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―第二百四話― 初日

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「修行、ですか……?」
「そ。まあ、めちゃくちゃしっかりやるわけではないけどね。第一、君、そういうの苦手でしょ?」
「……まあ」
「そもそも、僕もそういうタイプだしね。まあ、そんなわけで、気軽に、真面目にやっていこっか」
「いや、どっちですか!?」
「どっちもだよ。そんなに気負ってやるような事でもないけど、かといって手を抜いていいわけではない」

 ……一体、俺は何をさせられるのだろうか。

「だから、そんな警戒しなくていいんだって。……ほら、これ」

 そう言ってルビーは、ひょいっとこちらに何かを投げてきた。
 ……短剣?

「それ、抜いて」

 言われるがまま、短剣を古びた皮の鞘から抜き放つ。
 ……見た感じ、普通の奴っぽいな。
 なんなら、なまくらと言われる部類にさえ入ってしまいそうだ。

「まあ、実際になまくらだからね」
「あの、これで何するんですか?」
「何って、まあ……」

 にやり、と不気味に口角を上げ、

「僕と本気で戦う、とか?」

 そんなことを言ってきた。

 ……は、マジで!?
 えっ、今からルビーと戦うの!?

「うん。というか、僕に勝てるようになるまで、毎日」
「……めんどっ」
「なら、早く終わらせられるよう、努力することだね。……お互い、同じ能力を持つ者なんだ。相手の手の内なんかも分かってるだろう?」

 いやまあ、そうかもしれんが……。

「とりあえず、場所を移動しようか」

 そう言ってルビーが、一度指を鳴らした。
 すると、辺りが急に、何もない草原に変化した……!?

「夢の中だから、このくらいは簡単だ。……さて、リアトリス」

 どこから取り出したのか、ルビーは片手に俺に渡したのと同じ短剣を持っていた。
 それを抜き放ち、浅く構えを取り。

「それじゃあ、始めようか」
「……お願いします」

 その瞬間、お互いの魔力がちょうど真ん中でぶつかり合った。

 ……やばい。
 今まで戦った魔王軍幹部とか以上に、やばい。
 魔力量、多分だが俺と同じくらいじゃないか?
 ……これ、マジのマジでやんないとだ。

「『移動』」

 先に仕掛けたのは、俺の方だった。
 安直かもしれんが、能力でルビーの背後に回る。
 そこから、短剣に魔力を流し、再び能力を使う。

「『切断』!!」

 割と多めの魔力を流した斬撃。
 その辺の魔物なら、数体同時に真っ二つにできる程度には籠めたが、どう来る……?

「……え?」

 首筋に、ひんやりとした感触が広がる。
 ……首に短剣の腹を押し当てられているのだろう。
 実戦なら、確実に死んでいるこの状況。
 ……それを自覚した瞬間、思わず生唾を飲み込んでしまった。

「今日は俺の勝ち、ってところかな?」
「……完勝ですね」

 短剣が首から離れ、再び向かい合う。
 ……相変わらずの飄々とした雰囲気だが、今はそこにヤバさが加わっている。

 ……さっきの、ルビーの動き。
 『移動』と呟いたのは分かった。
 だが、その瞬間の魔力の量と質が、桁違いだった。
 さらに、そこから俺を攻撃するまで。
 ……ほぼノータイムだっただろ。

「まあ、こんな感じで毎日やっていくから、頑張って俺を倒せるくらいになってね」
「……できる気がしないんですけど」
「大丈夫。君なら、すぐにできるさ」
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