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タツノブ

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頭痛え。二日酔いだ。タツノブは枕元に置いていたスマートフォンを手にとる。ロック画面には12:26という時刻と、昨晩一緒に飲んでいた友人からのLINEが表示されている。昨日はカフェのバイトが終わった後、高校時代の友人3人と飲んだ。1人は専門学校を卒業した2年目の会社員、もう1人は今年4年になる大学生。仕事の大変さ、就活への不安といった話題が中心だった。

タツノブはというと、情報系の専門学校を1年で退学し、ずっと複数のアルバイトでつないできた。飲食店やアパレルといったレギュラーバイトからコンサートスタッフやティッシュ配りのような単発バイトまでこなしている。色々な仕事を少しずつつまみ食いできるのはアルバイトだからこそで、飽きっぽいタツノブにはピッタリだった。嫌になったらやめればいい。東京にはいくらでもバイト先がある。それぞれのバイトにはそれぞれの人間関係があり、タツノブにはそのことが刺激的で楽しかった。アルバイターとして充実していたからこそ、社会人や大学生って大変なんだなあと思った。

「タツノブ、ご飯はー」
起床したのに気付いたようなタイミングで1階から甲高い声が聞こえる。母親は夕方からパートだっけ。そういうタツノブも夕方からバイトがあることを思い出した。
「食うー!」
少しガラガラになっていた声で叫んだら一気に空腹感がやってきた。
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