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8/2は何の日?
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手芸店「たかやま」へは、朝の出勤は浩介の運転する車で送ってもらい、今日は帰り道の途中でケーキ店へ寄ってからゆっくり時間をかけて彩華は日傘片手に歩いて帰ってきた。
浩介が経営するCOFFEESHOP CLEMATIS(コーヒーショップ クレマチス)は、手芸店との距離は妊婦の足でも歩いて15分程の距離だけど、行きだけは妊娠が分かってから毎日車で送ってもらってくれている。帰りは義弟なったと橘(たちばな)巧(たくみ)さんや(妹の菜々の旦那さん、私より年上、浩介さんと同級生で、クレマチスのオーナーで、小説家だったり)、浩介さんの友人の秋葉(あきば)遼(りょう)一(いち)さん(同じく浩介さんの同級生だったり、イラストレーターだったり)の迎えがあることもしばしばなのだけれど。
今日の服装はゆったり目のブラウスに薄手のカーディガン、ウエストがゴムになっているガウチョパンツ。靴は暑くて大変だけど、スニーカーを履いている。風が割と吹いているとはいえ汗でシャツが背中に張り付いて不快指数は高い。
「あうー・・・、背中が痒い」
妊婦になっての今年の夏は自分の体温が平年より高くてあちこちあせもが出ていて痒い。しかも、手にはケーキ箱と通勤用のバッグに日傘。思ったところを掻けないというもどかしさ。
早く帰ろう。
むずむずを我慢しながら彩華は歩みを少しばかり早めた。
「はー、それにしても、夕べの約束が頭から離れなくて今日は仕事が散々だったなー」
今日の反省すべきことを声に出して独り言をつぶやいた。
注文数より多くキットを作るというミスをしたり、ビーズを数え終わってミニチャック付きポリ袋に入れようとして床に転がしてしまって探すのに苦労しただとか、普段ならこんなミスはしないのものだから同僚たちには体調が悪いのかと、とても心配をかけさせてしまった。
(ううう、浩介さんがあんなこと言うから)
つい仕事をしていても何度も約束が頭をよぎってしまい、一人であたふたしていたのだ。
自分から浩介のアレを口や手でしたこともない訳じゃないけれど。約束までさせられてしたことなど無かったから動揺して、悶々させられている。浩介とは結婚もしているというのに、未だに緊張を感じないではいられないのだった。
彩華は入り口の前で日傘を畳んでからドアを開けた。ドアにはOPENプレートがかかっていて文字の下に「猫がいます」とイラストレーターである秋葉さんの手書きイラストと共にくろも描かれている。
「ただいまー、くろちゃん」
気を取り直して日課となっているくろちゃんのお出迎えに労いの挨拶をしてから店へと入って行った。
クレマチスの外観はコンクリートの打ちっぱなしで、店内の壁は白を基調としていて、数個の観葉植物の他、コーヒー茶碗、小物も配置良く棚に飾られて居心地がよい。
彩華が入ってきた入り口の道路側に面している窓はかなり大きく取ってあり夕暮れのオレンジの光が入り込んで、床の木目を照らしている。
ドアから入ってすぐにレジがあり、左壁際にはキッチンがあり奥の方まで続いている。
レジの右手にはバイトをしている妹の菜々が作ったクッキー等の焼き菓子が並べられ、その横にはサンドイッチが陳列されている。
通路を挟んで右壁際は大きなガラス瓶が木で作られた棚に沢山並べられており、瓶の中にはコーヒーが入っている。瓶一つ一つには、コーヒーの種類・産地・特徴などが書 かれたラベルが付けられており分かりやすい。コーヒーをメインに販売しているが、簡単な食事も提供しているお店だ。
そのまま奥に進むと、カウンター席が4つとテーブルが3つで奥の壁に長椅子が置かれている。10人程の客席とこじんまりとしたお店の作り。奥正面の壁には外に繋がるドアがあり、小さな庭と3台分の駐車スペースが完備されている。そして、店の二階が自宅となっているのだった。
「お帰りなさい、彩華さん」
「彩ちゃん、お帰りー」
浩介さんと、従業員の前原みう(彩華の高校の同級生で料理担当)から挨拶を貰った。
「ただいま、浩介さん、みうちゃん」
昨日は買い物をしてきたから店は閉店していたが、今日はまだ営業時間内だ。
「彩華さん。コーヒー飲んでいきますか?」
普段なら二階の自宅へと向かう前にカウンターに座ってコーヒーを飲んでいくことが多いのだが、今日は浩介さんの誕生日。食後に買ってきたケーキを食べる予定なのでその時に飲みたい。
「後でこのケーキと一緒に飲みたいです」
彩華は手にしているケーキ箱を持ち上げてみせた。
「分かりました。後で、淹れますね」
浩介さんは甘さを含んだ目でこちらをじっと見つめている。期待に満ちた笑顔を浮かべて。
・・・だから私の事を意味ありげに見て微笑むのは止めてーっっ。もーっっっ。
赤くなった顔を見られたくなくて、彩華は逃げるようにして二階へと向かった。
ちょっとした反撃に、浩介さんの手巻き寿司にはワサビを沢山入れちゃおうかなと、なんてことをちらりと考えてしまったのだった。
浩介が経営するCOFFEESHOP CLEMATIS(コーヒーショップ クレマチス)は、手芸店との距離は妊婦の足でも歩いて15分程の距離だけど、行きだけは妊娠が分かってから毎日車で送ってもらってくれている。帰りは義弟なったと橘(たちばな)巧(たくみ)さんや(妹の菜々の旦那さん、私より年上、浩介さんと同級生で、クレマチスのオーナーで、小説家だったり)、浩介さんの友人の秋葉(あきば)遼(りょう)一(いち)さん(同じく浩介さんの同級生だったり、イラストレーターだったり)の迎えがあることもしばしばなのだけれど。
今日の服装はゆったり目のブラウスに薄手のカーディガン、ウエストがゴムになっているガウチョパンツ。靴は暑くて大変だけど、スニーカーを履いている。風が割と吹いているとはいえ汗でシャツが背中に張り付いて不快指数は高い。
「あうー・・・、背中が痒い」
妊婦になっての今年の夏は自分の体温が平年より高くてあちこちあせもが出ていて痒い。しかも、手にはケーキ箱と通勤用のバッグに日傘。思ったところを掻けないというもどかしさ。
早く帰ろう。
むずむずを我慢しながら彩華は歩みを少しばかり早めた。
「はー、それにしても、夕べの約束が頭から離れなくて今日は仕事が散々だったなー」
今日の反省すべきことを声に出して独り言をつぶやいた。
注文数より多くキットを作るというミスをしたり、ビーズを数え終わってミニチャック付きポリ袋に入れようとして床に転がしてしまって探すのに苦労しただとか、普段ならこんなミスはしないのものだから同僚たちには体調が悪いのかと、とても心配をかけさせてしまった。
(ううう、浩介さんがあんなこと言うから)
つい仕事をしていても何度も約束が頭をよぎってしまい、一人であたふたしていたのだ。
自分から浩介のアレを口や手でしたこともない訳じゃないけれど。約束までさせられてしたことなど無かったから動揺して、悶々させられている。浩介とは結婚もしているというのに、未だに緊張を感じないではいられないのだった。
彩華は入り口の前で日傘を畳んでからドアを開けた。ドアにはOPENプレートがかかっていて文字の下に「猫がいます」とイラストレーターである秋葉さんの手書きイラストと共にくろも描かれている。
「ただいまー、くろちゃん」
気を取り直して日課となっているくろちゃんのお出迎えに労いの挨拶をしてから店へと入って行った。
クレマチスの外観はコンクリートの打ちっぱなしで、店内の壁は白を基調としていて、数個の観葉植物の他、コーヒー茶碗、小物も配置良く棚に飾られて居心地がよい。
彩華が入ってきた入り口の道路側に面している窓はかなり大きく取ってあり夕暮れのオレンジの光が入り込んで、床の木目を照らしている。
ドアから入ってすぐにレジがあり、左壁際にはキッチンがあり奥の方まで続いている。
レジの右手にはバイトをしている妹の菜々が作ったクッキー等の焼き菓子が並べられ、その横にはサンドイッチが陳列されている。
通路を挟んで右壁際は大きなガラス瓶が木で作られた棚に沢山並べられており、瓶の中にはコーヒーが入っている。瓶一つ一つには、コーヒーの種類・産地・特徴などが書 かれたラベルが付けられており分かりやすい。コーヒーをメインに販売しているが、簡単な食事も提供しているお店だ。
そのまま奥に進むと、カウンター席が4つとテーブルが3つで奥の壁に長椅子が置かれている。10人程の客席とこじんまりとしたお店の作り。奥正面の壁には外に繋がるドアがあり、小さな庭と3台分の駐車スペースが完備されている。そして、店の二階が自宅となっているのだった。
「お帰りなさい、彩華さん」
「彩ちゃん、お帰りー」
浩介さんと、従業員の前原みう(彩華の高校の同級生で料理担当)から挨拶を貰った。
「ただいま、浩介さん、みうちゃん」
昨日は買い物をしてきたから店は閉店していたが、今日はまだ営業時間内だ。
「彩華さん。コーヒー飲んでいきますか?」
普段なら二階の自宅へと向かう前にカウンターに座ってコーヒーを飲んでいくことが多いのだが、今日は浩介さんの誕生日。食後に買ってきたケーキを食べる予定なのでその時に飲みたい。
「後でこのケーキと一緒に飲みたいです」
彩華は手にしているケーキ箱を持ち上げてみせた。
「分かりました。後で、淹れますね」
浩介さんは甘さを含んだ目でこちらをじっと見つめている。期待に満ちた笑顔を浮かべて。
・・・だから私の事を意味ありげに見て微笑むのは止めてーっっ。もーっっっ。
赤くなった顔を見られたくなくて、彩華は逃げるようにして二階へと向かった。
ちょっとした反撃に、浩介さんの手巻き寿司にはワサビを沢山入れちゃおうかなと、なんてことをちらりと考えてしまったのだった。
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