【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
75 / 428
転移者イオ編

第14話:レア魔法(画像あり)

しおりを挟む
 禁書閲覧室の薄い本、後半まで読み進めた。
 魔法ともギフトとも違う【七徳の光ナークス】は、こちらの世界には無い珍しい現象だな。
 薄い本の世界には魔法と呼ばれるものは出てこない。
 主人公が使う【聖なる力】が、こちらの世界でいう聖属性魔法みたいものかな。
 風の妖精の力を借りて空を飛んだりするのは、ゲームによくある精霊術に近いものかな?
 主要キャラクターの少年が【聖剣】に認められた者って事は、勇者的な立場になるんだろうか?




「タマはこの本の作者に会った事があるんだっけ?」
「うん」
「どんな人だった?」
「まだ子供だったよ。13歳って言ってた。黒髪だから普通の転移者だね」

 作者についてタマに聞いてみた。
 俺やモチみたいに前世がこちら側の人間という人ではなかったようだ。
 本の主人公が転生+転移だから、作者もそうかなと思ったけど、違うらしい。

「作者はこちらに来た後、どうなったの?」
「ナーゴに住み着いて、天寿を全うしたよ」
「学園に入ったりしたの?」
「魔法学部に在籍して、レア魔法を開発して、卒業後は宮廷魔導師になったよ」

 本の主人公は日本に帰ったけど、作者は異世界に永住したらしい。
 やはり転移者、魔法の才を授かった?

「レア魔法?」
「例えば、アズとルルの亡骸にかけられた【時の封印】がそれだね」
「あ~、アズの霊が『死にたて新鮮』とか言ってたアレか」
「アズってば、まるで魚か何かみたいな事を……」

 タマも俺と同じ事を思ったようだ。
 神様の時間停止魔法を作ったのが日本人だったのには少し驚いた。

「【時の封印】の開発のきっかけになったのは、【コールドスリープ】っていう地球の技術らしいよ」
「まさかの元ネタSFか」

 俺の脳内に、冷凍保存されているアズとルルが浮かんだ。
 2人とも死んだ後の保存だから、解凍しても生き返らないだろうね。
 その細胞を使ってクローンを……って、アズのクローンみたいな俺がここにいるじゃないか。
 それならルルのクローンを……いや、やめとこう。
 ルルの復元は魔王の復活と同じ、本人はそれを望んでいない。

「【時の封印】の魔法原理は、ナーゴで生まれ育った猫人や世界樹の民には理解出来なくて、開発者の死と共に創造神かみさまに奉納されたよ」
「地球からの転移者は?」
「当時はまだ異世界転移が滅多にない時代だったから、他の転移者はいなかったよ」

 薄い本と作者が異世界転移したのは、かなり大昔のことだった。
 ゲーム会社の従業員が765人も転移した現代なら、いくらでも継承者がいただろうに。
 現世モチの知識を持つエカなら魔法の才もあるから継承出来ると思う。
 エカの妻ソナは日本からの転移者で魔法の才を持つ人だから、継承出来るかも。
 あまり詳しくはないけど、ソナは日本で嫌な経験があり、自分個人に関わる記憶は消したらしい。
 でも、箸の使い方とか道具に関することは、知識として残っていると言っていた。

「今なら、モチや俺が継承出来たかもしれないのにね」
「見に行ってみたら?」
「え?」
「アズとルルの身体、世界樹の中に保管されてるでしょ。それにかかってる【時の封印】を見たら継承出来るかもしれないよ?」

 そういうテがあったか。
 俺は昨日から予定していた、世界樹の中のルルを見に行く事にした。
 もれなく自分の前世の遺体も見る事になるけど、気にしない方向で。


 いつも通り剣神アチャラ様の修行空間で日課の剣術修行を済ませて、通常空間に戻ると世界樹の根元へ向かう。
 大樹の根元に立ち、創造神かみさまにお願いしてみた。

『神様、ルルに触れてみたいので、世界樹の中に入れてもらえませんか?』
『入るがよい』

 念話で話しかけるとすぐに返事がきて、俺は大樹の中に吸い込まれた。
 一瞬、薄い本の第1話、主人公が菩提樹の大木に吸い込まれるシーンが浮かぶ。

 薄い本とは違い、俺は異世界転移する事は無かった。
 というかもう既に異世界転移済だな。

 世界樹の中には、木漏れ日のように緑の葉の間でキラキラする光があった。
 俺は太い枝の上に現れて、前方にある緑の球体に気付く。
 そこに、よく知っている男女が横たわっていた。

「ルル、来てみたよ」

 俺は、目を閉じて動かない美女に話しかける。
 返事は無かった。
 そりゃそうだ、これは抜け殻、ルルの霊はアサギリ島にいる。

「もしも君が生きていたら、俺は前世の記憶と心を受け継げたのかな?」

 ルルに話しかけながら、その隣に横たわる青い髪の青年を見る。
 今の俺が成長した姿みたいな青年。
 まあ、俺の今の身体は前世の身体をコピーしたようなものだから、似てるのは当然だ。

「もしも前世の記憶と心を受け継げたら、ジャスさんやフィラさんを泣かせずに済んだのにね」

 ルルの頬を撫でてみた。
 温かくはないけど、冷たいわけでもない。
 自分の頬を伝う涙は、魂に残る前世の残滓のせいだろうか。

 そうしてしばらくルルに触れていたら、何かの術式が自分の脳に書き込まれた事に気付いた。

時の封印ルタンアレテ】という起動言語が記憶される。
 それはコールドスリープにヒントを得た、生命の時を止める魔法だ。
 ルルとアズには死亡後に使われているけれど、これは生きている人間にも使える。

「この魔法、ルルが若くて元気だった頃にアズが覚えられたら良かったのにね」

 タマの予想通りレア魔法を継承した俺は、ルルの額にキスをして世界樹の外に出た。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

トレジャーキッズ

著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。 ただ、それだけだったのに…… 自分の存在は何のため? 何のために生きているのか? 世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか? 苦悩する子どもと親の物語です。 非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。 まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。 ※更新は週一・日曜日公開を目標 何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。 【1】のみ自費出版販売をしております。 追加で修正しているため、全く同じではありません。 できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり
ファンタジー
ある日、相沢智司(アイザワサトシ)は自らに秘められていた力を開放し、魔神として異世界へ転生を果たすことになった。強大な力で大抵の願望は成就させることが可能だ。 彼が望んだものは……順風満帆な学園生活を送りたいというもの。15歳であり、これから高校に入る予定であった彼にとっては至極自然な願望だった。平凡過ぎるが。 だが、彼の考えとは裏腹に異世界の各組織は魔神討伐としての牙を剥き出しにしていた。身にかかる火の粉は、自分自身で払わなければならない。智司の望む、楽しい学園生活を脅かす存在はどんな者であろうと容赦はしない! 強大過ぎる力の使い方をある意味で間違えている転生魔神、相沢智司。その能力に魅了された女性陣や仲間たちとの交流を大切にし、また、住処を襲う輩は排除しつつ、人間世界へ繰り出します! ※番外編の「地球帰還の魔神~地球へと帰った智司くんはそこでも自由に楽しみます~」というのも書いています。よろしければそちらもお楽しみください。本編60話くらいまでのネタバレがあるかも。

処理中です...