相手に望む3つの条件

清杉悠樹

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27 けじめの返事

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「さあ、どうぞ」
 寺井さんのアパートへと到着してしまった。タクシーの中でもずっと緊張しっぱなしだった。お陰で流れていく景色も、会話も全然覚えていない。
 降りて見上げると、まだ新しく見え、随分と階数があるアパートだった。
 私が借りているアパートよりずっと家賃高いんだろうなぁ。
 そう思いながらオートロット式の入り口で暗証番号を入力する剛さんをぼんやりと眺めていた。
 エレベーターで12階へ着いた。ドアの前に立つ寺井さんが鍵を解除しドアを開けてくれたかと思うと、背中に添えられた手が優しく誘導してくれ私を先に入るよう促してくれた。
「お邪魔します」
 まずは挨拶をして、おずおずと進んだ。
 玄関も、その先に見えるドアまでの距離と廊下の長さからして、自分の借りているアパートの部屋の何倍の広さなのかと驚いた。
 うううー、緊張が半端ない~。
 後ろで聞こえたドアの締まる音に、どきりとさせられた。

 夕べは自分で寺井さんの家に行くと決めて返事をしたくせに、酔っぱらって寝てしまい結局自分の家に寝てしまっていたことが朝になって判明した。しかも目覚めてみれば狭いベッドに寺井さんと一緒に寝ていたという驚きのシチュエーション。
 悲鳴を上げようとしたところをキスで塞がれ、息も絶え絶えな深いキスをされるわ、下着姿で抱き合って寝ているわ、心臓がいつ壊れてもおかしくないと本気で思った。
 ううん、今もそう。
 男の人の部屋になんて初めてお邪魔する。しかもお泊りが前提。数日の着替えと必要な化粧品などを持ってやってきたのだ。
 抱きたい宣言をされて。

 そりゃあ24才にもなって、今朝初めてキスしたような女ですよ?まだまだ子供みたいな私だけど、キス以上だって興味がない訳じゃない。相手は付き合いたてとはいえ、好きになった人なんだしっ。

 自分の気持ちに気づいたら、好きになった小さなときめきは幾つもあったことに気づいた。

 デートの時、ずっと私の事をエスコートしてくれたことや、毎日のメール、簡単な食事にも美味しいって喜んでくれたことや、足をしびれさせたりしてちょっと子供っぽい所にも。
 そして時々私が困る程に剛さんがストレートな気持ちを言ってくれるところにも。

 煙草を吸わない人で、私より断然背が高くて(しかも仕事が出来て、顔もいい)、浮気しないと私に言ってくれた人。
 彼氏にしたいならこんな人という条件が、変わっている私の事を笑わないばかりか、恋人になって欲しいと言ってくれた人。

 剛さんの事が好き。
 初めてのデートをしてから、急速に好きの気持ちが増えていった。

 でも、まだ私からは『好き』と伝えていない。言わなくちゃと思っているんだけれど、どのタイミングで言えばいいのか迷っているうちにここまで来てしまった。
 今なら二人っきり。言うなら今だよね?

 靴を脱ぐ前に後ろを振り返って、寺井さんと向き合った。
「あのっ、私っ、私・・・その・・・」
 もじもじして、言葉に詰まってしまった。気持ちばかりが焦る。
「やっぱり家に連れてきたのは強引過ぎましたね。そんなに怖気させるつもりは無かったのです。私が桃子さんを抱きたいなんて言ったせいですね。済みません。もっとデートを重ねてから言うべきでした」
 早く気持ちを伝えなきゃと必死になっていると、剛さんには私が思い詰めたように見えているなんて思わなかった。
 やっぱり帰りたいと言いだそうとしていると思われたらしい。
「えっ!?違いますっ、違いますっ、そうじゃなくて、ですね。えっと、剛さんに自分の気持ちを伝えておきたいので言わせてください」
 一度目を閉じて深く息を吸い込んだ。ゆっくりと吐き出しながら目を開け、剛さんを見つめた。これから何を言われるのかと不安げな顔をしている。

「私は、その、剛さんの、事が、好きです。だから私と付き合って貰えませんかっ」
 最初は途切れ途切れに言っていたけれど、途中から恥ずかしくなって視線を外し、早口で言い切ってしまった。
 剛さんからは好きだとは言われていたけれど、やっぱり自分の気持ちを伝えるという事はとても勇気がいるものだと改めて思い知った。
 どんな顔をしているのか確かめようとして、視線を戻す前に目の前が真っ暗になった。
 何っ!?と言う間もなく、剛さんに強く抱きしめられていた。
「ほんとに貴方ときたら。どれだけ私を煽るつもりですか」
 息が感じられる程に耳元で囁かれた。背中に感じる腕の力が強まった。私もおずおずと背中に手を回した。
「煽ってなんかいないです。ちゃんとした返事を言いたかっただけです。約束しましたよね?相手もの事をもっと知ってから返事しますって。だからこれが答えです」
 多少息苦しさを感じながらも言い返した。
 全部の事を知った訳でもないどころか、まだまだ知らないことの方が圧倒的に多いと思う。それでも好きという気持ちがこんなにも大きく育ってしまったのだから、そのことを剛さんに伝えたかった。
「だからそう言う事を煽ってるっていうんです」
「ええ?」
 説明されてもさっぱり分からない。約束を果たしただけなのに。

「まだ説明が必要なら後でじっくりと教えてあげます。今は―――貴方が欲しい」
 今度は耳朶に唇の感触を感じながら、甘く熱望を囁かれた。

***

「んんんっ」
 剛さんの両手で、私は胸を形が変わる程に揉まれ、指でこりこりと扱かれた。

 重なり合った肌が熱い。

 室内はカーテンを引かれて暗くしてあるとはいえ、昼中のこの時間帯では室内の家具も、壁の模様も判別できる明るさだ。2人は広いベッドに一糸纏わぬ姿になっている。上気している肌の色も、表情も隠せない。
 最初こそシーツで必死に隠していたのに、長いキスと、胸の愛撫を受け、今はそんなことは忘れてしまい、剛さんの愛情を受け止めることに必死になっていた。
「白くて、滑らかですね、桃子さんの肌は」
「そんなこと、ない
 男らしい大きな手のひら全体を使い、私の右内腿を下から上へと何度も往復しつつ、反対の左足の腿を舌先でなぞられ、吸い付かれた。音を立てて痕を残されるたびに、びくんと腰が跳ねた。
「あっ」
 最初に吸われた胸元の箇所は痛みを感じていた筈なのに、いくつも付けられると慣れて来たのか、今は痛みを感じるだけではなく気持ちいいと感じ始めている。
「赤がとても良く映えます」
 胸にも沢山の同じものを付けられている。一体どれだけ付けられるのだろうか。
 徐々に際どい箇所へと移動しながら痕を付けられた。その度に甘い声が寝室に響いた。
(やだ、もう恥ずかしいのにっ)
 勝手に出てしまう声を止めることは出来なかった。

「・・・ああ、溢れてきましたね」
 剛さんの体を足の間に挟んだままの自分の足は、ぐいと可能な限り開かれた。
 自分でも体の中から何かが溢れて出てきているのは分かっていたが、いきなりの行動に止める暇も無かった。もはや体中の力が入らない程の快楽をずっと与えられ続けられている為に、両足も恥ずかしくて閉じたくても閉じる事さえ出来なくなっていたのもある。
「だ、駄目っ。見ちゃ駄目っ」
 薄明りの中でも、きっと全てが見えているはず。
 私は剛さんの頭を両手で掴み阻止しようとしたが、それより先に剛さんの舌先は左腿から蜜がこぼれ出る中心を移動し、容赦なく秘部を舐めあげられた。
「ああっ」
 生暖かい舌の感触に背中が仰け反り、足先はシーツに線を描いた。
 胸を揉まれたり、摘まれたりした以上の強すぎる快楽に、思わず剛さんの髪をぎゅっと掴んでしまった。
 舐めあげられ離れていくかと思った剛さんの舌は、そこから離れるどころか何度も何度も同じ個所を往復した。
「あっ、ああっ、あんっ」
 自分のものだとは信じられないくらいに甘い声は段々と大きくなり、腰が揺れているのも気づかないまま止められなくなった。
 腿は手で撫でられ、舌で蜜を吸われ、更に指で花芽にも愛撫が加わった。

「やあっ、剛さっ、それ、だめぇっ、ああああっ」
 あっという間に絶頂にまで押し上げられた。
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