1 / 7
ユウト
しおりを挟む中華屋の支払いを終え、外に出る。ユウトはラーメン餃子定食ご飯大盛りを頼んだことを後悔した。今日初めての食事だからといって調子に乗った。予想以上にまずかったこともあり、少し残してしまった。まあ安かったし、腹の減りがおさまっただけでもよしとしよう。午後6時からはバイト、それまで2時間程度の時間がある。駅前の古本屋で立ち読みでもしてるか。ユウトはバイトがあることに少し憂鬱になりながらも駅前へと歩いた。3年以上続けている居酒屋バイトはもう慣れたもので、人間関係も良好。しかし大変なことも多く、先週も客同士の喧嘩を止めるのに一苦労した。特に今日は金曜日、忙しくなるだろう。
駅前ビルの2階に上がり、何度も来ているが一度も商品を買ったことのない古本屋に入る。慣れた足取りでマンガコーナーを目指し、少年マンガが多く陳列される本棚の前で立ち止まった。3巻まで読み終えていた野球マンガの4巻を見つけて取り出し、読み始める。この野球マンガは小学生時代に読んでいたもので、人生で最も熱中したマンガ作品だ。先月ぐらいにふと読みたくなってこの古本屋に来るたびに読んでいる。アニメ化もされた人気作品で、当時野球少年だったユウトは日々練習に汗を流す自分と主人公を重ね合わせながら読んでいた。スポ根の王道を行くキャッチーなストーリーと個性溢れるキャラクターたち、野球シーンの細やかな描写など、今なお楽しみながら読める。時を経てから読み返すと客観的に読めて新鮮だと思えるのと同時に、かつてのように入れ込んで読めないのを少し寂しく思う。
ユウトは中学生になると野球を辞めて美術部に入り、マンガを書きはじめた。多くの少年たちが野球選手になりたい、野球をはじめたいと思うマンガ作品を読んで、ユウトはマンガ家になりたい、マンガを書きはじめたいと思った。野球部ではレギュラーになれなかったが、絵の分野では才能があったようで、コンクールで何度も入賞できたし、書いていたマンガもごく少ない友人内ではあるが評判になっていた。地元の高校に入学してからも相変わらずマンガは書き続けた。とはいっても趣味の域は出ておらず、ひたすら妄想を書き綴っていた。気が付けば3年生になっていて、進路選択の時期。マンガ家志望は変わらず、美大なども考えたが、マンガの道を志すきっかけとなった作品の作者が高卒だったこと、ネットにマンガ家に学歴は関係ないと書いてあったことから単身上京してデビューを目指すことにした。生徒のほとんどが大学や専門学校に進む進学校だったため、担任からは反対されたが頑に意志は曲げず、なんとか押し切った。放任主義の両親は何も言わなかった。
そんなこんなで現在、上京4年目。とっくにマンガ家になりたいという気持ちは失せていた。上京1年目には新人賞に応募したり、作品を出版社に持ち込んだりもしたが、何一つとして成果を得られなかった。生活費を稼ぐためにしていた居酒屋バイトのみが残った。現在は、バイトをしながら程々に遊び、それなりに都会暮らしを楽しんでいる。ユウトは読み終えた野球マンガの4巻を棚に戻して古本屋を出る。今日もいつも通りバイトに向かうため、最寄り駅の改札に向かった。
駅前ビルの2階に上がり、何度も来ているが一度も商品を買ったことのない古本屋に入る。慣れた足取りでマンガコーナーを目指し、少年マンガが多く陳列される本棚の前で立ち止まった。3巻まで読み終えていた野球マンガの4巻を見つけて取り出し、読み始める。この野球マンガは小学生時代に読んでいたもので、人生で最も熱中したマンガ作品だ。先月ぐらいにふと読みたくなってこの古本屋に来るたびに読んでいる。アニメ化もされた人気作品で、当時野球少年だったユウトは日々練習に汗を流す自分と主人公を重ね合わせながら読んでいた。スポ根の王道を行くキャッチーなストーリーと個性溢れるキャラクターたち、野球シーンの細やかな描写など、今なお楽しみながら読める。時を経てから読み返すと客観的に読めて新鮮だと思えるのと同時に、かつてのように入れ込んで読めないのを少し寂しく思う。
ユウトは中学生になると野球を辞めて美術部に入り、マンガを書きはじめた。多くの少年たちが野球選手になりたい、野球をはじめたいと思うマンガ作品を読んで、ユウトはマンガ家になりたい、マンガを書きはじめたいと思った。野球部ではレギュラーになれなかったが、絵の分野では才能があったようで、コンクールで何度も入賞できたし、書いていたマンガもごく少ない友人内ではあるが評判になっていた。地元の高校に入学してからも相変わらずマンガは書き続けた。とはいっても趣味の域は出ておらず、ひたすら妄想を書き綴っていた。気が付けば3年生になっていて、進路選択の時期。マンガ家志望は変わらず、美大なども考えたが、マンガの道を志すきっかけとなった作品の作者が高卒だったこと、ネットにマンガ家に学歴は関係ないと書いてあったことから単身上京してデビューを目指すことにした。生徒のほとんどが大学や専門学校に進む進学校だったため、担任からは反対されたが頑に意志は曲げず、なんとか押し切った。放任主義の両親は何も言わなかった。
そんなこんなで現在、上京4年目。とっくにマンガ家になりたいという気持ちは失せていた。上京1年目には新人賞に応募したり、作品を出版社に持ち込んだりもしたが、何一つとして成果を得られなかった。生活費を稼ぐためにしていた居酒屋バイトのみが残った。現在は、バイトをしながら程々に遊び、それなりに都会暮らしを楽しんでいる。ユウトは読み終えた野球マンガの4巻を棚に戻して古本屋を出る。今日もいつも通りバイトに向かうため、最寄り駅の改札に向かった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。




ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる