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63 帰城
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私達は食事が終わってから、頼まれた魔法を使う為に外へと出た。結論から言うと、マートルとランタナともう一度育てた木は、通常のマレサの実の色をしたものだった。
だが、別の問題が新たに発覚してしまった。
魔力を貰おうとして私がマートルとランタナにお願いして出してくれた魔力の大きさがとてつもなく大きな魔力だったからだ。
「わわっ!?大きすぎだよ、マートルもランタナも。もっと小さいのでいいのに」
私は食事の前に魔法を使ったものよりも、5倍以上の大きさの魔力を5つ掌に貰ってしまった。外にいた私も含め、レナートさん、セオドール、ボードワンさん、後数人の騎士さん達が全員驚いていた。
「大きすぎるけど、ほっとくと消えちゃうし、出来ないこともないんだから使っちゃうね」
勿体ない精神で、私は使うことを決定した。
さーてと、お腹もいっぱいだし。さくさく使っちゃおー。
私は肩にスノーベリーとハルジオンを乗せたまま、地面に手を当て魔法を発動させた。
「『治癒』『撹拌』『培養』『創成』『連繋』」
「ちょっと待っ―――」
焦ったレナートさんの声が重なったが、魔法を使う為に集中していたから途中で止めることは出来なかった。
見たこともない超巨大なマレサの木がそこに出現していた。
「穂ー叶ー、またお前はー。明らかに魔力がおかしいの分かってて、魔法を使うやつがあるかーっ」
チンピラを思わせるようなガラが悪くなったレナートさんから、また怒られた。
「ひゃう」
私は小さくなって固まった。また、やっちゃったーっっ。
「こら、そんなに怒ってやるな、レナート。確かに勝手に強すぎる魔力を使ったことは指摘するべきだろうが、叱責するほどでもなかろう。それに、これだけの実があれば、随分と村が助かる。逆にこちらが礼を言わねばならん。有難う、穂叶さん」
あれ?ボードワンさんからお礼言われちゃった。
レナートさんからはそれ以上小言を貰うことは無くなったのは良いのだけれど、溜め息と共にぽつりと呟かれた。
「木登り得意なのを見つけないとなぁ・・・」
マレサの実が沢山あっても、ずうっと上の実を取るのは大変そうですよねー。
梯子が全く役に立たない程の高い木に育ててしまったのは、自分だ。しかも採るのは他人任せとなる。
えーと、ほんと色々と済みません・・・。以後、魔法は気を付けます・・・。
「元気でね、穂叶さん。直ぐにまた会えるわ」
ディランザース城に帰る為、馬車に乗り込む前に、涙ぐむアンナさんにそう声を掛けられた。
滞在日数は一週間にも満たない短い期間だったけど、とても濃い充実した日を過ごすことが出来た。家族として迎えてくれたことも、セオドールと挙式を挙げることが出来たことも、レナートさん初め、シルヴィオ家の皆が私を受け入れてくれたからだ。どれだけ感謝しても足りない。
「はい、楽しみに待ってます。本当に色々有難うございました」
私はアンナさんとしっかり抱擁し合った。ボードワンさんや、レナートのお兄さん達の奥さんとは握手した。
「バディア、頼みますよ」
「はい、奥様」
アンナさんに向かってバディアさんは深々とお辞儀をした。
なんと、城へ向かう馬車にはバディアさんも同行することになったのだ。
実は、セオドールの家に住まずに、城の近くにあるシルヴィオ家に住まうことになった私達。気心が知れた侍女がいた方がいいだろうという事で、ボードワンさんが私の為にバディアさんも一緒に住む様に手配してくれたのだ。
家族やご両親とは離れてしまうだろうし、慣れ親しんだシシリアームからも離れてしまう。
良いの?と心配になって馬車に乗り込んでから私は聞いたのだけれど、バディアさんからは逆にいい男をゲットするチャンスですから!と鼻息も荒くガッツポーズ。逆に闘志がみなぎっていた。
逞しいな、バディアさんは。勿論、着いてきてくれるのはとっても嬉しい事だ。
私だけでなく、レナートさんも、シェリーさんも一緒になって笑っていた。
後で分かったことだが、アンナさんが直ぐにまた会えるわと言ったのは、社交界シーズンが始まるからだったらしい。馬車に乗り込んでから社交界って何の事?と聞くと、レナートさんからは詳しい事を教えて貰ったけれど、よく理解出来なかった。春から夏にかけ貴族が仕事をするから城へと来るから会えるということ、らしい。
そのうち、こういうことも勉強しなきゃいけないんだろうなぁ。私にも分かるかなぁ。
そう思ったのが顔に現れていたらしい。
「私も微力ながらお手伝いしますね」
バディアさんも教えてくれると言ってくれた。
大変そうだけど。うん、頑張ります。
何事もなく、私達は予定通り3日後には城へと着いた。
***
穂叶達がシルヴィオ家を出発したその頃。
ディランザース城では、執務室では椅子に座っているフルメヴィーラ陛下に、クロード宰相がシシリアームから届いたばかりの書簡を広げ説明を始めていた。その後ろには、アルベルトも控えている。
「セオドール殿との挙式の直後、穂叶さんを誘拐した実行犯は直ぐに捕縛したとのことです。首謀者は公爵次男ビセンテ・アスカルドと、ドニ・ナルカン。こちらはビセンテが私的に雇った魔法使いのようです。この2人がシシリアームを初め、マレサの木を病気に見せる薬を作り出し、あちこちにばら撒いた様です。尚、穂叶さんは無事救出。怪我、乱暴などは一切なかったとの事です」
大急ぎで届けられたボードワン・シルヴィオからの書簡にはそう記載されている。読み上げながら、クロード宰相自身も驚いていた。
「それは良かった。しかし、やはり、アスカルド公爵家だったか」
広がり始めたマレサの木の不作に、はっきりとは黒と言えないまでも、恐らくは何かしら関係しているだろうと予想していた家名をここで聞き、フルメヴィーラは嘆息と共に呟きを漏らした。
だが、別の問題が新たに発覚してしまった。
魔力を貰おうとして私がマートルとランタナにお願いして出してくれた魔力の大きさがとてつもなく大きな魔力だったからだ。
「わわっ!?大きすぎだよ、マートルもランタナも。もっと小さいのでいいのに」
私は食事の前に魔法を使ったものよりも、5倍以上の大きさの魔力を5つ掌に貰ってしまった。外にいた私も含め、レナートさん、セオドール、ボードワンさん、後数人の騎士さん達が全員驚いていた。
「大きすぎるけど、ほっとくと消えちゃうし、出来ないこともないんだから使っちゃうね」
勿体ない精神で、私は使うことを決定した。
さーてと、お腹もいっぱいだし。さくさく使っちゃおー。
私は肩にスノーベリーとハルジオンを乗せたまま、地面に手を当て魔法を発動させた。
「『治癒』『撹拌』『培養』『創成』『連繋』」
「ちょっと待っ―――」
焦ったレナートさんの声が重なったが、魔法を使う為に集中していたから途中で止めることは出来なかった。
見たこともない超巨大なマレサの木がそこに出現していた。
「穂ー叶ー、またお前はー。明らかに魔力がおかしいの分かってて、魔法を使うやつがあるかーっ」
チンピラを思わせるようなガラが悪くなったレナートさんから、また怒られた。
「ひゃう」
私は小さくなって固まった。また、やっちゃったーっっ。
「こら、そんなに怒ってやるな、レナート。確かに勝手に強すぎる魔力を使ったことは指摘するべきだろうが、叱責するほどでもなかろう。それに、これだけの実があれば、随分と村が助かる。逆にこちらが礼を言わねばならん。有難う、穂叶さん」
あれ?ボードワンさんからお礼言われちゃった。
レナートさんからはそれ以上小言を貰うことは無くなったのは良いのだけれど、溜め息と共にぽつりと呟かれた。
「木登り得意なのを見つけないとなぁ・・・」
マレサの実が沢山あっても、ずうっと上の実を取るのは大変そうですよねー。
梯子が全く役に立たない程の高い木に育ててしまったのは、自分だ。しかも採るのは他人任せとなる。
えーと、ほんと色々と済みません・・・。以後、魔法は気を付けます・・・。
「元気でね、穂叶さん。直ぐにまた会えるわ」
ディランザース城に帰る為、馬車に乗り込む前に、涙ぐむアンナさんにそう声を掛けられた。
滞在日数は一週間にも満たない短い期間だったけど、とても濃い充実した日を過ごすことが出来た。家族として迎えてくれたことも、セオドールと挙式を挙げることが出来たことも、レナートさん初め、シルヴィオ家の皆が私を受け入れてくれたからだ。どれだけ感謝しても足りない。
「はい、楽しみに待ってます。本当に色々有難うございました」
私はアンナさんとしっかり抱擁し合った。ボードワンさんや、レナートのお兄さん達の奥さんとは握手した。
「バディア、頼みますよ」
「はい、奥様」
アンナさんに向かってバディアさんは深々とお辞儀をした。
なんと、城へ向かう馬車にはバディアさんも同行することになったのだ。
実は、セオドールの家に住まずに、城の近くにあるシルヴィオ家に住まうことになった私達。気心が知れた侍女がいた方がいいだろうという事で、ボードワンさんが私の為にバディアさんも一緒に住む様に手配してくれたのだ。
家族やご両親とは離れてしまうだろうし、慣れ親しんだシシリアームからも離れてしまう。
良いの?と心配になって馬車に乗り込んでから私は聞いたのだけれど、バディアさんからは逆にいい男をゲットするチャンスですから!と鼻息も荒くガッツポーズ。逆に闘志がみなぎっていた。
逞しいな、バディアさんは。勿論、着いてきてくれるのはとっても嬉しい事だ。
私だけでなく、レナートさんも、シェリーさんも一緒になって笑っていた。
後で分かったことだが、アンナさんが直ぐにまた会えるわと言ったのは、社交界シーズンが始まるからだったらしい。馬車に乗り込んでから社交界って何の事?と聞くと、レナートさんからは詳しい事を教えて貰ったけれど、よく理解出来なかった。春から夏にかけ貴族が仕事をするから城へと来るから会えるということ、らしい。
そのうち、こういうことも勉強しなきゃいけないんだろうなぁ。私にも分かるかなぁ。
そう思ったのが顔に現れていたらしい。
「私も微力ながらお手伝いしますね」
バディアさんも教えてくれると言ってくれた。
大変そうだけど。うん、頑張ります。
何事もなく、私達は予定通り3日後には城へと着いた。
***
穂叶達がシルヴィオ家を出発したその頃。
ディランザース城では、執務室では椅子に座っているフルメヴィーラ陛下に、クロード宰相がシシリアームから届いたばかりの書簡を広げ説明を始めていた。その後ろには、アルベルトも控えている。
「セオドール殿との挙式の直後、穂叶さんを誘拐した実行犯は直ぐに捕縛したとのことです。首謀者は公爵次男ビセンテ・アスカルドと、ドニ・ナルカン。こちらはビセンテが私的に雇った魔法使いのようです。この2人がシシリアームを初め、マレサの木を病気に見せる薬を作り出し、あちこちにばら撒いた様です。尚、穂叶さんは無事救出。怪我、乱暴などは一切なかったとの事です」
大急ぎで届けられたボードワン・シルヴィオからの書簡にはそう記載されている。読み上げながら、クロード宰相自身も驚いていた。
「それは良かった。しかし、やはり、アスカルド公爵家だったか」
広がり始めたマレサの木の不作に、はっきりとは黒と言えないまでも、恐らくは何かしら関係しているだろうと予想していた家名をここで聞き、フルメヴィーラは嘆息と共に呟きを漏らした。
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