザワサトシ)は自らに秘められていた力を開放し、魔神として異世界へ転生を果たすことになった。強大な力で大抵の願望は成就させることが可能だ。
彼が望んだものは……順風満帆な学園生活を送りたいというもの。15歳であり、これから高校に入る予定であった彼にとっては至極自然な願望だった。平凡過ぎるが。
だが、彼の考えとは裏腹に異世界の各組織は魔神討伐としての牙を剥き出しにしていた。身にかかる火の粉は、自分自身で払わなければならない。智司の望む、楽しい学園生活を脅かす存在はどんな者であろうと容赦はしない!
強大過ぎる力の使い方をある意味で間違えている転生魔神、相沢智司。その能力に魅了された女性陣や仲間たちとの交流を大切にし、また、住処を襲う輩は排除しつつ、人間世界へ繰り出します!
※番外編の「地球帰還の魔神~地球へと帰った智司くんはそこでも自由に楽しみます~」というのも書いています。よろしければそちらもお楽しみください。本編60話くらいまでのネタバレがあるかも。

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~
黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。
※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる