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3 渋々。仕方なく。
しおりを挟む「―――失礼しました。では改めて自己紹介からさせていただきます」
島になっている机の空いている椅子に各自座って、説明を受けることになった。三人の中で一番上の階級であるらしい女性が仕切ってくれている。さっきとは打って変わって言葉遣いも丁寧になってる。
珍しい服装をして現れた萌音と手にしていた缶に異様な位魔力が込められているを感知して、三人はすぐに萌音が異世界から来た人だと見抜いたと教えてくれた。
話が早くて助かった。じゃなきゃ今頃不審者として捕獲されてたかもねー。・・・ぶるぶるぶる。怖ーっ。
自分のせいじゃないのに犯罪者にされたらたまったもんじゃない。
それにしても異世界かー・・・。本当にあるんだねー、と逆に感心。
不思議なんだけど、夢っていう感じはしないんだよね。現実なんだろうなぁっていう感覚がする。疲れがひどすぎて神経がマヒしているのかもしれないけど。
ちょっと仕事でイラストが必要になって、持っていた小説を読み返ししたばかりで似たような話に進んでいるからか。普通ならとても信じられなくて暴れたり、泣き出したりしてもおかしくはない思うけれど。自分が鈍いだけ?
三人からの扱いは大丈夫そうだし。うん、ここは一先ず大人しくしておかないとね。早く元の世界へ返してもらわないと困るし。
明日は久々の休みだけれど、明後日からお店は通常営業に戻ることになっている。萌音が受けて作ることになっているオーダーリクエストのバースディケーキの予約が入っているから休めない。この為に昔の小説を引っ張りだして予習もばっちりなんだし。
萌音は手にしていたケーキボックスとリュックをデスクに置かせてもらい、動揺する姿を表に出すことなく木の椅子に静かに腰かけた。
「魔術研究所所長のジョセフィーヌ・バラデュールと言います。ここでは王室の方々の護衛や、日々新しい魔法の開発を主な仕事としています。または野菜や果物の品種改良といった生活に関することにも携わっています」
赤い髪が特徴な背の高い女性だ。ストレートでポニーテールをしている。目は茶色。きりっと涼やか。年齢はやっぱり萌音より少し上に見える。はっきりとした口調で人と話すことになれているように感じる。
うーん、頼れるお姉さまと言ったところかな。羨ましいくらいの美人さんですね。カトレアの花が似合いそう。特に赤。白衣の下に着ているシンプルデザインのブラウスの襟元はきっちりしているのに、実り豊かであろう膨らみが主張して女性らしさをこれでもかと強調している。
たよやかな仕草と控えめながらもポイントを押さえたメイクがよく似合ってる。腰の細さも相まって、同性である萌音から見てもドキッとさせられる。
「次長オーリック・デヴィッドです。今回はうちの馬鹿がご迷惑おかけして申し訳ありません。後できっちりと〆ておきますので」
自己紹介と共に深く頭を下げられた。かなり肩幅ががっしりとしている。背も一番高い。鍛えてますよっていうのがハイネックセーターの上から分かるくらい。短い髪は淡い茶色。丁寧にセットされている。目は何色だろう。頭を下げられているから見えないや。
・・・あ、濃い茶色だった。
お辞儀を終えて元に態勢に戻ってから見えた。随分と真っすぐに目線を合わせてくる人だ。目力が半端ない。体が大きいこともあってちょっと威圧感が怖いんですケド・・・。後で〆るって言ってたけど、どんなことするんだろう。想像すると壊そう・・・。でも、普段から真面目に働いているんだろうね、きっと。うん、これ以上考えるのはよそう。そのことに関しては関わらないほしが良さそうだと何かか告げる。
私には関係ない。うん、ない。よし。
「お願いします」
萌音は取り合えずこれだけの返事はしておいた。迷惑は掛かったのは事実なんだから、きっちりと代わりに仕事しておいてください。じちょーさん、頼みました。
萌音は体格の良い次長さんに丸投げした。
「・・・ジェラルド・ブルグスミューラーだ」
問題の人からは名前だけを発言した後、暫くまってもそれ以上発言するつもりはなさそうだった。罰か悪くて気まずいのか。
シャツの上にベストを重ね着し、細身な体躯をしていて、寝ぐせなのか濃紺の髪がところどころ跳ねている。少し長めの前髪が邪魔そうだ。顔の作りは良さそうなのに、見た目残念な印象しか受けない。萌音が一方的にこちらへ召喚したような相手に良い印象など持てないが。
まあ、一応三人からの自己紹介を受けて自分だけしないわけにもいかないので、ここはひとつ大人の対応をすることにする。言いたいことも、聞きたいこともあるけれど後回しだ。
「長沼萌音です。あーっと、モネ・ナガヌマです。名前がモネで、ナガヌマが氏名です」
一度普段どおりの氏名を言ってしまった後で、改めて氏名を言い直した。
「ナナユマさん?アカイマさん?」
発音がしにくいのか、所長のバラデュールさんは萌音の氏名を言ってくれたが全然違っている。
「ナ・ガ・ヌ・マ、です。」
「アマウマ?」
・・・違うし。さらに酷くなってるし。
「もー、じゃあ名前で呼んでください。萌音でいいですよ」
この際初対面でも名前で呼んでくれても構わないからと言ってみたけれど。
「モエさん」
「モ・ネ!」
「オニ?」
どっちも駄目だった・・・。何故、オニ。オニは嫌だ。鬼と呼ばれなくちゃならないんだ・・・。嫌すぎる。
結局、モエで落ち着いた。
―――疲れた。
島になっている机の空いている椅子に各自座って、説明を受けることになった。三人の中で一番上の階級であるらしい女性が仕切ってくれている。さっきとは打って変わって言葉遣いも丁寧になってる。
珍しい服装をして現れた萌音と手にしていた缶に異様な位魔力が込められているを感知して、三人はすぐに萌音が異世界から来た人だと見抜いたと教えてくれた。
話が早くて助かった。じゃなきゃ今頃不審者として捕獲されてたかもねー。・・・ぶるぶるぶる。怖ーっ。
自分のせいじゃないのに犯罪者にされたらたまったもんじゃない。
それにしても異世界かー・・・。本当にあるんだねー、と逆に感心。
不思議なんだけど、夢っていう感じはしないんだよね。現実なんだろうなぁっていう感覚がする。疲れがひどすぎて神経がマヒしているのかもしれないけど。
ちょっと仕事でイラストが必要になって、持っていた小説を読み返ししたばかりで似たような話に進んでいるからか。普通ならとても信じられなくて暴れたり、泣き出したりしてもおかしくはない思うけれど。自分が鈍いだけ?
三人からの扱いは大丈夫そうだし。うん、ここは一先ず大人しくしておかないとね。早く元の世界へ返してもらわないと困るし。
明日は久々の休みだけれど、明後日からお店は通常営業に戻ることになっている。萌音が受けて作ることになっているオーダーリクエストのバースディケーキの予約が入っているから休めない。この為に昔の小説を引っ張りだして予習もばっちりなんだし。
萌音は手にしていたケーキボックスとリュックをデスクに置かせてもらい、動揺する姿を表に出すことなく木の椅子に静かに腰かけた。
「魔術研究所所長のジョセフィーヌ・バラデュールと言います。ここでは王室の方々の護衛や、日々新しい魔法の開発を主な仕事としています。または野菜や果物の品種改良といった生活に関することにも携わっています」
赤い髪が特徴な背の高い女性だ。ストレートでポニーテールをしている。目は茶色。きりっと涼やか。年齢はやっぱり萌音より少し上に見える。はっきりとした口調で人と話すことになれているように感じる。
うーん、頼れるお姉さまと言ったところかな。羨ましいくらいの美人さんですね。カトレアの花が似合いそう。特に赤。白衣の下に着ているシンプルデザインのブラウスの襟元はきっちりしているのに、実り豊かであろう膨らみが主張して女性らしさをこれでもかと強調している。
たよやかな仕草と控えめながらもポイントを押さえたメイクがよく似合ってる。腰の細さも相まって、同性である萌音から見てもドキッとさせられる。
「次長オーリック・デヴィッドです。今回はうちの馬鹿がご迷惑おかけして申し訳ありません。後できっちりと〆ておきますので」
自己紹介と共に深く頭を下げられた。かなり肩幅ががっしりとしている。背も一番高い。鍛えてますよっていうのがハイネックセーターの上から分かるくらい。短い髪は淡い茶色。丁寧にセットされている。目は何色だろう。頭を下げられているから見えないや。
・・・あ、濃い茶色だった。
お辞儀を終えて元に態勢に戻ってから見えた。随分と真っすぐに目線を合わせてくる人だ。目力が半端ない。体が大きいこともあってちょっと威圧感が怖いんですケド・・・。後で〆るって言ってたけど、どんなことするんだろう。想像すると壊そう・・・。でも、普段から真面目に働いているんだろうね、きっと。うん、これ以上考えるのはよそう。そのことに関しては関わらないほしが良さそうだと何かか告げる。
私には関係ない。うん、ない。よし。
「お願いします」
萌音は取り合えずこれだけの返事はしておいた。迷惑は掛かったのは事実なんだから、きっちりと代わりに仕事しておいてください。じちょーさん、頼みました。
萌音は体格の良い次長さんに丸投げした。
「・・・ジェラルド・ブルグスミューラーだ」
問題の人からは名前だけを発言した後、暫くまってもそれ以上発言するつもりはなさそうだった。罰か悪くて気まずいのか。
シャツの上にベストを重ね着し、細身な体躯をしていて、寝ぐせなのか濃紺の髪がところどころ跳ねている。少し長めの前髪が邪魔そうだ。顔の作りは良さそうなのに、見た目残念な印象しか受けない。萌音が一方的にこちらへ召喚したような相手に良い印象など持てないが。
まあ、一応三人からの自己紹介を受けて自分だけしないわけにもいかないので、ここはひとつ大人の対応をすることにする。言いたいことも、聞きたいこともあるけれど後回しだ。
「長沼萌音です。あーっと、モネ・ナガヌマです。名前がモネで、ナガヌマが氏名です」
一度普段どおりの氏名を言ってしまった後で、改めて氏名を言い直した。
「ナナユマさん?アカイマさん?」
発音がしにくいのか、所長のバラデュールさんは萌音の氏名を言ってくれたが全然違っている。
「ナ・ガ・ヌ・マ、です。」
「アマウマ?」
・・・違うし。さらに酷くなってるし。
「もー、じゃあ名前で呼んでください。萌音でいいですよ」
この際初対面でも名前で呼んでくれても構わないからと言ってみたけれど。
「モエさん」
「モ・ネ!」
「オニ?」
どっちも駄目だった・・・。何故、オニ。オニは嫌だ。鬼と呼ばれなくちゃならないんだ・・・。嫌すぎる。
結局、モエで落ち着いた。
―――疲れた。
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