74 / 428
転移者イオ編
第13話:前世の妻(画像あり)
しおりを挟む
薄い本の中で、主人公以外の人物も前世の記憶が残ってた。
前世が異性の場合、記憶と心が残ってると苦労するかもしれない。
記憶が残ってるとして、女が男に転生した場合と、男が女に転生した場合、どっちが不幸だと思う?
以前、イベントチームの仕事中に誰かが聞いてたな。
異性として愛していた人と再会したら、同性に生まれてたとか。
主人公は、前世の恋人が同性になっちゃってもあんまり気にしてないみたいだけどね。
ナーゴから日本へ転生したみんな、異性に生まれたりしなくて良かったな。
前世の記憶と心が戻ったエカたちが異性に転生してたら大変だったろう。
特にエカなんか嫁さんいるから、女に生まれてたら「男に生まれなおす!」とか言い出しそうだ。
俺は前世の記憶なんかこれっぽっちも無いので、もしも前世が女だったとしても問題無い。
そんな俺の前世の嫁が自宅隣の木に宿ってるんだけど、俺が彼女に関する過去を思い出すことは無かった。
再会した時の気持ちは「綺麗な人だなぁ」程度で終わってる。
ルルは今では俺が帰宅すると木の中から出てきて「おかえり~」なんて言ってくれるよ。
向こうは成人女性、こっちは6歳児だから、出迎える様子は夫婦というより親子のように見える。
で、今は……
「はい、今日のお菓子はチーズケーキだよ」
……って毎日俺を餌付けしている猫神霊タマの方が、よっぽど恋人みたいになってるかも。
モグモグしながらタマの黒猫顔をじーっと見つめてたら、なあに? という感じで口角を少し上げて首を傾げる。
見た目は二足歩行の黒猫の神霊、タマの体格は子供の俺とそう変わらない。
顔つきはまだ仔猫のあどけなさが残る童顔だ。
室内なので瞳孔が細くならず丸くなっていて、キュルンとした大きな瞳が愛らしい。
「タマ、やっぱり可愛いな」
「どうしたの? 再認識したみたいに言って」
無意識に声に出して言ってしまった。
タマがキョトンとして聞く声も、程よく高く澄んでいて可愛い。
「思ったままを言ってみた」
「ありがとう」
微笑むタマに、性別は無い。
猫人の体つきは男女差がほとんど無いので、性別があったとしてもよく分からない気がする。
「タマをモフれたら幸せなのになぁ。抱っこして温まりたい」
「ごめんねモフれなくて。代わりにお茶で温まって」
タマは物質界に器が無いので、姿は見えても、声は聞こえても、触れられない。
なのにタマが調理魔法で作り出すお菓子やお茶には触れられて、お腹も満たされる。
なんとも不思議な仕組みだ。
読書タイムを終えて図書館を出た後。
いつもと同じく武神アチャラ様のところへ行ったついでに、転生で性別が変わることはあるのか聞いてみた。
「アチャラ様、生まれ変わったら男が女になったり、女が男になったりすることってあるんですか?」
「前世で死ぬ前に望めば異性に転生するが、通常は同性に転生させているぞ」
アチャラ様の話では、来世の性別を希望しない限りは同性に転生させるらしい。
ナーゴから地球への転生者5人全員が前世と同じ性別だったのは、異性転生を希望してないからだそうだ。
その後、ギルドの討伐クエスト兼食材用にオークを狩って、自分が食べる分だけ肉を持ち帰り帰宅した。
アズとルルが暮らした家には炊事道具が残っていて、使い方を教えてもらってからは自炊している。
異世界ナーゴは電気の代わりに魔石が使われていて、炊事道具は魔石に含まれる魔力が動力源だ。
魔石は狩りで手に入り、買わずに済むからお金はかからない。
水は家の隣に掘られた井戸から手に入るので、これもお金はかからない。
異世界生活、俺は日本にいた頃よりも過ごしやすいと思ってる。
「ただいま」
帰宅した俺はいつものように家の隣の木の幹を撫でて、話しかけた。
この木が結婚記念樹だと聞いたのは、最近のこと。
木の中からいつものように、ルルとアズの霊が出てきた。
『『おかえり』』
そう言ってくれる2人、自分の前世とその妻の霊。
オオルリの羽毛みたいな青い髪と瞳の青年が、俺の前世アズール。
彼に寄り添って姿を見せたケモミミ美女が、俺の前世の妻ルル。
「前世の恋人って、どんな感じなんだろう?」
『ルルみたいな感じだな』
『こんな感じだけど?』
読んだ本の余韻が残ってて無意識に呟いたら、アズとルルの霊がキョトンとして首を傾げる。
ルルには艶やかな長い黒髪、犬っぽい立ち耳、ふさふさシッポがついている。
犬耳とシッポ以外は世界樹の民と同じ、西洋風な顔立ちの美しい女性だ。
「一度でいいから、ルルに触れてみたいなぁ」
『魂が抜けた器で良ければ、触れられるわよ』
また俺が呟いたら、意外な答えが返ってきた。
「え? それって墓の中の死体?」
『お墓は無いわ。私もアズも遺体は世界樹の中にあるの』
墓を掘り返すのはちょっと……と思ってたら、違った。
そういや、世界樹の民って墓を作らず世界樹の中に遺体を収納するんだっけ。
世界樹の中は時の流れが違うから、遺体は死後間もない綺麗な状態を維持されるらしい。
『創造神が時間停止魔法をかけてくれたから、死にたて新鮮な状態だよ』
「……アズ、それ魚かなんかみたいだよ」
アズの説明は、間違ってはいない。
しかし魚や野菜みたいな言い方はどうなんだ。
それはともかく、世界樹の中、今度行ってみようかな?
墓参り代わりに花でも持って行こう。
前世が異性の場合、記憶と心が残ってると苦労するかもしれない。
記憶が残ってるとして、女が男に転生した場合と、男が女に転生した場合、どっちが不幸だと思う?
以前、イベントチームの仕事中に誰かが聞いてたな。
異性として愛していた人と再会したら、同性に生まれてたとか。
主人公は、前世の恋人が同性になっちゃってもあんまり気にしてないみたいだけどね。
ナーゴから日本へ転生したみんな、異性に生まれたりしなくて良かったな。
前世の記憶と心が戻ったエカたちが異性に転生してたら大変だったろう。
特にエカなんか嫁さんいるから、女に生まれてたら「男に生まれなおす!」とか言い出しそうだ。
俺は前世の記憶なんかこれっぽっちも無いので、もしも前世が女だったとしても問題無い。
そんな俺の前世の嫁が自宅隣の木に宿ってるんだけど、俺が彼女に関する過去を思い出すことは無かった。
再会した時の気持ちは「綺麗な人だなぁ」程度で終わってる。
ルルは今では俺が帰宅すると木の中から出てきて「おかえり~」なんて言ってくれるよ。
向こうは成人女性、こっちは6歳児だから、出迎える様子は夫婦というより親子のように見える。
で、今は……
「はい、今日のお菓子はチーズケーキだよ」
……って毎日俺を餌付けしている猫神霊タマの方が、よっぽど恋人みたいになってるかも。
モグモグしながらタマの黒猫顔をじーっと見つめてたら、なあに? という感じで口角を少し上げて首を傾げる。
見た目は二足歩行の黒猫の神霊、タマの体格は子供の俺とそう変わらない。
顔つきはまだ仔猫のあどけなさが残る童顔だ。
室内なので瞳孔が細くならず丸くなっていて、キュルンとした大きな瞳が愛らしい。
「タマ、やっぱり可愛いな」
「どうしたの? 再認識したみたいに言って」
無意識に声に出して言ってしまった。
タマがキョトンとして聞く声も、程よく高く澄んでいて可愛い。
「思ったままを言ってみた」
「ありがとう」
微笑むタマに、性別は無い。
猫人の体つきは男女差がほとんど無いので、性別があったとしてもよく分からない気がする。
「タマをモフれたら幸せなのになぁ。抱っこして温まりたい」
「ごめんねモフれなくて。代わりにお茶で温まって」
タマは物質界に器が無いので、姿は見えても、声は聞こえても、触れられない。
なのにタマが調理魔法で作り出すお菓子やお茶には触れられて、お腹も満たされる。
なんとも不思議な仕組みだ。
読書タイムを終えて図書館を出た後。
いつもと同じく武神アチャラ様のところへ行ったついでに、転生で性別が変わることはあるのか聞いてみた。
「アチャラ様、生まれ変わったら男が女になったり、女が男になったりすることってあるんですか?」
「前世で死ぬ前に望めば異性に転生するが、通常は同性に転生させているぞ」
アチャラ様の話では、来世の性別を希望しない限りは同性に転生させるらしい。
ナーゴから地球への転生者5人全員が前世と同じ性別だったのは、異性転生を希望してないからだそうだ。
その後、ギルドの討伐クエスト兼食材用にオークを狩って、自分が食べる分だけ肉を持ち帰り帰宅した。
アズとルルが暮らした家には炊事道具が残っていて、使い方を教えてもらってからは自炊している。
異世界ナーゴは電気の代わりに魔石が使われていて、炊事道具は魔石に含まれる魔力が動力源だ。
魔石は狩りで手に入り、買わずに済むからお金はかからない。
水は家の隣に掘られた井戸から手に入るので、これもお金はかからない。
異世界生活、俺は日本にいた頃よりも過ごしやすいと思ってる。
「ただいま」
帰宅した俺はいつものように家の隣の木の幹を撫でて、話しかけた。
この木が結婚記念樹だと聞いたのは、最近のこと。
木の中からいつものように、ルルとアズの霊が出てきた。
『『おかえり』』
そう言ってくれる2人、自分の前世とその妻の霊。
オオルリの羽毛みたいな青い髪と瞳の青年が、俺の前世アズール。
彼に寄り添って姿を見せたケモミミ美女が、俺の前世の妻ルル。
「前世の恋人って、どんな感じなんだろう?」
『ルルみたいな感じだな』
『こんな感じだけど?』
読んだ本の余韻が残ってて無意識に呟いたら、アズとルルの霊がキョトンとして首を傾げる。
ルルには艶やかな長い黒髪、犬っぽい立ち耳、ふさふさシッポがついている。
犬耳とシッポ以外は世界樹の民と同じ、西洋風な顔立ちの美しい女性だ。
「一度でいいから、ルルに触れてみたいなぁ」
『魂が抜けた器で良ければ、触れられるわよ』
また俺が呟いたら、意外な答えが返ってきた。
「え? それって墓の中の死体?」
『お墓は無いわ。私もアズも遺体は世界樹の中にあるの』
墓を掘り返すのはちょっと……と思ってたら、違った。
そういや、世界樹の民って墓を作らず世界樹の中に遺体を収納するんだっけ。
世界樹の中は時の流れが違うから、遺体は死後間もない綺麗な状態を維持されるらしい。
『創造神が時間停止魔法をかけてくれたから、死にたて新鮮な状態だよ』
「……アズ、それ魚かなんかみたいだよ」
アズの説明は、間違ってはいない。
しかし魚や野菜みたいな言い方はどうなんだ。
それはともかく、世界樹の中、今度行ってみようかな?
墓参り代わりに花でも持って行こう。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。
更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。
「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」
様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは?
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
トレジャーキッズ
著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。
ただ、それだけだったのに……
自分の存在は何のため?
何のために生きているのか?
世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか?
苦悩する子どもと親の物語です。
非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。
まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。
※更新は週一・日曜日公開を目標
何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。
【1】のみ自費出版販売をしております。
追加で修正しているため、全く同じではありません。
できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)
幽艶の恋心
沖町 ウタ
恋愛
「ねぇ、旧校舎の幽霊の話、知ってる?」
そんな噂が生徒の間に広まり、藤堂橡(とうどうくぬぎ)は友達と共に夜の校舎へと潜入する。苦難を乗り越え幽霊が出ると噂の屋上に辿り着くと、幽霊と最悪な出会いを果たす。
翌日から藤堂橡は幽霊に付きまとわれる日々が始まる。平穏な彼の日常が、一人の幽霊によって脅かされていく。
そんな幽霊と喧騒の日々を過ごすことで、藤堂橡は様々な感情を抱いていく。
決して叶うことのない、小さな恋の物語……。
第一章は毎日19時更新していきます!
小説PV映像はこちら
https://youtu.be/PPoTDkRkQwU
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる