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―第二百十話― 報奨金
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…………。
ギルドの中に入ると、様々な視線が俺たちに向けられた。
……あまり心地の良いものではないな。
というか、ギルドに呼ばれる事にも、この視線にも、まったくもって心当たりがないのだが。
そんな風にどぎまぎしているうちに、ギルドのお姉さんがギルドの中心で止まり、俺たちもそれにならって立ち止まった。
「リアトリスさん、ジャスミンさん、ツツジさん、ローズさん。先の戦闘における皆様の活躍を称え……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「……なんですか?」
「いや、急に呼び出されて、活躍だなんだと言われても、何の心当たりもないんですけど!?」
「そんな、ご謙遜なさらずに」
いや、謙遜とかじゃないんだが。
「クレマチス王国で、アルネブを撃退したのではないのですか?」
「……あ、そのことですか」
……ん?
それでも、なんで呼び出されたんだ?
「はい。もういいですか? ……それでは、改めまして。皆さまの活躍を称えまして、我らが国王陛下及び、クレマチス王国国王より報奨金を進呈いたします!!」
その言葉に、ギルド中から『わー!』という歓声が轟いた。
「それでは、リアトリスさん。こちらへ」
ギルドのお姉さんに促され、三歩ほど前へ行く。
すると、お姉さんの後ろから、大きな革袋を持った騎士が一人現れた。
「それでは、こちらをお受け取り下さい」
騎士が恭しく渡してきた革袋を、こちらも丁重に受け取る。
ずしっとした重みが両手にかかり、思わず重心が前に傾いてしまった。
「重っ……!」
「そりゃあそうですよ。その中身、全部金貨なんですから」
「「「「……は!?」」」」
俺たちパーティーメンバーを含め、ギルド中から間の抜けた声が轟いた。
……えっ、これ全部金貨……!?
はっ、え、は、マジで!?
「皆様、本当におめでとうございます!! 今後も頑張ってください!!」
ようやく事態を飲み込みかけたであろう冒険者たちからの歓声が、再び響いた。
「流石リアトリス達だ!!」
「いや、俺はいつかやると思ってたね」
「おい、今度金貸してくれ!! 賭場で全部すっちまったんだ!!」
「ねえ、私今、物凄ーくありがたい壺を持ってるんだけど、買ってくれないかな!?」
……失礼、歓声とはまた別のものかもしれない。
それでも、ギルド内が大騒ぎになっていることは確かだ。
そんな中、当の俺たちはと言うと……。
「お、おお、おい、おいおいおい! これ、どうすんの!?」
「どうするも何も、まずは山分けして、それから銀行に……」
「こ、これだけあったら、最新式の最高級防具が、えーっと……、たくさん買える!」
「ジャスミンちゃん、これだけあったら、もしかして、この間見てた服も……!」
「それどころか、店中の服が買えるわよ! となったら、銀行には幾らかだけ持ってって、後は、えーっと……」
「というか、重たいから誰か手伝ってくれ!」
……ギルド内の連中に負けず劣らず、てんやわんやしていた。
◆
その後半日ほど、ギルド内の興奮は醒めず、最後には軽い宴会のような状態になっていた。
もちろんというかなんというか、会計はすべて俺らもちで。
流石に報奨金の中から払うのは忍びなかったので、俺が自腹を切ることにしたが、大いに盛り上がったからよしとしよう。
というか、俺自身ちょっと……、いや、めちゃくちゃ楽しかったしな!
といった感じで開かれた宴会を楽しんだ俺は、非常にいい気分で家に帰ってきていた。
「たっだいまー!! アハハハハハ!!」
何も面白い事はないのだが、何故か笑いが込み上げる。
俺、笑い上戸だったっけな。
ま、そんなことはいいや!
ソファに全身を預け、ひんやりとした感触を全身に浴びる。
あー、気持ちいい。
…………。
「忘れてた!!」
バッと体を起こし、冷水を一気飲みする。
……よし、酔いは醒めたな。
ソファの上で寝かかってたけど、あのまま寝てたら修行じゃん!
流石に、あんなテンションでまともな修行が行えるとは思えない。
……楽しい気分はここまでだ。
ここからは、また別の楽しみを味わわなければ。
今さっきまでのとは異なる高揚感が、全身を襲う。
ジャスミンの言った、修行を楽しむ、ができている証拠なのだろう。
……よし、今日こそは勝つぞ……!
そう決心を固め、再びソファに腰を下ろす。
まだ完全に酔いは醒めていないため、気を抜けば今すぐにでも眠れそうだ。
…………。
目を瞑り、深呼吸をしながら、全身の力をゆっくりと抜いていく。
そうしていると、自然と笑みが零れてくる。
今日も、楽しい夢が見れそうだ。
「おやすみ」
虚空にそう呟き、俺は意識を手放した。
ギルドの中に入ると、様々な視線が俺たちに向けられた。
……あまり心地の良いものではないな。
というか、ギルドに呼ばれる事にも、この視線にも、まったくもって心当たりがないのだが。
そんな風にどぎまぎしているうちに、ギルドのお姉さんがギルドの中心で止まり、俺たちもそれにならって立ち止まった。
「リアトリスさん、ジャスミンさん、ツツジさん、ローズさん。先の戦闘における皆様の活躍を称え……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「……なんですか?」
「いや、急に呼び出されて、活躍だなんだと言われても、何の心当たりもないんですけど!?」
「そんな、ご謙遜なさらずに」
いや、謙遜とかじゃないんだが。
「クレマチス王国で、アルネブを撃退したのではないのですか?」
「……あ、そのことですか」
……ん?
それでも、なんで呼び出されたんだ?
「はい。もういいですか? ……それでは、改めまして。皆さまの活躍を称えまして、我らが国王陛下及び、クレマチス王国国王より報奨金を進呈いたします!!」
その言葉に、ギルド中から『わー!』という歓声が轟いた。
「それでは、リアトリスさん。こちらへ」
ギルドのお姉さんに促され、三歩ほど前へ行く。
すると、お姉さんの後ろから、大きな革袋を持った騎士が一人現れた。
「それでは、こちらをお受け取り下さい」
騎士が恭しく渡してきた革袋を、こちらも丁重に受け取る。
ずしっとした重みが両手にかかり、思わず重心が前に傾いてしまった。
「重っ……!」
「そりゃあそうですよ。その中身、全部金貨なんですから」
「「「「……は!?」」」」
俺たちパーティーメンバーを含め、ギルド中から間の抜けた声が轟いた。
……えっ、これ全部金貨……!?
はっ、え、は、マジで!?
「皆様、本当におめでとうございます!! 今後も頑張ってください!!」
ようやく事態を飲み込みかけたであろう冒険者たちからの歓声が、再び響いた。
「流石リアトリス達だ!!」
「いや、俺はいつかやると思ってたね」
「おい、今度金貸してくれ!! 賭場で全部すっちまったんだ!!」
「ねえ、私今、物凄ーくありがたい壺を持ってるんだけど、買ってくれないかな!?」
……失礼、歓声とはまた別のものかもしれない。
それでも、ギルド内が大騒ぎになっていることは確かだ。
そんな中、当の俺たちはと言うと……。
「お、おお、おい、おいおいおい! これ、どうすんの!?」
「どうするも何も、まずは山分けして、それから銀行に……」
「こ、これだけあったら、最新式の最高級防具が、えーっと……、たくさん買える!」
「ジャスミンちゃん、これだけあったら、もしかして、この間見てた服も……!」
「それどころか、店中の服が買えるわよ! となったら、銀行には幾らかだけ持ってって、後は、えーっと……」
「というか、重たいから誰か手伝ってくれ!」
……ギルド内の連中に負けず劣らず、てんやわんやしていた。
◆
その後半日ほど、ギルド内の興奮は醒めず、最後には軽い宴会のような状態になっていた。
もちろんというかなんというか、会計はすべて俺らもちで。
流石に報奨金の中から払うのは忍びなかったので、俺が自腹を切ることにしたが、大いに盛り上がったからよしとしよう。
というか、俺自身ちょっと……、いや、めちゃくちゃ楽しかったしな!
といった感じで開かれた宴会を楽しんだ俺は、非常にいい気分で家に帰ってきていた。
「たっだいまー!! アハハハハハ!!」
何も面白い事はないのだが、何故か笑いが込み上げる。
俺、笑い上戸だったっけな。
ま、そんなことはいいや!
ソファに全身を預け、ひんやりとした感触を全身に浴びる。
あー、気持ちいい。
…………。
「忘れてた!!」
バッと体を起こし、冷水を一気飲みする。
……よし、酔いは醒めたな。
ソファの上で寝かかってたけど、あのまま寝てたら修行じゃん!
流石に、あんなテンションでまともな修行が行えるとは思えない。
……楽しい気分はここまでだ。
ここからは、また別の楽しみを味わわなければ。
今さっきまでのとは異なる高揚感が、全身を襲う。
ジャスミンの言った、修行を楽しむ、ができている証拠なのだろう。
……よし、今日こそは勝つぞ……!
そう決心を固め、再びソファに腰を下ろす。
まだ完全に酔いは醒めていないため、気を抜けば今すぐにでも眠れそうだ。
…………。
目を瞑り、深呼吸をしながら、全身の力をゆっくりと抜いていく。
そうしていると、自然と笑みが零れてくる。
今日も、楽しい夢が見れそうだ。
「おやすみ」
虚空にそう呟き、俺は意識を手放した。
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