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水族館で初デート 2
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水族館で初デート 2
パンフレットを片手に向かいながら水槽に映る自分と浩介さんの姿がちらりと目に入る。
色鮮やかな熱帯魚に目を向けている浩介さんの横顔に胸がきゅんとなる。
背が高くて細身だけど大人の男らしくそれなりに筋肉が付いている体つきで、着ているオリーブ色のシャツとブラックジーンズがまた良く似合ってる。右肩にはキャメル色オイルヌメ革で作られた小ぶりリュック。切れ長の二重と涼しげな目元が優しげに細められ小さな魚に向けられているその姿は、文句なしにカッコいい。
そう思うのは私だけじゃなくて、周りの女性の目にも止ま程で、ちらちらと通りすがりに見ている人をさっきから何度も目にする。彼氏と来ている女性も含め、中には子供連れのお母さんまでいた。
そりゃあね、カッコいいしつい目で追ってしまうのも分からなくはないんだけど、やっぱりそんなの私としては嬉しくない。内心もやもやした気持ちを抱えながら、手を繋いでいる浩介さんの腕にさらに寄り添う。
自分の腕に頭を寄せた私を見て浩介さんはにこっと笑いかけてくれた後、手をいわゆるカップル繋ぎに変えると、しっかりと繋ぎ満足そうに微笑んだ。
その笑顔にもう一度胸がきゅーんとして、さっきまでのもやもやなんてどこかへ行ってしまった。
(浩介さんの不意打ちの笑顔の破壊力って・・・!!)
彩華は熱くなる頬を見られたく無くて横を向いて歩き続けた。そんな様子を見て更に浩介が蕩けそうな笑顔をしているのを知らないままに。
体験コーナーは、予想予想通り子供に大人気で、沢山の子供達と親で溢れ返っていた。
背の低い彩華は子供達の後ろから背伸びして眺めるだけで、ナマコやヒトデには触れそうも無かったので早々に諦めた。まあ、サザエなら兎も角、ナマコをあまり素手で積極的に触たいと思えなかったと言うのも有ったのだけれど。
でも、すぐ近くのドクターフィッシュのコーナーは丁度いいタイミングで2人が並んでも大丈夫なスペースが空き、直ぐにドクターフィッシュを触る事が出来た。
コイ科のガラ・ルファというのが正式名称で、ガラ・ルファの習性で人の角質を食べてもらう事によってセラピー効果が得られるらしい。小さな黒っぽい色をした魚が浅い水槽に入れられ、お客さん数人が手首まで水の中に入れている。
まず浩介さんからチャレンジ。右手をそっと入れると数匹の魚が他の人の手から移動してつんつんと手の甲を啄ばむ様子が何だか可愛い。
「なんだかくすぐったいですね」
そう言うと早々に手を水から引き上げてしまった。
「えっ、もう終わっちゃうんですか?じゃあ今度は私の番ですねー」
初めてドクターフィッシュを体験できるのでわくわくしていた。思いきって両手を入れてみると、早速魚が寄ってきてつんつんと手の角質を食べてくれた。
「きゃーっ、くすぐったいっ」
全然痛く無んだけど、あちこち啄ばまれるのが予想以上にくすぐったくて浩介さんと同様に手は直ぐに引き上げてしまった。
「長い時間は無理ですっ」
古い角質を一杯食べてもらえば肌もつるつるするかなーなんて思ってたのに。残念。
「じゃあ一緒に手を洗ってきましょうか」
直ぐ横にはちゃんと手を洗えるようになっていた。
ドクターフィッシュの後は、丁度イルカショーが始まると言う館内アナウンスが放送されたのを聞き、次の目的地はそこに決定した。
少し遠い場所から向かったせいもあって、ほぼ満員となりつつある客席の一番後ろが数席あいており、最後尾からの見学となった。
「イルカショーなんて小学生以来です」
家族でやっぱり同じように夏休みを利用して連れて来てもらった記憶がある。その時はイルカのジャンプに兄妹三人とも大はしゃぎしていたのを覚えてる。
「俺もそうですね。あ、始まりましたね」
明るく元気なお姉さんの挨拶が始まったかと思うと、水面からいきなり二匹のイルカが同時にジャンプして客席からは歓声が広がった。
その後は輪くぐり、ボール運び、ステージへ上がったイルカをお客さんの中から2人選ばれ直接触れるというものまであったりと見てるだけだったがとても楽しめた。
「凄かったですねー、あのイルカのジャンプ。前の席の人達なんて水しぶきで濡れてましたね」
一番前じゃなくて良かったかもって思えたりなんかして。
「でも子供達は濡れても嬉しそうでしたね」
「ほんとに」
くすくす笑いながら、次はどこにしようか決めていた。
イルカショーが終わった直後で客席を移動する人が多いので、空くまでパンフレットを一緒に眺めているのだ。
「後見たいのは・・・クラゲとペンギンが見たいです」
「じゃあ先にペンギンを見てから、クラゲを見に行きましょうか」
パンフレットを見ると現在地の直ぐ傍にペンギンコーナーがある。クラゲは・・・ちょっと離れてるみたい。
ペンギンのとてとて歩く可愛い姿を見て、クラゲのゆったりとした動きを堪能すると館内の主な所は大体見て回ったと浩介さんから聞いて驚いた。
「えっ、全部見て回ったんですか!?本当に!?」
途中、順路通りに回らずショーなどを見に行ったので、彩華は全部を見て回ったと聞かされて驚いたのだ。
手元のパンフレットを見ても、やっぱり分からなかった。曲線が多い建物だから全然どこをどう歩いたのかが分からない。
「大丈夫。ちゃんと一回りしてますよ」
「凄―い。私1人だったら絶対に無理。同じところを3周はぐるぐるしてると思います」
「はぐれたら大変なので、絶対俺からはぐれないでくださいね。・・・離しませんけど」
最後の一言だけはちょっと小声で、耳元で囁かれた。
低いけど、甘さを含ませた艶やかなその声に、今日だけで何度赤くしたか分からない頬をまた真っ赤にするのだった。
パンフレットを片手に向かいながら水槽に映る自分と浩介さんの姿がちらりと目に入る。
色鮮やかな熱帯魚に目を向けている浩介さんの横顔に胸がきゅんとなる。
背が高くて細身だけど大人の男らしくそれなりに筋肉が付いている体つきで、着ているオリーブ色のシャツとブラックジーンズがまた良く似合ってる。右肩にはキャメル色オイルヌメ革で作られた小ぶりリュック。切れ長の二重と涼しげな目元が優しげに細められ小さな魚に向けられているその姿は、文句なしにカッコいい。
そう思うのは私だけじゃなくて、周りの女性の目にも止ま程で、ちらちらと通りすがりに見ている人をさっきから何度も目にする。彼氏と来ている女性も含め、中には子供連れのお母さんまでいた。
そりゃあね、カッコいいしつい目で追ってしまうのも分からなくはないんだけど、やっぱりそんなの私としては嬉しくない。内心もやもやした気持ちを抱えながら、手を繋いでいる浩介さんの腕にさらに寄り添う。
自分の腕に頭を寄せた私を見て浩介さんはにこっと笑いかけてくれた後、手をいわゆるカップル繋ぎに変えると、しっかりと繋ぎ満足そうに微笑んだ。
その笑顔にもう一度胸がきゅーんとして、さっきまでのもやもやなんてどこかへ行ってしまった。
(浩介さんの不意打ちの笑顔の破壊力って・・・!!)
彩華は熱くなる頬を見られたく無くて横を向いて歩き続けた。そんな様子を見て更に浩介が蕩けそうな笑顔をしているのを知らないままに。
体験コーナーは、予想予想通り子供に大人気で、沢山の子供達と親で溢れ返っていた。
背の低い彩華は子供達の後ろから背伸びして眺めるだけで、ナマコやヒトデには触れそうも無かったので早々に諦めた。まあ、サザエなら兎も角、ナマコをあまり素手で積極的に触たいと思えなかったと言うのも有ったのだけれど。
でも、すぐ近くのドクターフィッシュのコーナーは丁度いいタイミングで2人が並んでも大丈夫なスペースが空き、直ぐにドクターフィッシュを触る事が出来た。
コイ科のガラ・ルファというのが正式名称で、ガラ・ルファの習性で人の角質を食べてもらう事によってセラピー効果が得られるらしい。小さな黒っぽい色をした魚が浅い水槽に入れられ、お客さん数人が手首まで水の中に入れている。
まず浩介さんからチャレンジ。右手をそっと入れると数匹の魚が他の人の手から移動してつんつんと手の甲を啄ばむ様子が何だか可愛い。
「なんだかくすぐったいですね」
そう言うと早々に手を水から引き上げてしまった。
「えっ、もう終わっちゃうんですか?じゃあ今度は私の番ですねー」
初めてドクターフィッシュを体験できるのでわくわくしていた。思いきって両手を入れてみると、早速魚が寄ってきてつんつんと手の角質を食べてくれた。
「きゃーっ、くすぐったいっ」
全然痛く無んだけど、あちこち啄ばまれるのが予想以上にくすぐったくて浩介さんと同様に手は直ぐに引き上げてしまった。
「長い時間は無理ですっ」
古い角質を一杯食べてもらえば肌もつるつるするかなーなんて思ってたのに。残念。
「じゃあ一緒に手を洗ってきましょうか」
直ぐ横にはちゃんと手を洗えるようになっていた。
ドクターフィッシュの後は、丁度イルカショーが始まると言う館内アナウンスが放送されたのを聞き、次の目的地はそこに決定した。
少し遠い場所から向かったせいもあって、ほぼ満員となりつつある客席の一番後ろが数席あいており、最後尾からの見学となった。
「イルカショーなんて小学生以来です」
家族でやっぱり同じように夏休みを利用して連れて来てもらった記憶がある。その時はイルカのジャンプに兄妹三人とも大はしゃぎしていたのを覚えてる。
「俺もそうですね。あ、始まりましたね」
明るく元気なお姉さんの挨拶が始まったかと思うと、水面からいきなり二匹のイルカが同時にジャンプして客席からは歓声が広がった。
その後は輪くぐり、ボール運び、ステージへ上がったイルカをお客さんの中から2人選ばれ直接触れるというものまであったりと見てるだけだったがとても楽しめた。
「凄かったですねー、あのイルカのジャンプ。前の席の人達なんて水しぶきで濡れてましたね」
一番前じゃなくて良かったかもって思えたりなんかして。
「でも子供達は濡れても嬉しそうでしたね」
「ほんとに」
くすくす笑いながら、次はどこにしようか決めていた。
イルカショーが終わった直後で客席を移動する人が多いので、空くまでパンフレットを一緒に眺めているのだ。
「後見たいのは・・・クラゲとペンギンが見たいです」
「じゃあ先にペンギンを見てから、クラゲを見に行きましょうか」
パンフレットを見ると現在地の直ぐ傍にペンギンコーナーがある。クラゲは・・・ちょっと離れてるみたい。
ペンギンのとてとて歩く可愛い姿を見て、クラゲのゆったりとした動きを堪能すると館内の主な所は大体見て回ったと浩介さんから聞いて驚いた。
「えっ、全部見て回ったんですか!?本当に!?」
途中、順路通りに回らずショーなどを見に行ったので、彩華は全部を見て回ったと聞かされて驚いたのだ。
手元のパンフレットを見ても、やっぱり分からなかった。曲線が多い建物だから全然どこをどう歩いたのかが分からない。
「大丈夫。ちゃんと一回りしてますよ」
「凄―い。私1人だったら絶対に無理。同じところを3周はぐるぐるしてると思います」
「はぐれたら大変なので、絶対俺からはぐれないでくださいね。・・・離しませんけど」
最後の一言だけはちょっと小声で、耳元で囁かれた。
低いけど、甘さを含ませた艶やかなその声に、今日だけで何度赤くしたか分からない頬をまた真っ赤にするのだった。
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