猫が繋ぐ縁

清杉悠樹

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もう一度 2

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 もう一度 2

 付き合って一週間もしないうちに、二度もプロポーズを受ける事になるなんて。

 最初は返事を待ってもらうことにしてもらった。
 だって、彼氏が居た事がないんだよ!?それなのに直ぐにOKを出せるわけ無いでしょう!?
 だから一ケ月間一緒に生活すればいろいろ相手の事も分かってくるかなーなんて簡単に考えていた。もちろんまだまだ現実味が無かったのもあるし。
 一緒に暮らしてみてたった数日でも分かったのは、浩介さんと一緒に行くスーパーへの買いだしも、料理を作るのも普段の何気ない事が2人だととても楽しいと言う事。そしてなにより、浩介さんに大事にされているってことが疑うことなく信じられて傍に居る事が安心できるいうことも。
 もし仮に、結婚したとしても家事も分担出来るのも予想出来ちゃうし、水族館でのやり取りで親子そろってまた来たいと言った事から、多分子供も好きなんだと思う。
 もちろん浩介さんの事は大好きだし、このままずっっと一緒に過ごせていけたならって夢を見たのも確かにある。
 だから今日の二度目のプロポーズは、前回とは違い戸惑いもなくて嬉しさしかなかった。
 それって私は受けたいと思ってるってことだよね?
 他の人からは一生のそんな大事なことを直ぐに決めずにもっと時間を掛けなさいって言われそうだけど。流されるなとも言われそうだけど。

 私も浩介さんと一緒に居たい。だから・・・

「・・・はい」
 プロポーズを受け止めた。
 一度は治まった筈の涙が、今度は嬉し涙となって新たにあふれ出る。が、構わずに顔を上げて、私も浩介さんと同じ気持ちなんだとしっかりと伝えられるように心を込めて。
「はい、お受けします」
 笑顔とともにそう言った。
 後は、ずっと抱きしめられ幸せな気持ちのまま夜を過ごした。
 
 プロポーズを受けた次の日には私が仕事を終えて帰宅すると浩介さんのご両親と初顔合わせに行ったり、更に次の日には指輪を買ってもらったり、会社にも報告して皆から(営業の桑野さん以外は)お祝いの言葉を一杯貰って、クレマチスの店では妹からはもちろん、景山さんと秋庭さんにも報告した後はお祝いの言葉を貰ったりといろいろ、本当にいろいろとあって驚きの連続だった。
 中でも一番驚いたのは浩介さんのご両親に挨拶へ行った時のこと。
 浩介さんが今まで独身でいたのは景山さんと付き合っていると思っていたかららしい。
 サラリーマンを辞め、今の仕事に就いてからというもの、大学から友達付き合いをしていたのは知っていたが、景山さんの敷地で店を出すわ、挙句住む所まで借りるわで、直接息子に確かめた事はないがホモだと思い、1人息子は結婚はしない、孫の顔を見る事は出来ないと諦めていたらしい。
 そこへ私が勤めている『たかやま』の社長で浩介さんの叔父さんから、私が付き合う事になったのを聞き、小躍りせんばかりに喜んだらしい。
 初顔合わせの時にお義母さんがそう告げられた時には、浩介さんと一緒に言葉が出ない程に驚愕した。
 だから、社長のお墨付きの私は、逆に感謝されまくって、どうしていいのか途方に暮れ、助けを求めて横を見ると浩介さんが頭を抱えて唸っているという珍しい姿を見れた。

 次の週末は私の両親に報告する予定になっている。
 電話で一応それらしい報告はお母さんにしたのだけれど、こうなる事をある程度予想していたらしくそれはもう喜んでくれた。・・・お父さんにはまだ直接は言いにくくて言ってない。照れくさいのが理由なんだけど。
 お母さんが言うには、寂しそうにはしているけれど一応祝福してくれているらしい。本ばっかり読んでいた私の将来を心配していたらしいから。
 実際挨拶するだけだった予定が、浩介さんと話し合う内に、婚約の両家の顔合わせ、式を何時上げるのかという具体的な話まで進んでしまい、あまりのスピードについて行くのがやっという有様だった。
 正式な日取りは決まって無いけれども、両家の顔合わせは九月頃。式は来年の私の誕生日が5/3日曜日でしかも大安なのでその日に決定。ゴールデンウィークなので遠方からも来やすいだろうと言う事になり、式場を早めに探す事になった。

 お兄ちゃんには浩介さんと一緒にアパートへ行って直接報告済み。
 まぁ、頑張れって応援してくれた。
 その序に真央さんと正式に付き合う事になったからと言われた。会社で真央さんからは食事に行く事になった事だけしか聞いてなかったからちょっとだけ驚いた。 私がいろいろとバタバタしてたから言いにくかったのかもしれない。明日にでも聞いたら教えてくれるかな?

 そんな感じで、橘家の挨拶もスムーズに無事に終え(浩介さんの娘さんを下さいの台詞は一生忘れる事が無いと思います!!スーツ姿で凛々しくてカッコ良かった!!)、お盆には里帰りをする予定が元々あったんだけど、家族とは別行動で浩介さんと2人で報告がてら挨拶にも行った。
 もちろんお爺ちゃんもお婆ちゃんもとても喜んでくれて、帰りの車の中は家庭菜園で作った野菜と果物を沢山貰ってもの凄―――く一杯になったのだった。

 この合間には、婚約のお祝いを兼ねて景山さんの自宅屋上で私達の他、妹の菜々、秋庭さん、編集者の桜野さんも一緒になって遠く離れてはいたが花火大会をビル街と一緒に眺めつつバーベキューをしたり、その時に桜野さんから映画の試写会のチケットを貰って後日見に行ったりもした。
 本当はクラゲが増える前に早めに海も行きたいですって事を浩介さんに言ったんだけれど、両家に報告に行く予定が入ったので結局今年は行けない事になったと言うか、駄目って言われたのは今も納得していない。
 理由を聞いたら、水着姿を自分以外に見せたくないからなんて、どんな理由ですか。
 妹より胸も小さくて、そんなにメリハリがあるボディじゃない。水着だってビキニとかは着る予定全くないのに。そんな理由?・・・変ですよ。
 そんな愚痴をお肉を頬張っている菜々言ったら、もの凄い爆笑して暫く止まらなかった。横に居た景山さんは浩介さんを生温かい目で見てから、おもむろにスマホで誰かに連絡を取ると海沿いにある別荘(プール付き)を借りれたから、この六人で遊びに行く?って言ってくれてお盆休み後半に行く事が決定した。
 相変わらず、景山さんは謎の人だと再認識した。
 実は菜々は景山さんの事を好きになったらしく、これを聞いて一番テンションが上がっていた。自分の仕事をパソコンでやりつつ、解らない課題を解るまで丁寧に教えてくれる所や、実は甘いものが大好きで勉強の合間にバイトの合間に菜々が毎日違うスイーツを作っては食べる事が日課にとなっており、毎日が楽しくて仕方ないらしい。だから店が休みの日曜は逆に寂しいんだって。
 毎日のそのスイーツも八月限定の日替わりスイーツとして店内で食べれる事になっていて、店のツイッターやブログで紹介したりして割と評判がいいらしい。
 店のクッキーも今では菜々が作る事になっていて、今までは普通の丸い形だったものを今では猫の形にし、ラッピングにはくろちゃんの似顔絵とハートが描かれていて、お試し用のドリップパックと一緒に販売を開始した。
 これが恋が叶うアイテムとしてかなり売り上げが伸びることになるのはもう少し後の話。

 こんな感じでルームシェアの半月は予想以上に忙しくも充実した日々を送ったのです。
 ただ1つの出来事を除いては。
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