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しおりを挟むーー彼は、アルバイトを始めた。
別にお金が必要だった訳ではない。
”自分を変えたかったから”なのか、”居場所を求めていたから”なのか、理由は解らない。
ただ、なんとなく、始めたのだ。
この、”なんとなく”は、思考放棄の表れなのか、否、”やりたい事”が見つかったからなのか、その時はまだ解らなかった。
彼は、仕事に打ち込んだ。それこそ、寝る間も惜しんで。
お金に困っているのなら分かるが、何故そこまでするのか。
おそらく、一種の”現実逃避”というやつだろう。
仕事に打ち込んでいる間は、”余計な事を考えずに済む”
労働時間が長ければ長い程、体は疲れるが、心は休まるのだ。
疲労で体を壊す事なんて、ちっとも恐れていなかった。
考えてもいなかった。
それよりも、心が休まる、この”快感”の方が遥かに上回っていたのだから。
そして彼には、別の”快感”もあった。
いやこの場合は、”快楽”というべきか。
ーー”仕事仲間との交流”である。
新鮮だった。そして何よりも、ただ純粋に、楽しかったのだ。
遊びに誘ってもらえる喜び。”自分”がしっかりと、そこにいるという自覚。認識。
ああ、これだったのか。
これが、”なんとなく”の理由だったのか。
この感覚を無意識に求めていたのか。
”自分が必要とされる”、この感覚を。
だからこそ、”なんとなく”、アルバイトを始めようと思ったのか。
彼が、初めて体験、体感する世界。
今まで見た事のない、想像もつかなかった世界。
ーー想像もつかなかった世界。
今はそう思っている。
が、果たして未来はどうなのだろうか。
”想像つかない世界=楽しい世界”とは限らない。
そう、この時はまだ解らなかった。
想像もつかない、”残酷”な世界をーー
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