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―第二百十三話― 最強と最強

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「ゴホッ、ゴホッ、ケハッ!!」

 頭に付いた土を払い、何とか立ち上がる。

 ……うげっ、足がふらつく……。
 腹もめっちゃ痛いし、ぶつけた背中も痛い。
 ……リアトリスの攻撃で、まさかここまでやられるとはな。
 流石に想定外だぜ。
 ……相当土煙も立ってるし、ばれなさそうだな。

「《ディザスター》!!」

 足元に魔力を流し、魔方陣を張る。
 前に使った時は、必要な儀式殆どガン無視でやったから低威力だったが、これならどうだ……?

「《解》」

 魔方陣から溢れ出した大量の魔力を手元に集め、球体を作る。
 ……よし、これで行くか。
 球が緑色の光を発し始めたのを確認し、手のひらをリアトリスがいるであろう方向に向ける。
 さて、リアトリスはどう対処してくるかな……?

「《発》!!」

 そう呟くと同時に、魔力球がリアトリスめがけて弾け飛んだ――!



 …………。
 全力を使った影響か、体がぎしぎしと痛む。
 その上、頭もボーっとしてしまう。
 ……もうちょっとだけ休んでから、ルビーのところへ向かおう。
 流石にまだ立ち上がれてないだろうしな。

「……!?」

 ……くそっ、まじかよ!?
 どこからか、大量の魔力が放出されたのか、全身の毛が逆立った。

 ……ルビーの奴、もう起き上がってきたのか……。
 何をしてくるつもりなんだ?
 ……いや、この感じだと、ディザスターだな。
 しかも、この間のとは比にならないくらいの威力の。

 まずい、どう受けようか。
 ジャスミンの全力であの威力だったんだから、ルビーの全力とかマジで洒落にならん。
 そうは思えど、体を思うように動かせない。

「《防御》」

 ……まだ全力は使えそうだな。
 ……だったら……!

 腕を軽く伸ばし、魔力の中心の方へ手のひらを向ける。
 恐らくは、そこにルビーがいるのだろう。
 …………。

 前に、夢物語だ、とあっさり切り捨てた思い付き。
 もしかしたら、今ならできるのではなかろうか。

 ──能力と魔法の同時使用。

 元々、そこそこの威力はある魔法と能力を組み合わせることで、さらに威力を高められるのではないか。
 前に思いついたときは、絶対に無理だと思っていたが、今ならいけるのでは?
 実際、ルビーのディザスターからも、能力と魔法、どっちもの魔力を感じる。

「……ふぅ」

 一息つき、手のひらに全神経を集中させる。
 …………。



「──《コメット》!!」



 ……!?
 今までのよりも、数倍はでかい魔力塊。
 それが猛スピードで飛び出し、一直線でルビーの方へ向かった。
 それとほぼ同時に、ルビーの魔法が放たれたのも感じた。
 ……行け……!!

 ――ドォォオオオオン!!

 ディザスターとコメット、二つの濃密な魔力がぶつかると同時に、凄まじい轟音が鳴り響いた。
 ……相殺、といったところかな?

「《移動》」

 ……いた!
 パラパラと降りかかる土や石を、ルビーが鬱陶しそうに手で払っている。
 今がチャンスだ……!

「《切断》!!」
「うわっ!? 《防御》!!」

 不意打ちで短剣を振りかぶったが、ギリギリで受け止められてしまう。
 だが、この距離なら……!

「《威力上昇》!!」
「うげっ!!」

 短剣をパッと離し、下から抉るような角度で拳を撃ち出す。
 流石にこれは防げなかったのか、口の端から血が零れだしていた。

「《斬撃》!!」
「《防御》!!」

 お返しとばかりに飛んできた斬撃を、なんとか防ぐ。
 ……いや、完全に防ぐのは無理だった。
 腕に軽い切り傷が付いた。
 だが、これだけの損傷で抑えられたのは、成長のあかしだろう。

「はぁ、はぁ……。やるね、リアトリス」
「まあな」

 ……!
 ルビーが踏み込むと同時に、ものすごいスピードの拳が降ってきた。
 ……くそっ……!
 ほとんど勘で腕を動かし、なんとかそれを捌こうとする。
 ……二、三、五、七……!
 くそっ、十発も喰らってしまった。
 骨が折れてしまいそうだ。
 だが、ルビーも疲れてきたのか、拳の速度が段々と落ちてきた。

「おい、いい加減終わらせようぜ!」

 ルビーがそう叫び、拳を止めた。
 ……次の一撃でおわららせよう、ということなのだろう。

「いいぜ。ほら、来いよ……!」

 拳を握り、魔力を籠める。
 さあ、撃ってこい……!!

「「《威力上昇》」」

 お互いが同時に能力を使い、ドンピシャで拳が撃ち出された――!



 ――バギッ!!



 …………。
 鼻からぼたぼたと血が流れ出す。
 掠っただけで、これか……。
 まずい、意識が朦朧としてきた……。

「ガフッ!!」

 その瞬間、ルビーが・・・・血を噴き出して倒れた。

 ……勝った、のか……?
 遂に、俺が……!?

「いよっしゃああああああ!!」

 大きくガッツポーズを取り、勝利の喜びを噛み締める。
 まさか、本当に……!!
 ……って、ああ!
 喜びのあまり忘れてたけど、ルビー気絶したまんまじゃん!

「《回復》!!」

 倒れたままのルビーと、そのルビーと同じくらいぼろぼろの俺に、どうにかこうにか絞り出した魔力で能力を使った。
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