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―第二百三十話― 刃の色
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短剣を腰に差し、魔力を整える。
「『回復』」
ふわっと軽く風が舞い、俺とクラッスラの傷がみるみるうちに消えていった。
「……あんた、能力使えば一瞬だったんじゃないの?」
「さあ、どうだか。というか、普通の戦闘でもこういう小手調べやっちゃうタイプなんだよ」
「……勝つ自信があるからか?」
「いいや、確実に勝つためだ」
相手がどの程度まで力を出せるのかを知らないと、うっかりやられる、なんてこともあるかもしれない。
こんな俺だが、意外と慎重派なんだ。
「で、どうだった、サントリナ?」
「うん、どっちも素晴らしかったよ。クラッスラの槍捌きも、それを受けるリアトリスの動きも。素晴らしかった」
「ありがとうございます……! サントリナさんからそう言ってもらえるなんて……!!」
「サントリナよりも、槍の技術高いんじゃねえの?」
「……冗談抜きで、その可能性ある。俺の全盛期並みではあるよ」
「ええっ!? まじすか!?」
「うん、マジ」
こいつ、そもそもが長剣を好んで使ってるからな。
「あ、あのー、クラッスラちゃん……?」
「ん? どうかした、ジャスミン?」
「リアが勝ったってことは、冒険に行くんだよね……?」
「「あ」」
完全に忘れてた。
◆
家に帰り、自分の短剣を見つめる。
さっきのも悪くはなかったが、やはり自分のが一番しっくりくる。
……クラッスラとの冒険は明日以降ってことになったし、一応手入れしておくか。
普段から磨いてるから、そこまですることないけど。
「……うん、こんなもんかな」
刃毀れもないし、布で磨いたから刃の側面もピッカピカだ。
……ん?
じっくり見てみると、刃が何だか薄赤色になってきている気がする。
前は綺麗な鋼色だったと思うんだが……。
……?
「まあ、気にしてもしょうがないか」
鞘に納め直し、テーブルの上に置く。
前のと同じで、魔力を帯びたら変色するタイプの奴って言ってたし、俺の魔力が定着してそうなったのかもしれないしな。
「……飯食お」
サントリナから土産に果物もらったから、デザートだけはしっかりある。
となると、後はメインディッシュだが……。
……面倒だし、近くの居酒屋で済ますか。
今から行けば、一人席も取れるだろう。
飲みつぶれることを予測し、多めの金を詰めた財布を持ち、俺は家を出た。
◆
目の前の酒をチビチビと飲みながら、ちらりと視線を横にやる。
そこには、一人の華奢な男性と、三人の屈強な大男がいる。
ま、早い話、華奢な方が絡まれてるわけだ。
話──もとい脅しの内容は、こっちを睨んでただろ、だのとありきたりな奴だ。
……はぁ、だっる。
「なあ、あんたら。その辺にしといてやれ」
「んだ、てめえ? 文句あんのか?」
「お前みたいなのがいると、こっちの酒がまずくなるんだよ。やるなら、どっかの路地裏でコソコソとやれ」
まあ、それもそれで問題だがな。
「うるっせえなあ!! 表出ろや!!」
「いいぜ。やってやろうじゃねえか!!」
何か言いたげな冒険者仲間たちに視線を送り、それを制止する。
見たところ、最近この街に来たばかりか、観光で来たような奴っぽいし、俺の事を知らないのだろう。
こっちも酔ってんだ、派手にやってやるよ。
「『回復』」
ふわっと軽く風が舞い、俺とクラッスラの傷がみるみるうちに消えていった。
「……あんた、能力使えば一瞬だったんじゃないの?」
「さあ、どうだか。というか、普通の戦闘でもこういう小手調べやっちゃうタイプなんだよ」
「……勝つ自信があるからか?」
「いいや、確実に勝つためだ」
相手がどの程度まで力を出せるのかを知らないと、うっかりやられる、なんてこともあるかもしれない。
こんな俺だが、意外と慎重派なんだ。
「で、どうだった、サントリナ?」
「うん、どっちも素晴らしかったよ。クラッスラの槍捌きも、それを受けるリアトリスの動きも。素晴らしかった」
「ありがとうございます……! サントリナさんからそう言ってもらえるなんて……!!」
「サントリナよりも、槍の技術高いんじゃねえの?」
「……冗談抜きで、その可能性ある。俺の全盛期並みではあるよ」
「ええっ!? まじすか!?」
「うん、マジ」
こいつ、そもそもが長剣を好んで使ってるからな。
「あ、あのー、クラッスラちゃん……?」
「ん? どうかした、ジャスミン?」
「リアが勝ったってことは、冒険に行くんだよね……?」
「「あ」」
完全に忘れてた。
◆
家に帰り、自分の短剣を見つめる。
さっきのも悪くはなかったが、やはり自分のが一番しっくりくる。
……クラッスラとの冒険は明日以降ってことになったし、一応手入れしておくか。
普段から磨いてるから、そこまですることないけど。
「……うん、こんなもんかな」
刃毀れもないし、布で磨いたから刃の側面もピッカピカだ。
……ん?
じっくり見てみると、刃が何だか薄赤色になってきている気がする。
前は綺麗な鋼色だったと思うんだが……。
……?
「まあ、気にしてもしょうがないか」
鞘に納め直し、テーブルの上に置く。
前のと同じで、魔力を帯びたら変色するタイプの奴って言ってたし、俺の魔力が定着してそうなったのかもしれないしな。
「……飯食お」
サントリナから土産に果物もらったから、デザートだけはしっかりある。
となると、後はメインディッシュだが……。
……面倒だし、近くの居酒屋で済ますか。
今から行けば、一人席も取れるだろう。
飲みつぶれることを予測し、多めの金を詰めた財布を持ち、俺は家を出た。
◆
目の前の酒をチビチビと飲みながら、ちらりと視線を横にやる。
そこには、一人の華奢な男性と、三人の屈強な大男がいる。
ま、早い話、華奢な方が絡まれてるわけだ。
話──もとい脅しの内容は、こっちを睨んでただろ、だのとありきたりな奴だ。
……はぁ、だっる。
「なあ、あんたら。その辺にしといてやれ」
「んだ、てめえ? 文句あんのか?」
「お前みたいなのがいると、こっちの酒がまずくなるんだよ。やるなら、どっかの路地裏でコソコソとやれ」
まあ、それもそれで問題だがな。
「うるっせえなあ!! 表出ろや!!」
「いいぜ。やってやろうじゃねえか!!」
何か言いたげな冒険者仲間たちに視線を送り、それを制止する。
見たところ、最近この街に来たばかりか、観光で来たような奴っぽいし、俺の事を知らないのだろう。
こっちも酔ってんだ、派手にやってやるよ。
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